極端な発想もいったん受け入れる
2015/09/12 12:50:00 |
ふと思った事 |
コメント:11件
糖質制限理論は科学的に妥当性のある理論です。
科学理論の中で再現性が得られるものはかなり信頼がおけるものです。
その意味で誰がやっても血糖値を下げる事ができる糖質制限は、大変科学的で優れたものだと言えると思います。
そしてそれ故糖質制限のような科学的な理論は、大きな説得力を持つのが魅力です。
一方で再現性がないものは科学的ではないかと言えば、そういうわけではありません。
例えば私が注目しているのは漢方です。よく漢方は科学的でないと批判されがちです。
確かに誰にでも効くわけではないという再現性の乏しい側面はありますし、科学的に立証不十分な点も否めません。
しかしそれは漢方が悪いわけではなく、複数の生薬を混合した超多成分系の薬と、それに対応する物質の複雑集合体である人体との反応を、
科学がまだまだ捉えきれていないだけだと私は考えています。 また非科学的なものが全てだめかと言われたら、そういう訳ではないとも考えています。
科学で理解できる事は全事象のほんの一部であると、そういう謙虚な姿勢をもっていなければならないと思うわけです。
それは非科学的な糖質制限批判を浴びせてくる守旧派のことだけではなく、
我々糖質制限実践者でも自問してみないといけない事だと思います。
糖質制限理論に安定感があるためにそれに安心しきってはいないでしょうか。少し自問してみましょう。
例えば、糖質制限実践者はよく「糖質制限をすれば必須栄養素がくまなく取れる」と言うことがあります。
それは確かにその通りで、私もそうだと思います。
しかしその一方で少食にして健康を取り戻している方がいます。
少食の程度は人それぞれでしょうが、見かけ上明らかに必須栄養素が不足しているにも関わらず、明らかに健康を取り戻している方が存在します。
その代表格が当ブログでもしばしば取り上げさせて頂いている森美智代さんです。
ただ森さんが少食でも元気な理由は、度重なる断食を経て腸内細菌叢が草食動物用に変化し、その腸内細菌叢がわずかな青汁から必須栄養素が合成されているからだ、と科学的に説明されています。
この話はカロリー理論に科学的に大きな穴がある事も示しているわけですが、
必須栄養素がないと生きていけないという論法にも若干理論の穴を作っていると思います。
いくら草食動物用の腸内細菌叢があるからといって、わずかな青汁で必須栄養素が全てくまなく作れるものでしょうか。ましてや森さんは難病を克服しているわけですから、普通に健康を保つ以上の改善効果です。
そんなの嘘だと思考拒否するのは簡単ですが、私はこういう一見極端に思える話も無下に否定せず、
一回受け入れてみる事はとても大切な事だと思っています。
なぜならばその事象が理解できないのは自分の力が、ひいては現代の科学がまだまだ未熟なだけかもしれないからです。
その代わり受け入れた結果、その話を科学的に否定できる場合は徹底的に拒絶しますけども。
森さんのケースの場合は、絶食や超少食により、食による代謝の不安定化が極小となり、代謝が極めて安定することによって、
オートファジーと呼ばれる自己タンパク質消化・自己タンパク再利用システムが極めて有効に働くようになっているから、
たとえ必須栄養素をとっていなくとも、自前のタンパク質を上手に節約してうまく生きているのではないかと私は思います。
実際、森さんが罹患された脊髄小脳変性症をはじめとした神経変性疾患ではオートファジーの異常がある事が、近年神経内科の領域で注目されています。
ここまでは科学的に説明可能です。では少食をさらに進めた「不食」ではどうでしょうか。
弁護士の秋山佳胤(よしたね)さんは、6年間基本的に食事なしで水も飲まないという生活を続けて健康を保っていると著書の中で述べています。
そして彼は食べものの代わりにプラーナと呼ばれる目に見えないエネルギーを得ていると主張しています。
いよいよ怪しいと感じる人もいらっしゃるかもしれませんが、これも無下に否定せずいったん受け入れてみましょう。
例えば森さんの腸内細菌叢が草食動物化しているように、ヒトが光合成できるようになる可能性はないでしょうか。
あるいはヒトが無理でも、光合成可能な細菌を身体に宿す可能性はないでしょうか。細菌の中に光合成ができるものがいる事はすでに立証されているようです。
