医学生が医者になるまで
2013/10/31 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:6件
どうして世の中の多くの医師は糖質制限を認めないのでしょう。
どうして多くの医師は患者の健康のために新たな領域への第一歩を踏み出せないのでしょう。
一つ言える事は、多くの医師には高いプライドがあります。私に言わせればくだらないプライドです。
一体、どこでどう変わってしまうのか?
それを考える上で本日は「医学生から医者になるまで」の過程を考えてみたいと思います。 医学部に入るためには英語、数学、国語、物理、化学、生物などといわゆる「学力」が要求されます。
医療を志したいという心の綺麗さはさておき、学力が一定レベルに到達していないとまず医学部を目指すことすら許されないのです。ここでまず変なセレクションがかかります。
極端な言い方をすれば、学力さえ高ければ、人格者でなくとも医者にはなれてしまいますが、ここでは、ある純粋に人を救いたいという考えの学生が医学部に入学したと仮定します。
医学部に入学した大学生は「医学生」と呼ばれますが、
医学生は一般の大学生の多くが4年間学ぶのに対して、6年間と少し長めの期間大学生活を送ります。
最初は病院や福祉施設に出かけて早期体験で見学をし、次に基礎医学の講座を受けて医学知識を学び、レポートを書き、解剖では献体に対し畏怖の念を抱きつつ、また学び、臨床講座が始まりまた勉強勉強の毎日です。
多くの場合、5年生になると臨床実習というのがあり、実際に病院へ出かけ、指導医の指導の下、実際の患者さんへ問診・診察を行うことで多くの事を学びます。
この実際の現場で学べることは多く、実際に患者さんや現場の先生方とも触れ合うというので緊張はピークに達します。膨大な医学知識を持っておられる臨床の先生方へ尊敬の念を抱きつつ、謙虚な気持ちで一つ一つの事柄を学び吸収していきます(この時「教わった事を疑う」という視点はなかなか生じません。)
そして6年生になって一生懸命試験勉強をして、年度末頃にある医師国家試験を受験し、受かれば晴れて医師となるわけです。
そして医師免許をとった瞬間から、たとえ社会経験のない若造の研修医であっても、看護師やリハビリ療法士、放射線技師や検査技師、栄養士などといったコメディカルと呼ばれる医療スタッフにおしなべて「先生」と呼ばれます。
「先生、先生」と呼ばれ時には浮かれながらも研修医は成長し、やがて専門領域を持った医師になっていきます。
一方、医師にはそれぞれの専門領域へ敬意を表し合う風潮があります。逆に言えば専門外の事を口を出すことはタブーとも言える状況です。
こうした過程の中でそれぞれの専門性が高まり、いつの間にかえも言われぬくだらないプライドが形成されていくのではないかと私は考えています。
また専門家になればなるほど全人的な視点が欠けていくという落とし穴があります。
私の身近にも、「自分は肺の専門家だから心臓のことはわからない」といった事を平気で言う専門医がいます。
それは糖尿病の専門家も同様です。糖尿病専門医は言ってみれば血糖値を薬物でコントロールするプロ集団です(本来はそこに食事療法の観点がないとダメですが)。
その高いプライドを伴った不可侵的な専門領域である「糖尿病」に関して、他科の医師から従来の食事療法を否定された時に、果たしてそれを受け入れる柔軟な頭を持った医師はいるでしょうか。みなさんがもし糖尿病専門医だったら、と想像してみて下さい。
それは今まで高いプライドを持って頑張って積み重ねてきた知識を根底から覆されることを意味するのです。
しかしそうであっても本来ならそんなプライドは捨てて、間違っていた事を素直に認め、直ちに患者さんの為に良いと思われることを検証していかなければならないのです。だからあえて「くだらないプライド」と言いました。
また専門医だけではありません。糖尿病学会やガイドラインに準じてただ従来指導を続けている医師も、専門家を完全信頼、言い換えれば盲信してしまっているが故に動けないのです。ここにも医師を取り巻く環境の影響が色濃く出ています。
そして糖質制限の有効性に気がついていながら糖尿病学会の指導には逆らえないと言っている医師だって、「相手(専門医)のプライドを怪我しちゃいけない」などと変な敬意を払っている場合ではないのです。患者さんにとっては「今ここにある危機」です。
こうした医師達へは「患者を救いたい」という最初の気持ちを是非とも思い返してほしいと心より願います。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
私も、本当にそう思います。
医療の原点を見つめなおして欲しいですね。
正に
患者にとっては「今ここにある危機」です。
Re: No title
いつもコメントを頂き有難うございます。
> 患者にとっては「今ここにある危機」です。
多くの医師がこの事に気がつかないのはおそらく「自分が患者でない」からです。
医師であろうとなかろうと、他人の苦しみは所詮、他人事なのだと思います。
でもそう考えることなく、「今ここにある危機」をきちんと認識できる仲間は今後着実に増えていくと思います。
No title
患者は病名や症状の変化、薬の効果等々を告げてくださることを願っています。
Re: No title
コメントを頂き有難うございます。
> 患者は病名や症状の変化、薬の効果等々を告げてくださることを願っています。
貴重な御意見有難うございます。肝に銘じておきます。
No title
俗にいう「専門家」なり「先生」と呼ばれる職業には大抵の場合ついてまわる現象でしょう。
いや、先生と呼ばれることは無くても閉鎖的環境では世間一般とのある程度の乖離は避けられないのかもしれません。
”先生”だって人間ですから、未完成でもあり弱い部分もあるはずですが神のごとく崇め奉ったり、あるいは主体性を放棄し丸投げ、すがりつく利用者側の姿勢も時に拍車をかけることになっているかもしれませんね。
いずれにしても、立場や環境、得手不得手に関わらず、自分の人生を自分で生きようとする意思、意志、思考と行動が何人にとっても基本になるのではないかと思います。
自分の人生を率直に、真摯に見つめられない人が他人の人生を真に尊重することは難しいのではないか、そのプライドがくだらないかどうかは、そういう部分が決めるのかもしれないと、先生のご意見を伺ってふと考えました。
いつもありがとうございます。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
確かに「先生、先生」と呼ばれ続けることで、知らず知らずのうちに先生としてふさわしい行動をとるように求められ、縛られる側面はあるのではないかと思います。
勿論それ自体は社会の秩序を保つために大切なことかもしれませんが、気を付けていないといつの間にかそれを順守すること自体が目的となってしまうと具合が悪いです。先生であろうとなかろうと誰もが不完全な人間どうし、その事がきちんと分かり合える仲であれば、もっと平らかで魅力的な交流ができるのではないかと思います。
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