2015年を振り返る
2015/12/31 17:30:01 |
自分のこと |
コメント:2件
2015年最後の日です。
恒例となりましたが、今年も本ブログの1年を振り返ってみたいと思います。
今年は本記事も併せて全部で122の記事を書き上げました。
昨年の391記事に比べると大幅な失速となりましたが、
なんと言っても3月に起こった個人的な出来事の影響があまりにも大きかったです。
その節はブログ読者の皆様には大変な御心配をおかけ致しましたが、
温かいメッセージをたくさん頂き、私は何とか持ち直す事ができました。
何も聞かずにただただ私の身を案じて頂いた皆様には心より感謝申し上げる次第です。
この出来事に象徴されるように、私にとって2015年は試練の年でした。 と同時に始まりの年とも言える年にもなったように思います。
私は今大学病院の一勤務医ですが、
いくら理想をかかげた所で組織の一員である以上、
できる事には限界があるという事を感じています。
また正しい治療法を、いくら時間をかけてどれだけ丁寧に説明したとしても、
それを相手が理解できなければ、あるいは理解する受け皿を持っていなければ、
その努力は徒労に帰すどころか、かえって自分の首を絞めることになってしまう場面もあるという事です。
だから私は今の立場に終止符を打ち、次のステージに進まなければならないと思っています。
2015年はアドラー心理学の紹介に始まった年でした。
「嫌われる勇気」という言葉は孤軍奮闘で糖質制限推進派医師の立場を取り続ける自分にとって心に響きました。
またこれまでに引き続き糖質制限の理論をさらに深めていく努力も続けていきました。
例えば非必須栄養素も重要であるという観点、食べれば食べるほど栄養素を枯渇させるという観点など、
あまり今まで言われていなかったような内容にも注目する事ができました。
そして何より大きかったのは「オートファジー」について自身の理解を深めた事でした。
カロリー理論がデタラメである一因にはこのオートファジーが大きく関わっていますし、
オートファジーの事がわかれば、糖質制限の壁を超えるにはどうすればいいかという道筋も見えてきます。
ただ、どうすればいいかはわかっても、それを実際にできるかどうかは別問題という事もあります。
またオートファジーの事が理解できれば、断食や不食への理解も深まります。
断食はまだしも、不食に至っては現代医学から全く相手にされていない状況とは思いますが、
私はこれらは難病態を乗り越えるための鍵を握っている立派な治療行為だと考えています。
さらにケトン体についても、多面的な鎮痛効果に加えて、虚血に抵抗性がある事など、新たな事実も学ぶ事ができました。
一方、世の中の医師の大半はケトン体についてたいして関心がなく、
むしろ糖尿病について詳しい先生であればあるほどケトン体を危険視するという構図があります。
それは医学教育の中で、ケトン体について深く学ぶ場がないという事が背景にあると私は思います。
ケトン体について学ぶとすれば生化学の時間に、「飢餓の際の代替エネルギー源である」と知るのが関の山であって、
ここでケトン体が「本来的なものではなくあくまでオプション」的なイメージを植え付けられます。
そして糖尿病の専門家は実臨床の中でケトアシドーシスを経験する機会も多いので、
このイメージに「ケトン体は危険。しかもそれは糖尿病を専門で扱っている自分達だからこそ知る事実」といったプライドも伴うようになります。
しかし私は糖質制限を通じて、その見解が誤解である事が明確にわかりますし、
「基礎インスリンが保たれている状況下であれば、ケトン体は安全な物質である」と断言できます。
どれだけ偉い先生がまともな事を言っているようであっても、
決して自分の頭で考える事を怠ってはいけないという事を再確認する一年でもありました。
これらの事から今年私が学んだ事をまとめると次のようになります。
・糖質制限の本質はケトン体質に傾けること。
・ケトン体質である事には様々なメリットがある(例:抗炎症、神経保護、ミトコンドリア機能改善、酸化ストレス軽減、鎮痛、抗てんかん)。
・そしてケトン体質である時間が長ければオートファジーが活性化し、さらなるメリット(例:外部からの必要エネルギーの節約、タンパク変性進行抑制、不使用遺伝子の発現など)が得られる。
・そのオートファジーを活性化させる最強の刺激が、絶食や不食である。
・しかし糖質代謝のまま絶食や不食に急に切り替える事はすべてのステップをすっ飛ばす行為であり、身体が適応しきれず大変危険である。
・オートファジーが活性化した状態でタンパクを摂りすぎていると、必要以上にたんぱく質を摂りすぎると高たんぱく質の弊害が無視できなくなる(例:高インスリン血症に伴うやせにくさ、発がんやタンパク変性のリスクなど)。
