健診における糖質制限の重要性
2016/06/29 15:00:01 |
普段の診療より |
コメント:5件
人間ドックという健診システムは全国的に広く普及していると思います。
まだ病気ではない人がいち早く病気を見つけて、何らかの治療介入を行い、
将来起こりうる病気を未然に防ぐという目的のために行われていると思います。
こうしたシステムは根治的な治療方法がある場合にのみ、その妥当性が認められると思いますが、
ほとんどの病気を根治できない西洋医学の方法論でそのレールに乗せても、ただ単に早めに薬漬けになるだけではないかと私は思っています。
薬漬けにならないようにするための食事や運動の指導方法も、
今の医療の枠組みの中では大変おろそかなものしか行われていないのが現状です。 人間ドックで高血圧が指摘されると、カロリー制限を指導され、食べ過ぎ、太りすぎに注意しましょうと言われるパターンが多いと思います。
しかしそれは糖質制限の観点でみれば、なかなか厳しい行為です。
なぜならばカロリー制限では糖質はしっかり確保したまま、脂質を中心に全体の摂取量を減らされる事になるので、
糖質の中毒性が残りつつ、ケトン体は今まで以上に使いにくい状況となり、食べる度に糖質を渇望したくなる状況が生まれます。
それなのに「食べ過ぎには注意」しなければなりません。そんな苦行はかなり強靭な精神の持ち主でないとできませんし、
できた所で血糖値の乱高下は依然として起こり続けるわけですから、その先に健康的な未来が待っているとも私にはなかなか思いにくいです。
それにこの指導パターンはやせ型体型の人に対しては使えません。
カロリーは制限できませんし、もっと食べてほしいし、もっと太ってほしいわけですから。
ではやせていて高血圧の人に対してはどういう指導がなされるでしょうか。おそらくは減塩を勧められると思います。
しかし単純に塩分を減らした所で、人間の身体には塩分を一定に保持しようとする代謝システムが備わっています。
減塩をして血圧が下がればまだいいですが、それでも血圧が下がらない場合にはもうお手上げという事になってしまいます。
しかし糖質制限の観点があれば、こうしたやせで高血圧をきたしている方に対しても生活指導ができます。
高血圧の大元の動脈硬化や血管炎症、それをきたす酸化ストレスの存在について説明し、強力な酸化ストレス源となる血糖値の乱高下を減らすよう糖質を減らすように勧めるのです。
その結果、酸化ストレスが減り、血管炎症や動脈硬化の進行に歯止めがかかれば、コレステロールなどの動員により血管が修復されていけばそれだけで血圧が下がっていく可能性があります。
また糖質を制限する代わりに脂質・タンパク質を補うのでカロリー不足になりません。脂質・タンパク質を制限しないので体重が増える方向にも持っていきやすいです。
糖質制限の方法論が広まれば、人間ドックも今よりも有益なシステムになるのに、このままでは受けない方がまだマシだとさえ思えてしまいます。
特に私は一応脳の専門家なので、
脳ドックに携わる機会が多いわけですが、
先日はこんな方がおられました。40代女性でやせ型の方です。
この方は血圧正常、コレステロール正常、運動習慣あり、喫煙・飲酒習慣なしです。
しかし頭部MRIを撮影しますと、無症候性の脳梗塞(いわゆる隠れ脳梗塞)が脳の中に散在している事がわかりました。
しかも毎年脳ドックを受けておられ、経年的にその脳梗塞の数が増えていっています。
こうした隠れ脳梗塞は年齢とともに増えていくというのはある程度仕方がないものと考えられていますが、40代で出てくるのはさすがに早すぎる印象です。
そこで食生活についてうかがってみますと、肉は脂身が苦手で食べられないと、野菜はしっかり食べているとおっしゃいます。
「甘いものを食べ過ぎたりしていないですか?」と問えば、そんなに極端には食べていないと思う、と返されます。
では「甘いものに通じる炭水化物はどうですか?」と問えば、「炭水化物は大好きです」との返答でした。
私はやせ体質の人こそより真剣に糖質制限に取り組まなければならないと常々思っているのですが、この方をみてもその想いを改めて強くします。
糖質制限は痩身法として捉えられている側面が大きいですし、
やせている事は社会的には美徳として捉えられているから、やせ体質の人は糖質制限実践者であっても、プチ糖質制限とか緩い糖質制限に留めている人も多いように思います。
しかし、やせ体質の人は太らない代わりに、それ以外の見えない部分で糖質の害をしっかり受けてしまっているというのが私の考えです。
ある人はアレルギー性疾患、ある人は自己免疫疾患、またある人は線維筋痛症とその表現型は千差万別ですが、
