緩和があってこその緊張
2016/11/20 00:00:01 |
ふと思った事 |
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普段意識しないけれど、実は健康に大きく関わっているものがあります。
それは「無意識のストレス」です。
例えば遠距離を移動する時の交通手段とストレスとの関係を考えてみます。
一般的な手段としては、歩く、自転車、自動車、バス、列車、飛行機などの選択肢が考えられると思います。
普通に考えれば後ろになればなるほど目的地までの所要時間が短くなるので、ストレスが少なくなるように思われるかもしれませんが、
よく考えるとそう単純でもないという事がわかります。 例えば、移動を手段としてではなく、それ自体を目的として捉えてみます。
つまり「移動を楽しむ」という視点で捉えると、一番情報量が多く頭の中で処理しやすいのは「歩く」ではないかと思います。
ゆっくり歩きながら辺りを見渡す事で何気ない風景の変化を感じたり、新たな気づきも生まれやすくなります。
自転車でも似たような事はできますが、歩く事に比べれば気づきをスルーしてしまう可能性が高くなります。
自動車以降ではそうした視点で得られる情報量が大分限られてきますので、新しい発見は生まれにくくなります。
一方、移動と同時に別の何かを行うという効率性の視点に立てば、バス以降の交通手段が圧倒的に有利です。
移動中に本を読んだり、ブログを書いたりと移動と趣味の両方のニーズを同時に満たす事ができる事でストレスが和らぐという事はあるかもしれません。
かたや仕事で締切が近づいている何かをしなければならない時は、せっかくの時間有効利用も逆にストレスに感じてしまうかもしれません。
さらに他者主導の交通手段は、時間を相手の都合に合わす必要性があります。その時間が自分のニーズに合っていればいいですが、合っていなければそれもストレスたりえます。
その意味で時間の融通が利き、ある程度のスピードを確保する事が出来て、なおかつ音楽などの音情報なら同時に楽しむ事ができるのは自動車です。
ところが時間に融通が利くからといって、時間にゆとりがない状態で自動車を選ぶと、到着予定時間に間に合うようにといつもよりアクセルを強めて運転してしまう状況になります。
この時運転している本人もある意味似たような状態です。すなわちあせってストレスがかかり交感神経緊張状態になっています。
スムーズに交通が進めばいいですが、多くの場合前の車が遅かったりして追い越さなければならず、その度にストレスがかかります。
また期せずして渋滞に遭遇すれば、速く進みたいのに進めないという事でこれまたストレスがかかります。
従って自動車での移動の快適性を高めるには、当たり前のようですが時間にゆとりを持って出発するという事ですね。
このようにただ移動のためと一見思われるこの何気ない時間も、ストレスを、ひいては自律神経を介して健康と密接に関わっているのです。
たかがそんな些細な事と思われる方もいるかもしれませんが、一生の時間どれほど移動を繰り返すかという事に思いを巡らせば決して無視できない観点だと私は思います。
こうした無意識のストレスの蓄積を、いかに意識的にケアするかがストレス関連疾患から身を守るために大切な事ではないかと思うのです。
ただ、時々こんな事も経験します。
時間にゆとりがなくギリギリの状況で車で出発したけれども、
運良く渋滞に巻き込まれず、信号での停車も最小限で済み、追い越しもスムーズでギリギリ到着時間に間に合うというような場面です。
あの時に何とも言えない陶酔感、カタルシスを感じる事があります。「あぁ、よかった、間に合ったぁ〜」と。
それまで間に合うか間に合わないかのギリギリの状態でパフォーマンスを高めるために交感神経を緊張させ続けている状態から一気に解放され心地よさを感じるわけです。
ここでふと思ったのは、交感神経の一連の作用は本来この感覚を目標にもたらされているものではないかという事です。
もっと平たく言えば「緊張と緩和」です。緩和があってこその緊張であり、緩和がなければ緊張も浮かばれないと思うのです。
この緩和の時の快感があるからこそヒトは緊張の苦難を繰り返し経験し、そして成長していくのではないでしょうか。
もちろん、「いつも車でギリギリの時間で到着せよ」という話ではありません。もっと本質的な所に目を向けてみましょう。
私達は集団で社会生活を営み、個人では決して実現できない人類の叡智の結晶を享受しながら生きています。
一方、集団である以上、いつも自分のやりたいことができるとは限りません。仕事という名の社会活動を行う代わりに生きるために役に立つ益を受けるという関係が様々な人や集団の間で成立しています。
そうした状況の中で時にはやりたくない仕事をしなければならなかったり、働きたくない時間帯に働かなければならない事もあったりするわけですが、
それでもヒトは苦難を乗り越えるために交感神経を働かせてパフォーマンスを上げ続けるわけですが、
そこにきちんと緩和の時間は設けられているでしょうか。
緩和の時間がなければ、やがて交感神経はオーバーヒートします。そうしてヒトは病んでいくのではないかと、そういう仮説です。
そう言えば、面白い芸人さんの芸はこの緊張と緩和をうまく利用していますね。だからハマっていくのだと思います。
長々と述べてしまいましたが、最後に今回言いたい事を一言でまとめます。
「良いパフォーマンスを維持するためには、適切に休む事が重要」だという事です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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