無自覚の害毒をも排除するために
2015/07/10 19:40:00 |
ふと思った事 |
コメント:12件
私は糖質制限を勉強していく事で、
その先のケトン食や絶食療法との連続性に興味を持つようになってきました。
糖質制限は常識に囚われさえしなければ万人に受け入れやすく、
実行可能性、継続性の高い優れた食事療法です。
しかし理解を深めていくにつれ、
それだけでは解決できない壁がある事を知る事になります。
前回は代謝を安定化させる事の重要性について触れましたが、
今回は絶食療法にしかなし得ない利点について考えてみたいと思います。 以前の記事でも絶食療法の利点については触れた事があるので振り返ってみますと、
絶食中はオートファジーと呼ばれる自己タンパク質消化システムが活性化されるので、
異常なタンパク質が蓄積する事がその病態の大きな部分を占めるとされるアルツハイマー病やパーキンソン病、ひいては筋萎縮性側索硬化症に有効なのではないかという自説を述べました。
しかしながら絶食療法の利点はそれだけではありません。
もう一つは、これ以上ない消化管の安静を図ることができる、という事です。何らかの原因で消化管の機能が破綻している人は一度休ませるべきだと私は考えています。
これは消化管に限った事ではなく、筋肉でも心臓でも脳でも同じです。疲れたら休むし休ませる。生物の基本原理といっても過言ではありません。
しかし、例えば風邪を引いて食欲がない時、世間一般ではどのような対応がとられるでしょうか。
「少しでも何かお腹に入れないと元気にならないよ。おかゆさんでもスープでもいいから食べなさい」
そう促される光景も珍しくないのではないでしょうか。
ある意味風邪で食欲がないのは身体の防御反応です。脂肪や骨に蓄えられたエネルギーや化学物質が適切に存在し、代謝が機能していれば、
ケトン体を十分に放出させる化学反応が起こり、炎症を抑える方向に全力で傾き、身体は事態の収束に努めます。
従ってお腹がすいていないのに無理に食べる必要はなく、水分だけ補充すれば十分だと私は考えています。
ただ逆に食欲があればそれは食べなさいというサインなのかと言えば、必ずしもそうではありません。そこには長年の食生活によって形成された依存性の問題があるからです。
糖質を中心とした中毒性のある物質の物質依存はその物質を摂らなければ逃れることができますが、
長年食べ続けてきた事で形成された習慣依存の部分はなかなか取り去る事はできません。
我々は「食べることは生きること」などと言われながら、食べることが大前提の世界で生きてきました。
しかし本質的には食べることとは「長生きするためにリスクを負いながらも他の生物の構成成分を自分の身体に取り込む事」だという考えに私は至っています。
だから私達はそれを踏まえて賢く食べて行かなければいけないし、時には食べないという選択肢があってもいいと私は思います。
社会が複雑化し、食を取り巻く環境は裕福になったように思えます。
古代は命がけの狩猟採集で入手するしかなかった獣肉は、今やお金さえ出せばノーリスクで簡単に手に入るようになりました。
しかしリスクという意味では、古代よりも不利になった側面もあります。
それは食品添加物の問題です。
現代の不自由ない食環境を維持するために、想像を絶する種類の食品添加物があらゆる食品に添加される世の中となってそれが常態となっています。
一般的な生活をしている限り、たとえ糖質制限であろうとケトン食であろうと、食品添加物の害から完全に逃れる事は困難です。
とすれば、私達は知らず知らずのうちに無数の害毒を受けているという事になります。しかも病院に行こうと検査しようと調べ難い把握困難な害毒です。
これに対しては現代社会を営む以上、なす術はないのでしょうか。
そこで重要になってくるのが最後に紹介したい絶食療法のもう一つのメリットです。
人間の身体には有害な物質を排除する働きがもともと備わっています。しかし害毒によっては排泄に時間がかかる場合もあります。
害毒を排泄するためにはできるだけ時間を稼ぎたいわけですが、それなのに次から次へと食べ物が入り新たな害毒が入り続ければ排泄処理が滞るのは目に見えています。
そこで間欠的に絶食を組み合わせれば、排泄のための十分な時間を稼ぐ事ができます。
従って、絶食療法は無自覚の、未知の物質を含めた害毒を取り入れないようにするための唯一の対抗手段だと私は考えています。
だから「できるだけ少なく食べて現状を維持できるのが一番良い」と私は考えています。
しかし理想はそうであっても言うは易し、行うは難しです。
私も何度かトライしていますが、絶食療法は糖質制限と比べて実践するのが難しく、先述の習慣依存もあいまってなかなか長くは続けられません。
ただ糖質制限で解決できない何らかのトラブルに直面した時に、
一つの選択肢として知っておいて損はないのではないかと私は思います。
それと同時に安心かつ安全に絶食ができる医療機関の必要性を感じる次第です。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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食欲がないときの食事
お忙しい中ブログの更新をありがとうございます。
今日の記事の中に、「お腹がすいていないのに無
理に食べる必要はなく、水分だけ補充すれば十分だと私は考えています。」とありましたが、これは、体調不良で休んでいる時の状態でしょうか?
