相手が誰でも原理はブレない
2015/05/21 08:00:00 |
医療ニュース |
コメント:4件
2015年2月にアメリカ政府が「食生活ガイドライン諮問委員会」で発表した
「コレステロールの摂取制限は必要ない」との声明を受けて、
日本でも厚生労働省の2015年度版『日本人の食事摂取基準』においてコレステロールの摂取基準の目安は削除される事になりました。
じゃあ今までの基準は何を元に決められていたんだ、との気持ちが沸き起こるかもしれませんが、
糖質制限実践者からすれば、当然そうなってしかるべきの指針と言えます。
ところが、これに対して日本動脈硬化学会が反論を述べています。
日本動脈硬化学会といえば、例のコレステロール論争において「コレステロールはスタチンを用いて下げるべき」との立場をとっている学会です。
そこで本日は、そのコメントについて考えてみましょう。
「脂質摂取の制限不要」に注意、動脈硬化学会
提供元:HealthDay News公開日:2015/05/21
(以下引用)
日本動脈硬化学会はこのほど、コレステロールの摂取制限に関する声明を発表し、健康成人での脂質制限は推奨しないが、高LDLコレステロール(LDL-C)血症患者ではやはり食事中のコレステロール摂取量に注意が必要だとの考えを示した。
最近、米国心臓病学会/米国心臓協会(ACC/AHA)や米農務省のガイドラインで、食事中のコレステロール摂取制限が消えたことに対し、日本の学会として見解を示した形。
声明では「制限不要」論について、健康成人を対象とする限り賛同するとしながら、動脈硬化を予防する観点から、高LDL-C血症患者は飽和脂肪酸やコレステロール摂取量に注意が必要と強調。併せて血圧や血糖値のコントロール、禁煙、運動など包括的な生活習慣の改善を進めることが重要だとしている。
(引用、ここまで)
「信じる、信じない」の二軸で物事を考えてしまっていると、
こうした権威の言うことはすっかり信じられてしまうのでしょうけれど、
一見正しい事を言っているようでこのコメントには大きな矛盾が存在しています。
こうした言葉に惑わされないように、自分の頭で考えてみましょう。
動脈硬化学会は「健康成人では摂取制限不要に賛同するが、高LDL-C患者は動脈硬化によくないのでやっぱりコレステロール摂取は制限すべき」と言っています。
でも、もしコレステロール摂取自体がよくないのであれば、高LDL-C血症だろうと、健康だろうと、指導は一律に行うべきであって、
健康成人だけ制限を許すというのはおかしな話です。しかも「予防」を念頭に掲げているわけですから、むしろ健康成人にこそしっかりと指導を行き渡らせなければならないのではないでしょうか。
今回の声明は「コレステロールを食べたらコレステロールが上がる」という考え自体が抜本的に間違っている事を示すものだという事を動脈硬化学会は理解できていないのです。あるいは理解したくないのかもしれません。
なぜコレステロールを食べてもコレステロールが上がらないか、という理屈については何も今はじめて分かった事ではありません。
外から食べる外因性のコレステロールは概ね2割、身体が作る内因性のコレステロールが8割となっているバランスを、
外からのコレステロールが増えれば、身体は肝臓でのコレステロール合成を自動的に6-7割に抑えて調整してくれているからです。
多くの臨床現場の医師は、この古くから分かっていた基礎的な事実を軽視し、「コレステロールを食べたらおそらくコレステロールは増えるであろう」というイメージ先行の下で、
長らく「コレステロールを控えなさい」と言い続けてきたのだと思います。
ただし、ここへ糖質などにより血糖値が上昇し、インスリンの働きを介せば脂質代謝が蓄積の方向に向いてしまうので自動調整が効かなくなります。
従って、この本質を押さえてさえいれば、
健康だろうと、高LDL-C血症であろうと、
糖質を控えていれば誰であっても「コレステロール摂取制限不要」とすればいい事がわかります。
そもそも健康成人と高LDL-C血症患者を分けるという発想自体が間違っていると私は思います。
なぜならば慢性疾患は、ある日突然その病気になるというものではなく、
日々連続的に変化していっている身体の状態を、医療が恣意的に線引きして「あなたは病気です」「あなたは病気ではありません」と言っているに過ぎないからです。
そうなると、はたしていつからが病気なのでしょうか。健診で言われた時でしょうか?
健康成人がコレステロール摂取制限が不要であるなら、健診で見つかっていなければたとえLDL-Cが高くともコレステロールは自由に摂っていいという、そういう変な話になりませんか。
そんな勝手に決められた「病気」という名の枠組みの中で、
今まで行っていた健康法を、突然変えなさいと言われる事には納得がいきません。
誰にでも当てはまる、健康に近づけるための「共通原理」というものがあるはずです。
それが「糖質制限」であり、「コレステロール制限不要」だと私は考えています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
全文読みましたがひどい悪文ですねこれは。要約すると以前からの主張は間違ってない、ただ少し基準値を緩めてもいいぞ、慎重にな、そんな感じでしょうか。
まあだいたいこの手のわけわからん長文を頭のいい人たちが発表するときというのは、責任逃れと相場が決まってます。コレステロールを下げることに意味はなかった、下げる薬は健康保険と家計にダメージを与え、国内総生産を引き下げたうえ深刻な副作用に悩む人々生み出した、この責任を直視して欲しいですね。
あと数年もすれば糖尿病でも同じことが起きるでしょうね、楽しみに待ちたいです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
「自分たちの治療が間違っていたのかもしれない」というような自省を決してしないのが権威の特徴だと思います。
その間違った論理のままつじつまを合わせようとするから、どんどん矛盾が生まれて行くことになります。
コレステロールが悪者でなければ困るのでしょう。
100年前にロシアの医者が、ウサギに大量に卵を食べさせてLDLの値が上がったから、コレステロールが多く含まれる食品が悪者にされたんですよね。
自分で卵を食べるか知人に卵を食べさせるかして血液検査すれば、卵を食べてもLDLの値が上がらないことは確かめられたはずなのに。
きっと、わかっていたんですよ。人間が卵をたくさん食べてもLDLの値が上がらないことを。
そもそも、いまだに100年前の動物実験の結果を信じつづけることもどうかと思うのですが。
Re: コレステロールが悪者でなければ困るのでしょう。
コメント頂き有難うございます。
LDLにしても、HDLにしても血管炎症の修復に寄与しています。
LDLの上昇の背景には、食事性の要因だけではなく、炎症を何とか修復しようと動員される内因性LDL上昇の要因もあるわけですが、
「コレステロールを食べるとコレステロールが上がる」という誤解が頭の中にあると、たとえ内因性のLDL上昇であっても、「コレステロールを食べたせいだ」と短絡的に決めつけてしまう傾向になると思います。
世間的に頭が良いとされている医師(実際はさておき)でさえ、100年もの間誰もこのトリックに気づかなかったのです。大事なことは必ずしも頭の良し悪しではないということがうかがえますね。
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