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無理矢理やらせても効果は半減
万能性の高い食事療法ですが、残念ながら万能ではないと私は考えています。
一定の確率でまじめに糖質制限をしているのに症状が改善しきらない患者さんと遭遇するからです。
先日は2年間糖質制限をしっかり行っているにも関わらず、めまいが頻発するという60代男性の患者さんと出会いました。
この患者さんは奥さんが熱心な糖質制限実践者であり、旦那さんである患者さんにも糖質制限をするように強く勧めていたそうです。
家庭の主調理者である奥さんが糖質制限を理解していれば、自ずと患者さんも糖質制限食になるわけですが、
ところがこの患者さん自身は糖質制限の理論をきちんと理解しているわけではなく、
どうやら我慢しながら糖質制限を続けている状況であったようなのです。
その患者さんのめまいは回転性で、同様のめまい発作を何度も繰り返されているような状況でした。
耳鳴や難聴などの内耳症状こそありませんでしたが、頸椎の異常も明らかではなく、私はメニエール病の可能性を第一に考えました。
メニエール病の主病態は以前にも紹介したように内リンパ水腫です。
糖質制限で血流が改善すれば、内リンパ水腫が改善してもおかしくなさそうなものですが、
もしメニエール病の診断が正しいとすれば、この患者さんについては糖質制限をしているにも関わらず内リンパ水腫が改善しない、という事になります。
もう一つ思い出したいのはメニエール病にはストレスが関与していると言われている事です。
もしかしたらこの患者さんの場合は、「糖質制限を理解せずやらされているというストレスが増悪因子となっているのではないか」という気が致しました。
またこの患者さんに限らず、今まで私が出会った糖質制限で改善しない症状がある患者さんを振り返ると、
かなりの確率で不安を強く訴えられストレスマネジメントがうまくできていない人が多かったです。
糖質制限をしていても改善しない病態の裏にはストレスが大きく関わっているのではないでしょうか。
そのようにストレスの存在を明確に認識しておくことは非常に重要です。
なぜなら糖質制限しか頭になければ、「糖質制限の制度を高めなさい」という通り一遍の指導しかできない視野狭窄に陥ってしまいますが、
ストレスマネジメントの必要性を理解できていれば、もう少し違ったアプローチができるかもしれないからです。
具体的にはこの患者さんには、糖質制限ははやらされてするものではなく自分が理解して行う主体的治療である事を伝え、
何はともあれ江部先生の本のような基本を押さえられる本を読む事から始め、糖質制限の理論を理解される事をおすすめしました。
あるいはもしもそれでも効果がなければ仕事、家庭、交友関係など生活の中から他のストレス原因を探したり、
原因が見つからなかったとすれば、不安を和らげる漢方薬を一時的に併用するという選択肢もあるかもしれません。
ちなみにこうした場合に一般的に使用されるベンゾジアゼピン系の抗不安薬を私は使いません。一時的には不安が和らいでも依存性や耐性を作る性質からその後止めるのが大変になっていくからです。
ちなみにこの患者さんは胃部分切除後という事もありなかなか太れないという悩みも相談されましたが、
これに関しては私は消化吸収機能障害改善の観点から1日3食を1日2食にしてみる事を提案しました。
しかしその提案については糖質制限以上に強い拒否反応で、それは絶対にできないと言われました。
結局、自分で納得していない事はいくら理論的に正しい事であっても、無理矢理やらせれば大きなストレスを受ける事になってしまいます。
それゆえに私はそれ以上この方法を患者さんに勧める事はしませんでした。
糖質制限を普及させるために大事な事をまた一つ学ぶ事ができたように思います。
たがしゅう
コメント
SMAPのことかと。
>>自分で納得していない事はいくら理論的に正しい事であっても、無理矢理やらせれば大きなストレスを受ける>>
SMAPの解散のことかと思いました。
続けるのが苦しいなら、もう無理です。
食も職も、無理を強いたら、ストレスで病気になったりまわりと大ゲンカになってしまいます。
なにをどう選ぼうと、当人たちしか分かり得ないことですから。
ただ、選んだ以上、後悔はせず生き生きと糖質を食べ、来年からは生き生きとソロ活動をしていただきたいと思います。キッパリ!
2016-08-20 18:27 エリス URL 編集
Re: SMAPのことかと。
コメント頂き有難うございます。
期せずして話がつながりました。
しがらみが減った分、自由に発言ができるようになって、意外と今まで以上に魅力的な存在になるかもしれませんね。
2016-08-21 00:22 たがしゅう URL 編集