天才促進的に作用する刺激

2016/10/01 02:30:01 | ふと思った事 | コメント:4件

高校生の頃、英単語を覚えようとする時に、

単語帳をただ読むのではなく、声に出して何度も繰り返して覚えようとする事がありました。

単語を見て音でも聞いて視覚と聴覚を同時に刺激すると記憶に残りやすいという事をどこかで教わったからです。

その方法が合っていたのか、英語は私が高校の時の得意科目でした。

またテレビを見ていると幼稚園の英才教育などでも、

五感をたくさん刺激させるような方法論が注目されているようです。

先日、天才や芸術家に多い共感覚という現象の事を取り上げましたが、

複数の感覚を同時に刺激する方法は、言わば共感覚を鍛える方法なのではないかと思うのです。 考えてみればピアノを弾くという行為も、楽譜をみる視覚、鍵盤をたたく触覚、耳で聴く聴覚をフル活動させる行為です。

ピアニストに共感覚が多いという話だけ聞くと、天才肌の人がピアニストになる傾向が高いのだろうと考えてしまいますが、

実はピアノを練習する事で共感覚が鍛えられるのだとすれば、もしかしたらピアノは天才を生み出しやすくしているかもしれません。

勿論、ベースに脳の興奮性が高いという事がないと、ピアノを弾いたからと言って共感覚が必ずしも起こるわけではないのでしょうけれど、

実は脳の興奮性を人為的に高くする方法があります。


ここで再び先日紹介した書籍『天才の病態生理』から引用します。

(p117より引用)

ゲシュヴィント症候群は感覚系-辺縁系の結合亢進であり、これは共感覚の亢進した状態でもある。

このような状態を起こすのはなにも片頭痛、てんかんに限らない。

種々の脳の器質的疾患や麻薬、アルコール依存症でもよい。

脳に対する有害刺激も軽度の場合は天才促進的に作用する

(引用、ここまで)


ゲシュヴィント症候群というのは、簡単に言うと天才によくみられる行動や特徴を示す人達の事です。

具体的には哲学的・道徳的・宗教的問題についての関心の増大、書字過多、性欲低下(とくには同性愛に対する興味)、種々の被刺激性の亢進などがゲシュヴィント症候群の人に見られる特徴です。

そして脳への有害刺激を少し与えれば、そうした状態に近づけるというのです。

ここでは麻薬やアルコールの例が挙げられていますが、おそらく糖質も脳への有害刺激と言えるでしょう。

こうした有害刺激も少量であれば、悪い事ばかりでもないということなのかもしれません。これは自然な血糖上昇を悪と捉えるべきではないという話に通じるものがあります。

例えば野菜などにも少量の糖質は含まれていますので、それくらいの糖質であれば天才促進的にうまく働いてくれるのであれば、

なるほどだから自然のものにも少量の糖質が含まれているのかと納得できるような気がするのです。

あるいはアルコールを飲んでアクティヴィティが高まる人がいたり、適量の飲酒が健康促進的に働くという話もこの辺りに起因するのかもしれません。

しかし脳の興奮性亢進は行き過ぎると片頭痛、てんかんにもつながってしまうわけなので、その辺のさじ加減は重要です。

先ほどの引用文の先には次のようなことも書かれています。

(p117-118より引用)

エドガー・アラン・ポーはもともと複雑部分発作のてんかんもあったが、

アルコールによる脳の極度の興奮状態における共感覚の極致で過剰とも思える連想の才を発揮し、

結局はアルコール依存症により40歳で死亡した(Robertson)。

同様の体験は麻酔薬でも起こる。

古くはクロロフォルム、エーテルによる例の報告があり、

最近では笑気による例があり、これは歯科医、麻酔科医に時にみられる。

(引用、ここまで)


すなわち、いくら天才促進的に作用するからと言っても

それに頼りすぎていると、破滅への一途をたどってしまうのだという事を教えてくれていると思います。


では天才促進的に作用する脳への有害刺激を、

刺激が強すぎて片頭痛、てんかん、ひいては破滅への道をたどらないようにするために、

ブレーキをかける事はできないものでしょうか。

私は、そのブレーキが他ならぬケトン体になのではないかと思います。

片頭痛やてんかんにケトン食が有効である事や、糖質制限をしているとお酒に強くなるという体験談などがその事を支持しています。

糖質制限をしてケトン体を十分利用できる体質を作っておくことによって、

脳への有害刺激に適度にブレーキをかけ、オーバーヒートさせないようにすることができれば、

凡人も天才に一歩近づけるのではないかと考える次第です。


たがしゅう
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コメント

非公開でも結構です

2016/10/01(土) 12:28:29 | URL | ルバーブ #PRUgPUJQ
>私は、そのブレーキが他ならぬケトン体になのではないかと思います。
に関して、福田先生のこの記事についての先生のご意見を賜りたく存じます。お時間のある時で結構ですので、よろしくお願いします。
http://blog.goo.ne.jp/kfukuda_ginzaclinic/e/83fb1ea98e06d29aeea84c38ebeb09a1

Re: 非公開でも結構です

2016/10/01(土) 13:36:51 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
ルバーブ さん

コメント頂き有難うございます。
これは素晴らしい御指摘ですね。なるほどと思わずうなりました。

骨太の内容なのでまとめるのに少し時間を下さい。後日記事にさせて頂きます。

脳のハイブリッド化

2016/10/01(土) 16:43:12 | URL | Yamamot_ma #QPJmzeK2
>糖質制限をしてケトン体を十分利用できる体質を作っておくことによって、脳への有害刺激に適度にブレーキをかけ、オーバーヒートさせないようにすることができれば、凡人も天才に一歩近づけるのではないかと考える次第です。

と言うか、「効率のいい燃料源に切り替える」と言った方がいいのかな思います。
最近分かったことですが、糖新生だけ(糖質制限中)での脳へのグルコース供給は追いつけず、積極的に脂肪酸をBBBを通過させてアストロサイトでケトン体を産生させて脳のエネルギー源としているようです。 
ブレーキというよりは、ハイブリッドエンジンですね。(笑)
誰かさんと同じような意見でもあります。

Re: 脳のハイブリッド化

2016/10/01(土) 17:32:22 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
Yamamot_ma さん

コメント頂き有難うございます。
なるほど、確かにそうですね。

より正確なニュアンスを言うとすれば、
糖代謝だけではオーバーヒートあるいはエンジンストップしてしまうのを、ケトン体代謝で大量のエネルギーを生み出すことで故障させないようにしている」となるのかもしれません。

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