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糖質摂取と冷え,むくみ

category - 漢方のこと
2013/ 10/ 26
                 
冷え症とか足のむくみは女性を中心にありふれた症状です.

これらは「病院に行くほどではない」といったレベルの状態もありうるのでおそらくは相当の人数が悩まされている症状なのではないかと想像します.

糖質の摂取は水を一緒に引き込みむくみの原因となります.また過剰に取り込んだ水は体内での水のバランスの不均衡の原因となり冷え症の原因にもなります.

西洋医学でこの冷えやむくみに対応しようとすると,血流改善薬や利尿薬で対応することが多いのですが,この方法は原因に対して無頓着なので私はあまり好みません.

一方で東洋医学,漢方はこの冷えやむくみという症状に対してもう少し根本的な部分に踏み込んでアプローチしようとします.

今日はある漢方の本を読んでいて,この話に関連するテーマの結構面白い内容の記事がありましたので紹介したいと思います.
            

(以下,抜粋)

漢方薬プラスα―生活指導で効果UP

白砂糖と水毒 日本大学医学部内科学系統合和漢医薬学分野助手 上田ゆき子

外来で行う生活指導は食事・睡眠・運動を三大柱としていますが,医食同源の観点から,やはり食事指導がとても重要な位置を占めます.食習慣の乱れが原因と思われる症状はたくさんありますが,特に白砂糖の摂取過剰が原因の1つと思われる例を多くみかけます.


「白砂糖が冷えやむくみを招く」

大学生のA子さんは冷え症とむくみを主訴に来院されました.色白でやせている女性で,足がむくんで冷えるといいます.腹証や所見から血虚と水毒と診断して当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)を処方しました.

2か月後,多少改善はあるものの期待するほどではないと言います.

そこで食生活について聞いたところ,1日1.5Lのジュースを水代わりに飲んでいるとのことでした.

漢方を変えずに,ジュースを水に変えるように指示したところ,2か月してむくみや冷えが大きく改善しました.


60代後半のT美さんは変形性膝関節症を主訴に来院されました.膝の痛みと水腫があり,定期的に整形外科で水を抜いてもらっています.腹証や所見から防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)を処方しました.

食生活について聞くと,甘いあんこが大好きで,毎食後に和菓子を食べてしまうとのことです.

これを控えてもらうようにしたら,関節内に水が溜まりにくくなり,足の痛みが軽減しました.

いずれの女性も水毒の症状がありましたが,利水を促す漢方薬の使用と同時に,原因の一つと考えられる白砂糖を控えることで改善がみられました.

「薬膳における白砂糖の効能」

現代栄養学では,精製された白砂糖の成分は95%が蔗糖(しょとう)です.血糖値を上昇させ熱産生がありますが,摂取過多は糖尿病の原因の1つと言われています.

一方で薬膳では,白砂糖の効能として補気補中・潤燥・緩急止痛などがあげられています.

適量の摂取であれば,これらは効果的に体に作用します.例えば緩急止痛作用は緊張を緩め痛みを止める働きなので,強いストレスが続いた時などに甘いものを食べると,緊張が緩んで落ち着くことは多くの人が経験しています.

しかし,摂取し続けると,潤燥効果が過剰に働き,体内に「湿」を生み,水毒を悪化させてしまうと考えられます.

「白砂糖の問題は根が深い」

通常,食品は多成分であるからこそ穏やかに作用し,同じものを摂取し続けても害は少ないと考えられています.しかし精製された白砂糖はほぼ単一成分であるため,体に鋭く作用します.

当然,日常的に摂取し続けると作用が大きい分,副作用も大きくなると考えられるのです.そうした意味では,白砂糖は薬に近い食品なのかもしれません.

白砂糖と同じように水毒を生みやすい食品としてアルコールがありますが,アルコールは単体で摂取することが多く副作用も目立つため,その害は広く知られています.

他方,白砂糖は単体で摂取することは少なく,多くの食品や飲料に含まれてしまっているのでわかりにくくなっています.

だからこそ,白砂糖の問題は根が深く難しい問題ではないか,そんなふうに考えています.

(抜粋,ここまで)


この記事,なかなか良いですね.

白砂糖の部分を「糖質」や「炭水化物」に置き換えて読めば,糖質制限の重要性を示唆する文章へも変化します.

記事の中で出てくる「水毒」というのは漢方医学で言う「水のバランスが崩れている状態」のことを言います.

西洋医学の「脱水」とは概念が異なり,あくまで「水の不均衡」です.たとえば「口は渇いているけど,足はむくんでいる」といった水が偏在した状態を指すわけです.

白砂糖をとりすぎると水のアンバランスが生じ,よって冷え症やむくみの原因になってしまうというわけですね.

