糖質制限の理解なくして断食をすすめてはならない
2015/07/22 08:00:00 |
よくないと思うこと |
コメント:14件
また一つ糖質制限を批判する書籍が世に出ました。
書かれたのは当ブログでも以前取り上げた事のある、人参・リンゴジュース断食を推奨されている石原結實医師です。
糖質制限推進派医師としては、批判本で書かれている内容を論破できる必要性がありますので、
今回も検証してみたいと思いますが、まず最初にこの本に関しては個人的に驚かされたことがあります。
というのは私は本ブログにおいて糖質制限以外にも漢方、絶食療法(断食)についての考察も展開しておりますが、
石原先生も漢方、断食を扱っておられる先生です。それなのにも関わらず、この度糖質制限を明らかに否定しているのです。
これは聞き捨てならないという事で書籍を購入し、内容を熟読してみました。
その結果、この本もこれまでに検証した批判本と同様に、勝手な決めつけや憶測で展開される論拠に乏しいものでした。 私は本を書かれるような人は、頭が良くて知識が豊富で自分達にはおよそ到達できないワンランク上のステージにいる人達だと思っていました。
しかし世間的に素晴らしいと言われる人がこのような説得力のない糖質制限批判を次々とされていく姿をみるにつれ、
その想いは薄れ、それと同時にやはり「自分の頭で考え続けなければならない」との想いを強くしています。
特に断食を取り扱う医師が、糖質制限を理解できないというのは、私に言わせれば本質の見過ごし以外の何者でもありません。
石原先生は著書の中で次のように述べています。
(p3より引用)
人間60兆個の細胞のエネルギー源は、ほぼ100%「糖」に依存しているからこそ「低血糖発作」(イライラ、冷や汗、動悸、頻脈、失神)は存在するが、「低タンパク発作」や「低脂肪発作」は存在しない。
(p47より引用)
血糖が下がってくると、肝臓や筋肉内に蓄えられているグリコーゲンから糖がつくられ、血液中に放出されて、低血糖状態から逃れようとする。
グリコーゲンも枯渇すると、皮下や内臓にたまっている中性脂肪から、肝臓でケトン体(アセトン、アセト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸)が合成され、骨格筋、心臓、腎臓などのエネルギー源になる。
ケトン体が血液中に多くなりすぎると「ケトアシドーシス(酸血症)」となり、危険な状態となる。
(引用、ここまで)
「ブドウ糖は脳の唯一のエネルギー源」という言葉は、
糖質制限について不勉強な医師からよく聞かれる言葉ですが、
石原医師の場合も、例に漏れず同様の表現をされていますし、ブドウ糖と糖質の区別もついていない感もあります。
さらに糖にほぼ100%依存すると言っておきながら、ケトン体をエネルギー源にすることができるとも言っており、明らかな自己矛盾があります。
さらに断食を推奨している医師にも関わらずケトン血症を危険視しているという有様です。
はたして石原医師は断食をしている人のケトン体の値を測定した事があるのでしょうか。
もし測定した事がなければ問題ですし、測定し高ケトン血症を確認した上で断食を指導しているのであれば自らが危険視するケトン血症の状態を見過ごしている事になるわけでそれはそれで問題です。
結局、断食療法の有効性は「いかにケトン体を有効に使うことができるか」という事にかかっているわけです。
食事が高糖質の内容であっても、人参・りんごジュースのように全体カロリーが少なければ結果的に低糖質となるので、ケトン体に身体が慣らされていくので、
人参・リンゴジュース断食でも一定の効果は期待できることでしょう。
しかしその理由が「ケトン体」に対する解釈の違いで私と石原医師では真逆です。
解釈が違っても結果が良ければ良いでしょうか。私はそうは思いません。
なぜならばたとえ結果がよかったとしても、その原理の解釈を間違っていれば応用が効かないからです。
高糖質内容での断食を推奨し続けていれば、糖質代謝からケトン代謝への切り替えがうまく行かず、それこそ「低血糖発作」を起こしてしまうリスクが高くなります。