私は夏になると一気に食欲がなくなり、特に夜はなかなか食べるのが大変です。どんどん痩せていってかなりのエネルギー不足を感じてしまうので、ここ数年は、アルコールの力を借りてなんとか夏の体重減少をくい止めています。
また、夏の食欲低下に限らず、体調不良で休んでいる時にも、水分だけですと、フラフラになってしまいます。
ゆっくり寝て身体を休められる状況ならそれでも良いかもしれませんが、仕事をしていて家事もあるのでなんとか少しでも食べようと頑張ってしまいます。
糖質制限を始めてからはこれらの状態もマシにはなりましたが、時々ゆるくて甘い糖質制限ですので、先生方ほど頑丈ではないですね^^;
今日は、頑張ってもなかなか夕食が入っていきませんでした。
休みで日頃の疲れが一気に出たのか、朝とお昼に普段は摂らない糖質をいつもの数倍摂ってしまったからなのか、急に暑くなったからなのか、不愉快な人からメールが来たからかなのか・・・。
色々考えて自分の身体と相談しながら、糖質は出来るだけ避けつつ、食事を楽しみたいと思います。
Re: 食欲がないときの食事
御質問頂き有難うございます。
> 今日の記事の中に、「お腹がすいていないのに無
> 理に食べる必要はなく、水分だけ補充すれば十分だと私は考えています。」とありましたが、これは、体調不良で休んでいる時の状態でしょうか?
基本的にやせていく過程で体調が悪くなっていくのはケトン体をうまく使えていない事の現れだと思います。私の診療経験では、やせ体質の人はケトン体をうまく使えない人が多い印象です。
かずさんの場合は、甘めの糖質制限もあるということなので、まずは糖質のない状態に身体を慣らしていく方が先決だと思います。その上でお腹がすかなければ、たとえ体調不良でなくとも、それは無理に食べなくてもよいという事を身体が教えてくれていると思います。
逆に言えば、糖質代謝に依存していると食欲のサインはしばしば嘘をつくので注意しなければなりません。
スーパー糖質制限
コメントへのお返事ありがとうございます。
そうですね。
時々甘い!これがやっぱり私にとって良くない状態かなと思います。
でも時々は甘くなりたい(>_<)そんな誘惑にも負けてしまい食べてしまうんですね!
今よりもスーパーを守りつつ、でもストレスがたまらない様に、楽しくて美味しくて糖質の少ない食事を心がけたいと思います(*^^*)
No title
本当に、ぜひとも先生の手で実現していただきたいです。
Re: No title
応援頂き有難うございます。頑張ります。
絶食とアルツハイマー
わたしは62歳自営業の男性です。両親が認知症のため、
真剣に考えておりますので、ベーターアミロイドを絶食で減らす為に
効果的な絶食期間、頻度などを教えて下さい。
たとえば、週に何回か、または月に何回など自己責任は承知しておりますので、よろしくお願い致します。
こんばんゎ☆彡
なにをとるかに
着目しているのに対し、
玄米菜食のような食事は
どうやって
わるいものを
いれないか
排出するかに
拘っている気がします☆彡
管理人のみ閲覧できます
Re: 絶食とアルツハイマー
御質問頂き有難うございます。
基本的に絶食療法は能動的に取り組むものです。
一方で認知症の人に絶食療法をさせるという発想はいくつかの点で危険です。
ひとつは自分で納得していない(認知機能が低下していて理解できない)人に絶食させるという事は虐待に近い倫理的な問題があります。もう一つは通常食からいきなり絶食療法に移行すると糖質代謝からの脱却が不十分なために低血糖症状をきたす危険があるという問題です。
しかも絶食療法をどのくらいの期間、頻度で行うかという事に関しては一定の見解はございません。おそらく脂肪のたくわえが十分にある人はある程度ゆとりのある取り組みができると思いますが、やせている人では短い断食を体調をみながら間欠的に行いながらフォローしていく必要があるなど、私自身まだまだ経験が足りず暗中模索の状況です。
認知症の人に対する食事療法をまず検討されるなら糖質制限から始められる事をおすすめします。ただし、もしもご両親が拒否されるようならそれも無理をされる事はないでしょう。
Re: こんばんゎ☆彡
コメント頂き有難うございます。
> 玄米菜食のような食事は
> どうやって
> わるいものを
> いれないか
> 排出するかに
> 拘っている
玄米菜食の過ちは、排出しているつもりで実は無意識に「糖質」という不要なものを取り込んでしまっていた、という所にあると思います。
再質問です。
私の質問の仕方がわるかったのですが、絶食するのは、62歳の私です。
両親が認知症なので、私もなりそうなので、少しでもリスク回避したいと思います。
効果的な絶食期間期間と頻度を教えてください。
Re: 再質問です。
すみません。勘違いしておりました。
しかし、それでも効果的な絶食期間と頻度に関して一概に言い切れません。
できれば体格や薬の使用状況、糖質制限の実践具合などいろいろお伺いして判断したいところです。
ただ一般的には3日以内の断食であれば比較的トラブル少なく実践できると思います。
注意点としては絶食後24~36時間の時期に現れるとされるアシドーシスです。急激にケトン体が上昇する事に体が適応しきれずに一時的に酸性に傾く事が理由とされています。アシドーシスになれば頭痛、嘔気、疲労感などの症状をきたしえますが、その時期を楽に乗り切れるかどうかはそれまでにどの程度糖質制限に慣れたているかによるところが大きいです。その時期を乗り越えるといわゆる好転反応が起こるとされていますが、それも必ずしも起こるとは限らない不確実性があります。
適切な頻度に関してはまだよくわかりません。
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