またヒトのヘモグロビンの構造と、植物が光合成を行う葉緑素の中のクロロフィルの構造は、中心部分が前者では鉄、後者ではマグネシウムの違いしかない事が分かっています。
何らかの遺伝子変異によって鉄がマグネシウムに変化する原始転換と呼ばれる現象、それが絶対に起こらないと言い切れるものではないのではないでしょうか。
だから現時点で私は不食を科学的に否定する事ができません。否定できないという事は「あるかもしれない」という事で、私はそういうスタンスで不食の方々の動向に注目しています。
最後にもう一つ興味深い話があります。
それはヨガを極めた人が到達すると言われる「サマディ」という極限状態の事です。
「サマディ」とは、「心と体を超越し、すべてを超えて、創造の源の存在・至高なる存在・神と一体になる、人の意識の究極のステージのこと」と定義されているようですが、
中でも「アンダーグラウンドサマディ」というものがあって、
これは地上との接触をいっさい遮断し、水、食物はもとより、充分な空気のない完全に密閉された地下窟に72~96時間滞在するというものだそうです。
これで生きられるのなら、私の光合成理論でも説明困難になってきます。
ただし「アンダーグラウンドサマディ」はそれにより命を失う人も出てくる大変危険な修行だと位置付けられていますし、一時的な行為なので、
不食と同列で語れるものではないとは思いますが、
私が言いたいのは「そんな事は科学的にありえない」と安易に言うべきではないという事です。
さもなくば自由な発想を科学が制限してしまう事にもなりかねません。
この事はエビデンス信奉派医師の問題にも通じることです。
私達は、現実に起こっている事を謙虚に受け止め、
科学の限界を承知した上で学びを続けていくべきだと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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「食べない人たち」私も読みました。
“不食でも生きていける”と心から納得できるなら、不食でもきっと生きていけるような気がします。
思い込み=真実、なのかなと、この本を読んで感じました。
たがしゅう先生にご相談です…
知り合いに、薬漬けの人がいて(コレステロールを下げる薬や抗うつ剤など)、その人に「コレステロールは悪者ではない、下げる薬こそが人を廃人にしてしまう」「たがしゅうブログを読んで正しいことを勉強して!」と伝えたくて仕方ないのですが、でもそれは私が正しいと思っていることであって、その人にとっては、コレステロールは下げないといけない、というのが正しいわけです。。
科学的な正誤よりも、本人が思い込んでる事こそが真実なのかなぁと思うとなかなか言いだせません。
『人は思った通りの人になる』のかなと…
私は口を挟むべきでしょうか…?
それとも、その人の意見を尊重すべきでしょうか。
あなたは間違ってる、と言われれば、みなきっと良い気はしないでしょうし…
Re: タイトルなし
御質問頂き有難うございます。
> 知り合いに、薬漬けの人がいて(コレステロールを下げる薬や抗うつ剤など)、その人に「コレステロールは悪者ではない、下げる薬こそが人を廃人にしてしまう」「たがしゅうブログを読んで正しいことを勉強して!」と伝えたくて仕方ないのですが、
> 私は口を挟むべきでしょうか…?
> それとも、その人の意見を尊重すべきでしょうか。
難しいところですね。
もしもその人が自分にとって大事な人であれば、情報を伝え続けるかもしれません。
逆にそうでもない人ならば、「この人は変わらない脳の持ち主だ」と思ってすんなり諦めるかもしれません。
でも基本的にはその人の意見を尊重すべきだと私は思います。
そうですよね…、物言いはやめておきます。
話は変わるのですが、最近「禁煙セラピー」という本を読んでいます。
私は煙草を吸った事がないのですが、煙草を糖質に読み替えると、ものすごく納得できます。
今までお菓子を食べてストレス発散しているつもりが、お菓子を食べる事こそが、ストレスになっていたのかな、と思います。
糖質制限は我慢ではないですね!
糖質からの解放による喜びと、自信と勇気の回復なのですね!!
たがしゅう先生は、現在、糖質を摂取されることはありますか??
全力で糖質ゼロを継続されていますか?