・逆にオートファジーをうまく使えていない人は栄養素が枯渇しやすいので、頻回に食事をとらないと現状維持しにくい。
昨年末に私は抱負として、医療以外の様々な事を学びたいと述べました。
しかし残念ながらその目標はあまり達成する事ができませんでした。また昨年もうまくいきませんでした。
こうしてみると、1年に限って目標を定めるというのは大変難しい事のように思えます。
しかし長期的な夢は確かに持つ事ができるようになりました。
それは、「糖質制限をベースに現代医療では救えない患者を救える医師になること」です。
そのために短期的な目標にこだわるのはもうやめにします。
長期的な目標を見据え、決してその目標を見失わないように、
この糖質制限ロードを引き続き歩んでいこうと思います。
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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はじめまして
40代女性、鍼灸師をしております。
2年程前に逆流性食道炎を患いました。鍼灸や漢方薬で治療をしていましたが、食事で改善できることもあるはずだと思い、色々と調べたところ、江部先生のブログにたどり着き、糖質制限を始めました。
それまでパンや甘いものが大好きで、なかなか糖質摂取を減らすのが大変でしたが、プチから始めて徐々に慣らしていき、今ではスーパー糖質制限に落ち着きました。もともと痩せ型なのですが、逆流性食道炎であまり食べられなくなり、BMIが17まで落ちました。しかし、糖質制限を始めて蛋白質・脂質を毎食しっかり摂取するようにしたところ、食べても気持ちが悪くなることがなくなり、体重は5kgほど増え、BMIも19近くまでになりました。
たがしゅう先生のブログには、江部先生のブログからたどり着きました。江部先生のブログに、たがしゅう先生が「アドラー心理学」について投稿された記事を読んだのがきっかけです。それ以来、たがしゅう先生のブログも読むようになりましたが、コメントを投稿するのは今回が初めてです。
たがしゅう先生が紹介されていた『嫌われる勇気』を読みました。“幸福とは貢献感である”というメッセージが心に響きました。
私は大学卒業後、一般企業で働いていましたが、体調を崩したのをきっかけに、一生の仕事として自分は何をやりたいのか熟考し、最終的に鍼灸師の道を選びました。もともと東洋医学には興味があったのですが、西洋医学的な治療ではあまり改善しなかった体調が、鍼灸治療で回復したからです。私のような患者さんを救えるような治療家になりたいという一心で、仕事を辞めて鍼灸師免許を取得し、今は臨床に携わっております。
自分の力不足を感じて思い悩むこともありますが、患者さんの痛みや苦しみを和らげることができたとき、自分が人の役にたっていると感じられ、心から嬉しく、幸せを感じます。まさに“他者に貢献していると感じられること”が、自分の幸福になっているのです。
たがしゅう先生は「糖質制限をベースに現代医療では救えない患者を救える医師になること」が長期的な夢とおっしゃっていますが、私もそのような治療家になることを目標にしています。医師ではないので漢方薬の処方はできませんが、根本的な体質改善のための糖質制限を基本に、鍼灸や気功などを使って、患者さんの状態を自然治癒の方向に向けることのできる治療家になりたいと思っています。
私の2015年を振り返ると、たがしゅう先生のおかげでアドラー心理学に出会い、自分のこれからの生き方を改めて考える機会をいただくことができました。本当に感謝しております。
私に与えられた時間がどれほどあるのかわかりませんが、その中で一人でも多くの方の救いになれるよう、日々勉強し、よりよい治療を行えるよう努めていこうと思います。
昨日のブログでは『幸せになる勇気』を紹介してくださり、ありがとうございました。さっそく読みたいと思います。
これからもブログの更新を楽しみにしております。長文になってしまい、失礼いたしました。
Re: はじめまして
コメント頂き有難うございます。
私はアドラー心理学の考え方に深い共感を覚え、東洋医学の考え方・スタンスを大事に思う医師です。
心身一如、人間を分解して解明しようとするのではなく「全体」として捉えようとしている姿勢があるからです。
西洋医学的な科学の視点だけでヒトの病気を解明しようとするのは土台無理な話で、それが証拠に現代医療で治せない病気はごまんとあります。まずはその事実に真摯に目を向ける所から始めるべきだと思います。
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