都合の悪い事実を隠さない
2016/11/02 00:00:01 |
よくないと思うこと |
コメント:4件
とある製薬会社の説明会で感じたことです。
鎮痛剤のプレゼンテーションでMR(Medical Representative:医薬情報担当者)さんが「この薬は用量依存的に効果があります」という事を言いました。
「用量依存的に効く」とは要するに、薬の量を増やせば増やすほどその薬の効果が高くなるという意味です。
その言葉だけを聞けば、これはいい薬だと思って普通の医師なら処方したくなるのかもしれませんが、
私はそこでそのMRさんに次のように質問をしてみました。
「ということは、副作用も用量依存的に増えるということでよろしいでしょうか?」 するとそのMRさんは、「投与初期にはふらつきやめまいなどの副作用が出る事があります。
しかしある程度時間が経てば慣れてくるものが多くございます。」と答えられました。
それでは私の質問の答えになっていません。私の質問の趣旨は「薬の用量を増やせば増やす程副作用の程度も強く出るようになるのか?」ということなのですから。
はぐらかされては嫌なので、私は次のように続けて質問しました。
「それでは副作用は用量依存的ではないということですか?」
するとそのMRさんはこの質問に対して「はい」と答えられました・・・。
製薬会社の目的は「薬を売ること」です。あるいは存在意義といってもよいものかもしれません。
従ってその会社のMRさんが薬を売るのに不利になるようなことを言いたくないというのは気持ちとしてはわかります。
しかし薬と毒は表裏一体です。嘘をついてまで薬を売るような行為は決して許されないと私は思います。
薬の効果の中で人間にとって都合が良い部分と主作用と呼び、都合の悪い部分を副作用と呼びます。
主作用と副作用は本質的に同じ薬理作用によってもたらされていると考えるのが妥当です。それなのに主作用は用量依存的であり、副作用は用量依存的ではないという言葉を信じられようはずもありません。
「都合の悪い事であっても、包み隠さず情報開示する」
これが本来医薬を扱う製薬会社の本来あるべき姿です。
さもなくば適正にその薬を使う事ができなくなってしまうからです。
私の質問に「はい」と答えたMRさん、その答えによって私の彼に対する信頼は失墜しました。
公平性と公開性という人類平和を目指すための観点で言えば、極めて不公平で公開性の乏しく平和とは真逆の行為だったと考えざるをえません。
あの場は「副作用も用量に応じて強くなっていくので注意して使用して下さい」と答えるべきだったと私は思います。
一時の「都合の悪い話を聞かれたくない」という気持ちから出るMRの虚偽対応が、その後どのような影響をもたらしうるかという事に想像が及んでいないのです。
正しい安全性情報が伝えられなければ、不必要なまでに薬の処方量のみが増え続け、
その薬の副作用によって被害を受ける患者さんの数も薬の量に比例して増えていき、
しかも医師にも副作用が薬によるものだという可能性に気づかず、患者さんは副作用が出たとしても泣き寝入りとなってしまうかもしれません。
製薬会社は儲かって嬉しいかもしれませんが、はたしてそれは人類全体の健康に貢献していると言えるのでしょうか。
むしろ人類の健康をネタにお金儲けをしているような状況になってはしないでしょうか。副作用で苦しむ患者さんが増える事は製薬会社の目指す未来ではないはずです。
このような虚偽行動が国家レベルで判明してしまったのが、某社の降圧剤臨床研究論文ねつ造事件です。同様の事は某社に限った話ではないと私は思っています。エビデンスベースの考え方をしている多くの医師にはこの構造が見抜けません。
しかし多勢に無勢、おそらく集団としてみればやっぱりMRの言う方向へと医師の処方は左右されてしまっていることでしょう。
西洋医学ベースの現代医療はこのような深淵なる問題を多数抱えています。
しかも様々な人や組織の思惑が複雑に絡み合い、容易には解決し難い様相を呈しています。
そんな中、少数派の私にできる事は限られています。限られていますが、それでもできる事がないわけではありません。
製薬会社の情報を鵜呑みにせず、自分の目で薬の効果と副作用を慎重に判断することです。