「低血糖発作」がある事は「糖質の重要性」を示しているのではなく、「ケトン代謝を使えなくなる代謝障害の存在」を意味しているわけです。
本を書くような頭の良い人でも、人間である以上間違う事もあると思います。
しかし、本になればそれは誰かの手に渡り、その言葉は一生残り続けます。
間違いを極力排除して世に送り出す、それが物書きとしての責務だと思いますし、それができなければ本を書くべきではありません。
そして一番悪いのは間違いを自覚せずに本を書き続けることです。それは徹底的に正していく必要があります。
次回以降はこの本の内容についてもう少し具体的に触れていきたいと思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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少食から糖質の害がわかりそうなのに
とうとう石原先生も糖質制限批判本を出版されましたね。
私は、石原先生の著書を読んで、なぜ少食が健康に良いのかを考え、いろいろと本やネットで調べていくうちに糖質の過剰摂取が体に良くないと気付きました。
なので、石原先生は、糖質制限を知るきっかけになった方なので、今回の糖質制限批判はちょっと残念です。
石原先生も、若い時に西洋医学で治せない患者を見て、漢方や東洋医学も勉強するようになったと、以前、著書に書いてあったと思います。
今は、石原先生が新しい治療法を否定するようになってしまったんですね。
自分で考える大切さ
糖質制限の批判本。次から次に出てきますね。
世の中には、色んな情報が溢れ、その情報は正しい事であったり間違った事であったり様々です。
そんな世の中ですから、本当に大事なのは、それらを自分自身で考えて見極める力なのではないかなと思います。
私は、たがしゅう先生はじめ、尊敬している先生方がたくさんいます。ですが、失礼ながら先生方の言われる事をなんの疑いもなく素直に聞き入れるわけではありません。一度自分の中で考えて、試せる事なら試してみて、そして初めてそれらを受け入れる事が出来ます。
糖質制限の批判も、私にとっては勉強の材料になります。批判に対しての自分なりの正しい答えを考えるきっかけになりますから。
ですが、多くの方は、言葉をそのまま受け取ってしまう事も多いですね。それがわかっていながら本気で追求もしないまま本を書かれている先生方が多いとしたら確かに困った事ですね。
ですから、世の中に困った情報が溢れているのなら、そういった事にまどわされずに、自分自身で考える事が大切なのではないかなと思います。
何か意外ですね
糖質制限は断食と親和性の高い印象でしたが、こういう方もおられるんですね。
批判は残念ですが、普段とは違う視点から見る糖質制限への指摘があるでしょうから、それはそれで興味深い気もします。(その割には、既にケトン体の所でアレレ?という感じですが…)
ともかく、今後の記事も楽しみです。
それにしても書籍の説明欄の記述ですが、これはとても納得できません(汗)
>「高糖質食」こそ健康を促進する食事法。
こう聞いてしまうと、随分と溝は深そうです。
Re: 少食から糖質の害がわかりそうなのに
コメント頂き有難うございます
西洋医学には明らかに限界があります。その事に気付いて東洋医学に傾倒される医師には考え方が柔軟な方が多い印象があるのですが、全員が全員そういうわけでもないようです。
やはり何が正しいか自分の頭で判断していく姿勢が大事だと思います。
Re: 自分で考える大切さ
コメント頂き有難うございます。
> 糖質制限の批判も、私にとっては勉強の材料になります。批判に対しての自分なりの正しい答えを考えるきっかけになりますから。
私もそう考えています。
糖質制限推進派医師の立場を取り続ける以上は、あらゆる糖質制限批判に一つ一つ真摯に向き合う必要があります。
ただ闇雲に批判を否定するのではなく、できるだけ納得の行く形で反論できなければいけないとも思っています。それに批判本の全てが間違っているとは限りません。
