一般的な感覚とのギャップ
2013/11/03 00:01:00 |
普段の診療より |
コメント:2件
医師と患者の間には、
病気に対する認識に多くの場合ギャップがあります。
難しい医学用語をかみ砕いて説明する事は基本的なことですが、
それ以上にもっと根本的な部分でギャップの埋め合わせをしなければならないと思わされる出来事がありました。
この度、ある患者さんとこんなやりとりがありました。
ケース1:
たがしゅう「甘いものは好きですか?」
患者さん1「甘いものは控えて、しょっぱいビスケットとかを食べています」
ケース2:
たがしゅう「甘いものは好きですか?」
患者さん2「血圧の方で塩分を控えるように言われています.でも(主治医の)先生にはあんたは糖尿病じゃないから、甘いものは食べてもいいって言われました.」
ケース1は、まさに患者側の感覚から生まれるギャップだと思います.
甘いものがダメなのなら、味として対極にある「しょっぱいものであれば大丈夫」と考えるのはある意味普通の感覚でしょう.
しかし、実際にはビスケットは小麦粉メインで作られますので、炭水化物の塊、ひいては糖質の塊です.
このギャップを意識していないと,患者さんが言う「甘いもの食べていない」の言葉の意味が「糖質摂取量が少ない」ではないという事に気がつくことができません.
ただ,これは時間をかけてしっかり糖質とは何かについて説明すれば軌道修正も可能かもしれません.
一方,ケース2は医者側の誤解から生まれるギャップです.
主治医の「糖尿病じゃないから甘いものは食べていい」という指導はそもそも大間違いだと私は考えます.
なにしろ血糖値に反映されない糖質の害というのが無数にあるのです.
動脈硬化しかり,肥満しかり,アレルギーしかり,原因不明のめまい・頭痛しかり,消化器症状しかり,精神症状しかり…数えきれないほどあります.
だからこそ,血糖値とHbA1cだけをみて糖尿病は問題ない,とか言っている医師はダメなのです.
しかも,この場合,軌道修正は非常に困難です.
何しろ患者さんはこの指導をしている主治医のことを信頼しているので,
私がもし「糖尿病でなくとも糖質はよくない」ということを説明すれば,それは信頼している主治医の事を否定することになります.
仮に想いが通じて患者さんに糖質の害の事をわかってもらえたとしても,その主治医にまでその事をわかってもらうことは至難の業です.
そういう意味では,医師が一番変わってくれない,まさに「イシ頭」です.
やはり,埋められるところから地道にギャップを埋めていくしかありません.
たがしゅう
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- 一般的な感覚とのギャップ (2013/11/03)
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
診療時間の問題ありますね
私は月に一度の割合で内科に血液検査のチェックにいっていますが内科の患者数は多いようでドクターの側では多分1人にかけられる時間は10分~30分くらいだと思います。そうなるといきおい、血糖値やヘモグロビンA1Cという数値を頼りにした所見になってしまうのだと思います。糖質の血糖値以外の弊害はドクター以外の人にはあまり知られていません。またドクターのような専門家の説明を患者は自分の都合がいい部分だけピックアップしてツギハギするということも少なくないと思います。多分たがしゅう先生が提示された事例で糖尿病ではないので甘い物OKというのはドクターはあまりそういうことはいらないと思います。
本当はたがしゅう先生のこのブログのようにドクターがヒントをくれてそれを私たち患者がチェックしてその知識を深化させて検診はその一ヶ月の結果をドクターがチェックして患者の方向性が間違いないかどうかチェックするということができるといいですね。
Re: 診療時間の問題ありますね
いつもコメントを頂き有難うございます.
御指摘のように,診療時間の問題は確かにあります.
時間は有限ですので,限られた時間の中でどう説明するかということは常に意識しています.
しかし,時間がないから「必要な説明を省く」というのは私は本末転倒だと思います.
> 本当はたがしゅう先生のこのブログのようにドクターがヒントをくれてそれを私たち患者がチェックしてその知識を深化させて検診はその一ヶ月の結果をドクターがチェックして患者の方向性が間違いないかどうかチェックするということができるといいですね。
それはよいアイデアですね.情報化時代の新しい医療の在り方だと思います.
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