製薬会社の息がかかっていない薬
2015/02/25 00:01:00 |
漢方のこと |
コメント:2件
今医療の中で用いられている西洋薬は、
厳格にルールが定められた臨床試験が行われ、その有効性が認められたものが世に出ています。
簡単にいうと同じような年代や性別の集団を、薬を飲んだ群とその薬に似せたニセの薬(プラセボ)の群とにランダムに分けて、
薬を飲んだ群で何らかの差があったという事が証明されれば、この薬は有効だという事になるわけです。
という事は病院で処方される薬は基本的に信頼できるものだと思われるかもしれません。
しかしながらノバルティスファーマ社のディオバン論文捏造事件で問題になったように、
今やその臨床試験の信ぴょう性そのものが揺らいでいる状況です。
そこには薬を売りたい製薬会社の思惑が複雑に絡んでいます。 製薬会社は自社の薬をより多くするために、処方権限を持つ医師へ様々な方法でアピールするのですが、
仮にもし今ここに「この薬を飲めば今ある症状が楽になる」というような薬があったとして、
実際にそれを飲めば症状が取れるというものであったなら、そんなにアピールしなくとも口コミでもどんどん広まっていきそうなものです。
しかし、慢性疾患の予防に用いる薬の場合はそうは行きません。
降圧剤やスタチン、血糖降下剤などは、はたして効いているのか効いていないのかちょっとやそっと飲んだだけではまったく実感できず、何もせず口コミで広がる事は期待しにくいです。
そんな時に一番医師へのインパクトになるのが論文情報、いわゆる「エビデンス」です。
多くの医師の頭の中には、エビデンスとなる論文であればきちんとした審査を通った情報であり信頼できる、という事があるものですから、
製薬会社にしてみれば、いかに納得させられるエビデンスを医師に提供できるかという事が鍵になると思います。
しかし「はたしてその薬は使っていてよいものなのかどうか」を考えるために何より重要なのは、
現場における観察力、患者さんの変化を細かく捉える事に尽きると思います。
いかに製薬会社が質のよいエビデンスを持ってきたところで、
現場にいる患者さんにそれが当てはまるとは限らない、それを肝に銘じるべきだと思います。
それに西洋薬の開発というのは基礎実験の結果から発想される事が多いです。
例えば、アルツハイマー型認知症の人では、アセチルコリンという物質が下がるという事が判明したので、
脳内でアセチルコリンを高める物質を作ろう、といった具合ですね。
そういった発想でできた様々な薬候補を先述の臨床試験で一つ一つ有効性を確認していき、
その臨床試験をくぐり抜けた選りすぐりの薬が世に出回るわけですが、
ここに薬を売りたい製薬会社のよからぬ思惑が入り込む余地ができます。
すなわち、ちょっとの有効性を大きく見せる余地、データを拡大解釈する余地、あるいはデータを捏造する余地などの事です。
本当にそうしているかどうかは別として、たいていの西洋薬にはそうした製薬会社の思惑が入りうる危ういものだということを、
頭の隅で認識しておく必要があると思います。
ただまぁ、実際に使っていて有効な薬もあるにはあるので、薬は全てダメだと疑心暗鬼になっていても精神衛生上あまりよくありません。
一方で私が好んでも用いる漢方薬の場合は成り立ちがそれとは少し違います。
数千年も前から存在する漢方薬は、その昔には当然ながら製薬会社もエビデンスも存在していませんでした。
はじめはどの生薬を組み合わせれば効くかという事もわからず、生薬の組み合わせ方も無数に存在していたことでしょう。
そんな中漢方はどうやって選りすぐられていったのかというと、徹底的な実践主義です。
つまり実際に飲んでみてどうなるかという事でその有効性が判断されてきました。
そこには製薬会社の黒い思惑なんかまったくなく、純粋に「効くのか、効かないのか」というシンプルな問いかけを、
様々な人の手によってひたすら数千年間繰り返されてきたわけです。そしてその経験は古書によって脈々と受け継がれてきたわけです。
漢方薬には新薬が生まれる事はまずありませんが、今使える漢方は数千年単位で実証され尽くしたエリート漢方薬ばかりです。
その漢方薬を現代の製薬会社が取り扱ってはいますが、漢方薬そのものには操作は加えられる事はありません。
成り立ちを考えれば下手に製薬会社が売ろうとしている新薬よりも、
漢方薬の方がよほど信頼できるものではないかと私は思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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示唆に富むコメントをどうも有難うございます。心に留めさせて頂きます。
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