オートファジーが世界をどう動かすか
2016/10/05 00:00:01 |
医療ニュース |
コメント:4件
2016年のノーベル医学生理学賞受賞者に、
「オートファジー」の研究者である東京工芸大学栄誉教授の大隅良典先生が選ばれました。
10月3日の夕刻に御本人がそのお知らせを聞いたとのことですが、18時36分にはネットニュースになっており、情報拡散の速さに驚かされますがそれはさておき、
これは今後新しい医療を構築していくための偉大な一歩だと思います。
ノーベル賞に選ばれれば、世間の注目は否が応でも「オートファジー」に向かうと思いますし、
私は糖質制限推進派医師としてオートファジーに注目しておりますので、その説明も大いに行いやすくなります。
そして多くの人にオートファジーの概念が知れ渡る事によって、断食やマイナスの栄養学に対する見直しが図られる事を私は期待しています。 まずオートファジーはタンパク質の再利用ですので、まずタンパク質は摂り溜めができないという従来栄養学の常識が崩れます。
次にオートファジーは不要タンパク質を除去する働きを持っていますので、従来治癒不可能と言われた異常タンパクが蓄積する神経変性疾患に対して問題解決の糸口となる可能性がありますし、
高血糖の記憶として不可逆的変化として捉えられているAGEs(終末糖化産物)に対しても改善の可能性をもたらすかもしれません。
またオートファジーはインスリンによって抑制される性質がありますので、
オートファジーを活性化させるためにはインスリンを低値で保持させるという治療戦略が有用である可能性も見えてきます。
さらにもしもオートファジー類似の細胞機構がビタミンや微量元素などの他の栄養素にも備わっているのだとすれば、
非科学的とみえる不食の世界にも実現可能性を説明できるキーワードになってくれるかもしれません。
糖質制限で越えられない壁を超えるためにも、私はオートファジーの事をよく理解し、その上でどう食べるかという事を考えていく事が鍵になってくると私は考えています。
しかしこれから先、世の中はオートファジーを知る事でどのように動き出すでしょうか。
科学者はオートファジーを利用するためにオートファジー活性化剤を開発するかもしれません。
それはおそらくオートファジーの鍵分子となるタンパク質に構造が似た何らかの作動薬(アゴニスト)かもしれません。
もしくはオートファジーを抑制する酵素の阻害剤(アンタゴニスト)かもしれませんね。
しかしそうやって複雑な有機生命体の一分子に注目してそこだけを操作して身体をコントロールしようとした数々の西洋薬が、
結果的に私達にどのような影響を与えたでしょうか。ポリファーマシー問題を考えればそのやり方では歪みを生じてしまう事は容易に想像できると思います。
そんな薬を開発しなくても、すでに強力なオートファジー活性化法があるではありませんか。
それは「絶食」です。絶食をすれば今すぐにでもオートファジーを活性化させることができます。
しかし一方で世間は食べる事を前提にした文化が根付いています。
見渡せば糖質、見渡せば食品だらけ、食品に関係した仕事に従事する人達はかなり多いと思います。
オートファジーを理解したとして、食べない事の重要性を正しい形で理解できる人は果たしてどれだけいるでしょうか。
世間にとっては「難しい細胞のメカニズムが優秀な研究者によってまた一つ明らかにされた」程度の感想で時間が経って忘れ去られてしまわないでしょうか。正直私は楽観視していません。
けれどそれでも今回オートファジーの事が注目された事は大変喜ばしい事であったと思います。
「他人がやらない事をやろうという想いから酵母に注目して地道に基礎研究を蓄積していった」という大隅先生の研究者精神に心から敬服するとともに、
感謝の想いを胸に抱いてこれからもヒトの健康について考え続けていきたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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健康という頂上を目指す複数のルート
Re: 健康という頂上を目指す複数のルート
コメント頂き有難うございます。
「辟穀」→「糖質制限」
「断食」→「オートファジー利用」
古来からの謎が科学的に解明されつつあり、大変興味深いですね。
No title
ノーベル賞の発表を聞いて、こんなにビックリ嬉しかったのは本当に初めてです。
仕事の休憩中でしたが、思わず うわあ~来た~!って、声が出てしまい、同僚にひかれました。今回は あまり騒がれていなかったし(私が疎いだけか)日本人のお家芸的な 化学がどうかな~って思っていた位でしたので、本で知ったお名前を聞いたとき余計に驚きました。
そうですよね、ついに来たか❗ですよね。きっと、よく解っていない私よりも、先生はそんなお気持ちは強いでしょう。そして話題にしやすいだなんて、そこにいる人が羨ましいです。
私にはそんな場面ありません。瞬間異動して、先生が話題にする度に 横でその貴重なお話しを聞きたいです…
私も、今回の事でマイナスの栄養学についての興味を持つ人が増え、広まることに希望を持っています。興味の程度に差はあっても、そんな人は増えていきますよね☺更にきっと✨✨✨
だって 科学(化学)好きだけども知識の浅い私でも、糖質オフして数年たち、朝昼晩の3食摂ることがどーでもよくなり、オートファジー本を買う様な興味が沸いたのです(先生の影響大😃)
我々人間だけでなく、単細胞生物に至るまでの全ての真核生物がオートファジーの機能を持っている、進化の過程で捨てなかった、捨てられなかった!と知ると、糖質オフ関連の学びと結び付きます💃 長い長い飢餓の時代を経てきた体の仕組み。現在のような過食状態は、体に色んな悪い影響を及ぼすのね、という事は、私のレベルなりにですが 理解出来ます。
食べることが前提の医療を刷り込まれて来ましたが😢
そして、こうしてボーッとしている間も、自分の体の中で細胞レベルでの戦いが繰り広げられてるんだわ~なんて思うと、大袈裟だけども宇宙を感じる……✨✨✨
私も11月参加します。お話が出たら、理解出来る出来ないはさておき、耳を澄まして聞き逃さないようにしたいと思います。
…オートファジー利用のアゴニスト⁉もう何処かで秒読みだったりするのでしょうか……⁉
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
今回のノーベル医学生理学賞は、例年見られるよくわからない難しい科学の話ではなく、しっかり理解できて、なおかつ今からでも応用可能な話です。しかし多くの人はやっぱり「難しい科学の話」と捉えてしまっているかもしれませんね。
> 我々人間だけでなく、単細胞生物に至るまでの全ての真核生物がオートファジーの機能を持っている
そう、それもまた興味深い所です。植物にもオートファジーの遺伝子が保存されているのだというのですから、どれだけ根本的なシステムかという事をうかがい知る事ができます。
> …オートファジー利用のアゴニスト⁉もう何処かで秒読みだったりするのでしょうか……⁉
逆にオートファジー阻害剤の開発はいろいろと進んでいるようですね。
例えば、がん細胞はオートファジーが亢進しているので、オートファジーをブロックすればがん治療になるのではないかという発想があるようです。
これに関しては私は反論があります。そもそも「がん=倒すべき敵」という解釈を見直す必要があると思います。詳しくは後日記事にさせて頂きます。
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