また,次の文章は

適量の摂取であれば,これらは効果的に体に作用します.例えば緩急止痛作用は緊張を緩め痛みを止める働きなので,強いストレスが続いた時などに甘いものを食べると,緊張が緩んで落ち着くことは多くの人が経験しています.

と適量の白砂糖摂取を好意的に解釈していますが,

白砂糖をとって緊張が和らぐという効果は,先日記事にした「糖質摂取」→「追加インスリン分泌」→「トリプトファン優先利用」→「セロトニン合成」というプロセスを介しているものと思われます.

ただ私に言わせれば,この効能は「付け焼刃」であり,一時的にはよくても次の糖質への依存心を生みだすので,あまりお勧めできません.

安定的に緊張を和らげるようになりたければ基礎インスリンでも十分にセロトニンが合成できるように,糖質制限を末永く続けることが一番だと私は考えます.

また,次の文も参考になります.

通常,食品は多成分であるからこそ穏やかに作用し,同じものを摂取し続けても害は少ないと考えられています.しかし精製された白砂糖はほぼ単一成分であるため,体に鋭く作用します.

当然,日常的に摂取し続けると作用が大きい分,副作用も大きくなると考えられるのです.そうした意味では,白砂糖は薬に近い食品なのかもしれません.


西洋薬は基本的に単一の成分です.それに対して漢方は多くの場合,複数の生薬から成り立っており効能が複雑になってきます.

そしてもっと言えば「食品」はそれ以上にさまざまな栄養成分の組み合わせでなります.

つまり人体への作用の鋭さで言えば

 西洋薬>漢方薬>食品

であり,

人体への優しさ(安全性)で言えば

 西洋薬<漢方薬<食品

となります.これは非常に有益な考え方です.

医食同源,「Do No Harm(まず害をなすことなかれ)」を実践するためには食事が肝要だ,ということを改めて思い知らされる次第です.


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
たがしゅうさん

冷え性の改善は運動と糖質制限でしょうね。自転車を始めたら明らかに良くなって、糖質制限で効果倍増という感じです。また逆に夏場の足のほてりやそこから来る異常なほどの発汗の抑制にも効果があります。

日本の家屋は伝統的に隙間風が入りますよね、寒さより湿度を嫌ったものでしょうけど、ウールもダウンも電気毛布もなかった時代でも過ごせたというのはやはり現代人とは比較にならない運動量がなせる業でしょうか。更に言えば氷河期すら生き抜いてきたわけですが。
Re: No title
SLEEP さん

いつも貴重なコメントを頂き有難うございます。

> 冷え性の改善は運動と糖質制限でしょうね。自転車を始めたら明らかに良くなって、糖質制限で効果倍増という感じです。また逆に夏場の足のほてりやそこから来る異常なほどの発汗の抑制にも効果があります。

実体験に基づくご報告、非常に参考になります。

冷えもほてりも改善するとなると、糖質制限が自律神経のアンバランス自体を改善している可能性がみえてきます。

> 日本の家屋は伝統的に隙間風が入りますよね、寒さより湿度を嫌ったものでしょうけど、ウールもダウンも電気毛布もなかった時代でも過ごせたというのはやはり現代人とは比較にならない運動量がなせる業でしょうか。更に言えば氷河期すら生き抜いてきたわけですが。

こちらも面白い考察ですね。

脂質、タンパクを中心にした食事で熱産生能が高まり、いわゆる基礎代謝が高まっている事が関係していると思います。

確かに私も寒い時期、少し薄着くらいがちょうど心地がよかったりします。
No title
たがしゅうさん

「人類20万年遥かなる旅路」アリス・ロバーツ
という本に人類の寒冷適応についての記述があります。トナカイを主食とするシベリア人は驚くほど寒さに強く、マイナス30度でも普通に活動できるそうです。トナカイの毛皮さえあれば。ミトコンドリアの産生熱がこれらの極地に住む人々は我々と比べてひどく多いとか、そういう記述もありますね。

自分も糖質制限始めてから薄着のほうが良いですね。
Re: No title
SLEEP さん

いつもコメント頂き有難うございます。

> 「人類20万年遥かなる旅路」アリス・ロバーツ

面白そうですね。今度また手に入れて読んでみます。

ヒトは外界の環境の変化へは極めてよく対応できているという事がわかります。

一番の敵は身体の内側からくるものかもしれません。

すごい…
冷えの事について
いろいろ調べていたら
このブログにたどりつきました★
すごく詳しくて分かりやすくて
参考になりました☆
私も甘いジュースなど大好きなので
気をつけようと思いますΣ(゚Д゚)

http://momoelife.seesaa.net/
Re: すごい…
もも さん

 コメント頂き有難うございます.

 少しでもお役に立てれば幸いです.今後とも宜しくお願いします.