受け止めと理解
人体については腸内細菌などを初めとして未だ解明されていない事がいくらでもあるでしょうから、「科学的にあり得ない」と言うのは早すぎるのかもしれません。
不食に限らず、色々と信じられないよう事が起きるのも人体でしょうからね。
有名なルルドの泉では、カトリック教会が医学的に厳正な調査を経て認定した「奇跡的治癒」の例が僅かながらあるんだそうです。まだまだ人体は奥が深そうです。
ところでアンダーグラウンド・サマディですが、かつてのオウム真理教でそれを実際に行った人の本などを読むと、
地下に入る前に一か月から二か月ほどの断食を伴う修行(?)を行うので、代謝も落ちて酸素消費も減り、そのような環境でも耐える事ができる…との話でした。
あり得なくもないかな?と思います。ちょっと、想像し難い世界ではありますが(笑)
Re: タイトルなし
> 話は変わるのですが、最近「禁煙セラピー」という本を読んでいます。
> 私は煙草を吸った事がないのですが、煙草を糖質に読み替えると、ものすごく納得できます。
同感です。「依存性がある」という点でそこには共通の構造があると私も思います。
Re: タイトルなし
御質問頂き有難うございます。
> たがしゅう先生は、現在、糖質を摂取されることはありますか??
> 全力で糖質ゼロを継続されていますか?
私は基本的に糖質の少ない食品を選び、気がむいたら断食する、その過程で決して無理はしないというような感じで日々の食事と向き合っています。したがってそのスタンスでいて自然に入ってくる分の糖質量は許容しています。
糖質ゼロを意識しすぎると、糖質を取ってしまった時に自分に対して情けなく感じたり、罪悪感を抱いたり負の感情がうずまいたりしてしまう事があると思います。完璧を目指すなら別ですが、私はそこまでの人間ではないとわきまえていますので、分相応の取り組み方で行こうと思っています。
Re: 受け止めと理解
コメント頂き有難うございます。
> 人体については腸内細菌などを初めとして未だ解明されていない事がいくらでもあるでしょうから、「科学的にあり得ない」と言うのは早すぎるのかもしれません。
共感頂いて何よりです。
糖質制限にせよ高糖質食にせよ、食をベースにした文化の中では、「必須栄養素をくまなくとりましょう」というのは大事な考え方には違いないとは思いますが、
不食やサマディに学ぶように、世界はそれだけではないと思っています。食べない事をベースにおけば食べる事そのものがリスクとなります。知らず知らずのうちに自分の視野を狭めてしまわないよう謙虚に学びを続けていきたいものですね。
No title
さささんとたがしゅう先生の最初のやり取りを読んで私も思うところがありましたのでお伝えします。
私の場合ですが
対象となる人に自分の考え方を伝えたいときで、
自分の考え方の方で実行したほうがその人のためになる場合、
大切な人であれば、相手を否定せずに熱心に伝えます。
大切な人だから、大切にしたいという気持ちを思い切り出します。
大切な人ではない場合で、しかし伝えたい場合は
さらっと伝えます。
「昨日テレビでさあ、こんなことやってたんだよ・・・
今はこんなことが研究されてるんだね~。面白いね~。」
という感じです。
伝え方には人それぞれで、色々とやり方はあると思いますが、糖質制限という情報を知っているか否かでその人の人生が大きく変わってしまうかもしれません。
たとえさわりだけの知識しか伝えられなかったとしても、その人が糖質制限について他で情報を得る機会があったときに
「あ、そういえばあいつが以前糖質なんちゃらとか言ってたっけなー。」
と思い出したら、興味を持ってくれるかもしれません。
内容を知ったら、すごく感謝されるかもしれません。
お互い幸せになるかもしれません。
変わらないと決めるのもその人の意思であったとしても、選択肢は多いほうがいいです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 大切な人であれば、相手を否定せずに熱心に伝えます。
> 大切な人だから、大切にしたいという気持ちを思い切り出します。
同感です。大切だと思うからこそ糖質制限をやってほしいと思います。
しかし一方で価値観を押し付ける事にもなりかねない。理解してくれた時はいいですが、そうでなかった時にジレンマを抱える難しさがあります。
> 大切な人ではない場合で、しかし伝えたい場合は
> さらっと伝えます。
> 変わらないと決めるのもその人の意思であったとしても、選択肢は多いほうがいいです。
こちらも同意見です。
私の場合も、少なくとも1回は相手に情報を伝えます。
しかしそれで反応が悪い場合はきっぱりとあきらめます。
最初の頃はそれでも何度も伝えようと努力していた時期もありましたが、どうやっても変わらない人っています。そういう人かどうかは何度か糖質制限の説明を経験していくうちになんとなくわかってくるので、そういう時はこれ以上無駄な努力をしないよう割り切って気持ちを切り替えます。そうしないと自分が辛くなってしまうからです。
最初は、チラッと軽いノリで伝えてみるのがいいかもしれないですね。
まずは私自身が、見本になれるような、心と体にならないと、何も伝えられないので、糖質制限頑張って続けていきます。
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