この40代女性の場合はそれが動脈硬化であったという事だと思います。そしていずれの場合にも背景に共通するのは糖質の過剰摂取です。
もはやこうした患者さんには従来医学の健診システムでは対応不可能です。
こうした患者さんの健康を本当に守ろうというのであれば、糖質制限を勧めるより他にないと私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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Against all odds
我が家は夫婦で毎年人間ドックを受診しています。糖質制限や一日2食を実行することで、様々な数値がどう変化をしていくのか見るためですが、医師や栄養士の先生の「指導」の時間は毎年忍耐が必要で気がめいります。
家内は超痩せ型ですが、数年前までは糖質を沢山摂っていて、恐らくその影響もあって、頸動脈のプラークを指摘されています。その後、糖質制限を始めたので悪化はしていないと思うのですが、プラークと高LDL値を見ただけで、スタチンが頭に浮かぶようです。我が家は信念を持って糖質制限をしていますが、そうでなければ、「指導」に従ってしまう人も多いでしょうね。
そんな苦痛を伴う人間ドックですが、毎年データを積み上げていって、私たちが健康であり続けることができれば、「ほら、大丈夫でしょ」と言えるので、これからも続けていこうと思っています。
Re: Against all odds
コメント頂き有難うございます。
> 我が家は信念を持って糖質制限をしていますが、そうでなければ、「指導」に従ってしまう人も多いでしょうね。
> そんな苦痛を伴う人間ドックですが、毎年データを積み上げていって、私たちが健康であり続けることができれば、「ほら、大丈夫でしょ」と言えるので、これからも続けていこうと思っています。
素晴らしいです。
そのように考えられる人が増えれば、本当に世の中は変わっていけると思います。
いつもブログで勉強させていただいています。ありがとうございます。
私はアトピーの改善のために糖質制限を始めて約4年になります。
糖質制限をする前には正常範囲だったコレステロール値がぐんぐん上がり、去年の9月に
総コレステロール 600
HDL 94
LDL 464
になりました。
この頃はMEC食を取り入れていて、アトピーはかなり改善されていました。
しかしさすがの高数値が恐ろしくなり、糖質制限をしたまま、肉や卵、バターの量を減らしていきました。
すると肌の調子はよくないのです。
最近は
総コレステロール 458
HDL 94
LDL 349
と少しさがりましたが、医者からは投薬をすすめられています。
高過ぎるコレステロールが続くのもよくないだろうし、今とても不安になっています。
中性脂肪や、血糖値は高くありません。
たんぱく質や脂質をたくさんとると体の調子は良くなり、逆に数値の方は悪くなる…何とも言えない気持ちです。
Re: タイトルなし
御質問頂き有難うございます。
> 総コレステロール 600
> HDL 94
> LDL 464
確かにその数値を見ればほとんどの医師がコレステロール低下医療を勧めてくるでしょうね。
ですが、私の考え方は違います。
糖質の害が取り除かれたのであれば、そのコレステロールは上がるべくして上がっていると思います。コレステロールは身体の中で起こる炎症の際に誘導される修復物質の側面があります。アトピーともなれば皮膚を主体に長年炎症が起こり続けていたわけですから、組織を修復するのにコレステロールが急上昇するのも無理もない話なのでしょう。
それに中性脂肪が正常なら、いわゆる超悪玉と称される「酸化型LDL」は少ないと考えられます。
ですので今上昇しているコレステロールは身体にとって必要だから身体が合成しているものなので、そのまま身体に任せておけばいいと私は考えます。
そして食べていた方が体調が良いのが何よりの安心材料です。血液検査の結果よりも実際の体調を健康のバロメータにする方がよいというのが私の考え方です。
2014年8月23日(土)の本ブログ記事
「体調が最良のバロメータ」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-397.html
も御参照下さい。
自分の体調よりも数値に惑わされてしまい、もしかしたら私には糖質制限は合わないのかも、やり方が間違っているのかも、と弱気になっていました。
今後もブログで勉強させていただきます。
ありがとうございました。
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