そしてこうした声を上げ続ける事が大事だと思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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変えてほしい
私の知る限り、製薬会社に苦言を呈する事が出来る医師は、たがしゅう先生だけです。
歪んでしまった医療業界の改革を、先生にけん引していただきたいと切に願っています。
テーマ違いで恐縮ですが
子供の食トレーニングについてです。
私の息子は小学生でサッカーをしています。あるチームでは、身体を大きくする為に食トレーニングと称して、練習の合間に大きなおにぎりを食べるそうです。また、自宅での夕飯も丼3杯をノルマとして課していると。
確かに、スポーツをする上で身体が大きな事はメリットであり、親としては気になるトレーニングです。
しかし、米ばかりをそんなに食べて果たして本当に身体が大きくなるのか疑問です。
この方法において、糖質過剰でアレルギー等の病気になるリスクは高まるでしょうが、リスクと引き換えに身体は大きくなるものでしょうか?
先生の過去記事で、子供の糖質制限についてはタンパク質をしっかりとれば、成長に悪影響はないといった記事を拝見しました。そこで、身体を大きくするといった観点からは、糖質の必要性はどうなのかご教授願います。
Re: 変えてほしい
コメント頂き有難うございます。
製薬会社の問題に気づいている医師は私だけではないと思います。
ただ表立ってそれを言う場がないというだけの事です。内心くすぶる想いのある方を含めればかなりの数いるかもしれません。
私がけん引するなんて事はおこがましいことです。こうした地道な活動を続けていれば、いつか時代は大きくうねり始めると信じています。
Re: テーマ違いで恐縮ですが
御質問頂き有難うございます。
>私の息子は小学生でサッカーをしています。あるチームでは、身体を大きくする為に食トレーニングと称して、練習の合間に大きなおにぎりを食べるそうです。また、自宅での夕飯も丼3杯をノルマとして課していると。
>しかし、米ばかりをそんなに食べて果たして本当に身体が大きくなるのか疑問です。
>この方法において、糖質過剰でアレルギー等の病気になるリスクは高まるでしょうが、リスクと引き換えに身体は大きくなるものでしょうか?
糖質は言い換えればインスリン強制分泌促進剤ですから、こどもにおいてドーピング的に身体を成長させる側面はあると思います。
一方で糖質摂取に伴う血糖上昇も、それを上回る運動量があれば高血糖や高インスリン血症による害を最小限にする事もできます。
よって、タンパク質もしっかり取るという前提であれば、糖質摂取は運動量が大きい子にとっては成長促進に有利に働く可能性はあると思います。
ただドーピングを続けたスポーツ選手がその後どうなるかを考えればわかるように、ドーピングは身体に無理をかける行為です。今大丈夫でも将来の病気のリスクを、その運動量で充分に防げているのかどうかを確かめる術もなく、実は運動量が足りずに高血糖、高インスリン血症の害、あるいは運動そのものによる酸化ストレスがうまく処理できていないかもしれません。成長した代わりに将来不健康になるのか、それとも成長だけを上手に手に入れられるのかというのは、結果論的な話にならざるを得ません。
ですので、そういうリスクがあるという事を踏まえて、それでも成長を糖質に頼りたいのであれば、それも一つのやり方ではあると思います。しかし大事な事はたとえ親であっても、他者の課題にはむやみに踏み込まない事です。アドラー心理学的には「課題の分離」といいます。こういった情報をこどもにもわかるように伝えて、自分で考えてどうするかを決めてもらうのがよいと私は思います。
2015年2月13日(金)の本ブログ記事
「日常に溶け込んだドーピング」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-574.html
も御参照下さい。
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