他人の意見を鵜呑みにするのではなく、何が正しくて何が間違っているのかを自分の頭で考えて判断していく作業は、自分の考えをまとめていくための格好のトレーニングになると思います。
Re: 何か意外ですね
コメント頂き有難うございます。
> 普段とは違う視点から見る糖質制限への指摘
はい、そういう内容がございました。次回はその事について触れたいと思います。
糖質制限批判本
Re: 糖質制限批判本
コメント頂き有難うございます。
どんな高明な医師でも、実体験なくして糖質制限を理解する事は困難だと思います。
ケトン体を測定してもらうなら糖質制限理解派の医師に相談するのが一番です。
日本糖質制限医療推進協会の提携医療期間への相談も御検討下さい。
http://www.toushitsuseigen.or.jp/#!med-institution/cpo5
管理人のみ閲覧できます
ケトン体
ナッツ、とくにmctオイルは効果抜群デス、ほとんど空腹感なくなります、過去かなりひどい糖尿だったと思われますのでやや暁現象がありますが新井圭介先生のブログではsglt2阻害薬の併用を勧められていますが早朝空腹時でhba1cは100〜120くらいなので薬はなにも服用していません、この四年くらい家族皆から変な目で見られてましたが最近は私の調子よさを見てこっそり軽い糖質制限しているみたいで特に息子はあれだけひどかったニキビと脂漏性皮膚炎がよくなり喜んでいます、私も糖質制限のおかげか、何年も悩まさレダ、花粉しょうが今年突然なくなりました、目ヤニも出なくなりそのた挙げればきりがないらいです、私の家族にこれだけ時間かかったのですから一緒に生活してない人に説明するのは本当に大変デス、先生の御苦労ご尽力察しもうしあげます、これからもよろしくお願いします、感謝。
あら~・・・
石原先生に伝えたい!
低血糖発作より 糖質過多の発作??
こっちのほうが 「もう ダメなんじゃないか・・」と感じるくらいつらいですよ。
ケトン体のおかげで
低血糖発作はありませんでした。
たがしゅう先生 続き楽しみにしております。
Re: あら~・・・
コメント頂き有難うございます。
> ケトン体のおかげで
> 低血糖発作はありませんでした。
私もケトン体のおかげで、8日間断食しても低血糖発作はありませんでした。
糖質代謝からケトン代謝に急ハンドルを切るからこその低血糖発作なのですよね。ここを押さえていないと断食はリスキーな治療になってしまうと思います。
一週間の断食を終えて
普段はケトン食と修正アトキンス食とMEC食をいったり来たり(2年くらい)してましたが、夏向けに体を絞るため一週間断食してみることにしました。(BMI 19前後です)
晩酌につまみ程度は摂取する弛い断食でしたが、体調は全く変わらず体重も殆ど変わらず、体脂肪率のみ5%程度落ちただけでした。
一日の摂取カロリーはアルコール込みで400いかなかったと思いますし糖質も5グラム以下に抑えてました。
生活の強度も特に変えず、10時間程度仕事をして軽い筋トレと優酸素運動を一、二時間して晩酌して6時間寝る、をなるべく崩さないようにしていました。
便秘もなく疲れもなく、いつでも簡単に断食出来るだろうなと自信がつきました。
例えばガンなど難病にかかったときすんなりと断食療法に取り組めるな、という妙な安心感を得ました。
また、普段の食事が半分断食みたいなものだったのかなとも思います。
Re: 一週間の断食を終えて
貴重な体験報告を頂き有難うございます。
> 夏向けに体を絞るため一週間断食してみることにしました。(BMI 19前後です)
> 体調は全く変わらず体重も殆ど変わらず、体脂肪率のみ5%程度落ちただけでした。
やせ型の方の断食では体重は直線上に下がっていくとは限らないと思っていましたが、やはりそういう方もおられるのですね。大変参考になります。
> 例えばガンなど難病にかかったときすんなりと断食療法に取り組めるな、という妙な安心感を得ました。
同感です。断食に慣れれば糖質制限以上に健康をコントロールできると私は考えています。
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