薬を飲み続けることの大変さ
2015/02/20 00:01:00 |
医療ニュース |
コメント:8件
医師として「患者の立場」を知るというのは、
非常に貴重かつ重要な経験です。
私はかつて患者として抗うつ薬を飲んでいた経験がありますが、
はたして効いているのかどうかがわからず、あまり実感が持てないような不安の日々でした。
そのせいか薬を飲み忘れてしまう事も時々ありました。
その時に思ったのですが、効果が実感できない薬を飲み続けるにはモチベーションがなかなか続かないのです。
そんな中、次のような医療ニュースが目に入ってきました。 成人の3人の1人が「毎日薬を飲むのは嫌だ」と回答
提供元:HealthDay News公開日:2015/02/19
(以下、引用)
成人の3人に1人は、心疾患を予防するために1日1錠の薬を飲むよりも、寿命が短くなるほうを選ぶという結果が、新たなインターネットの調査で示された。
また約5人に1人は、毎日の服薬を避けるためなら1,000ドル以上支払ってもよいと考えていることもわかった。
「生涯薬を飲み続けることを避けるためなら、大きな死亡リスクも受け入れるという人が少なからず存在していた」と、
研究の筆頭著者である米カリフォルニア大学サンフランシスコ校の研修医Robert Hutchins氏は述べている。
しかし、一部の回答者には薬に対する強い反発がみられた一方、多くの人は不便でも薬の便益を受け入れることもわかった。
62%は死亡リスクを負うよりも毎日薬を飲むほうを選ぶと回答した。
また、70%が毎日の服薬を避けるために1週間たりとも寿命を失いたくはないと回答し、43%が金を支払いたくもないと回答した。
Hutchins氏は、死亡リスクを負ったり、金を支払ったりするよりも薬を飲むことを選ぶ人が多いことに驚いたと述べている。
「Circulation: Cardiovascular Quality and Outcomes」に2月3日掲載された今回の調査では、
インターネットを通じて1,000人を対象に、薬を毎日飲むことを避けるために寿命をどのくらい失ってもよいかを、仮定の話として尋ねた。
さらに、服薬を避けるために支払ってもよい金額と、死亡リスクを受け入れるかどうかを尋ねた。
Hutchins氏らは、このような服薬の「利用価値(utility value)」を評価することにより、一部の人が医師からの服薬の指示に従わない理由を解明できるのではないかと考えた。
同氏らによるこれまでの研究では、服薬を嫌う人は薬の味、におい、大きさなどの物理的側面を好まないことが最も多く、薬を入手する手間を嫌がる人もいることがわかっている。
米アラバマ大学バーミンガム校公衆衛生学部のDonna Arnett氏は、命を救う薬を飲もうとしない患者が一定数いることに悩む医師は多いと述べる一方、
今回の回答者の平均年齢は50歳で、健康について真剣に考え始める時期である点を指摘している。また、回答者の80%以上がすでに毎日1種類以上の薬を飲んでいた。
次の研究では、「どんなに有効でも薬を飲むつもりはない」という少数派の人たちについて深く掘り下げ、そのように考える理由を明らかにしたいとHutchins氏は述べている。今回の研究は、米国立衛生研究所の支援により実施された。
(引用、ここまで)
この調査は薬を飲めば死亡リスクが下がるというのが前提の話でしょうが、
そのような理想的な薬はなかなかないのが実情です。
もしそんな理想的な薬があったとしても、3分の1の人が薬を飲みたくないというわけです。
薬を飲み続けるという行為がいかに続けるのが難しい行為なのか、ということを、
医師はきちんと把握しておくべきだと私は思います。
でも実際には医師の言われた通りに薬を飲み続けるという人の方が多数派だと思います。
その中には薬を飲んでいれば病気が予防できると思い込んでいる人や、
「薬を飲まないと脳梗塞や心筋梗塞になる」などと医師から言われ続け、半ば脅迫的に飲み続けている人もいることでしょう。
あるいはベンゾジアゼピン系薬のように、薬そのものの中毒性によって、続けているというよりもやめられなくなっている人もおそらく多いと思います。
こうした理由で薬を飲み続けるというのは、いずれにしても健全な理由ではないと思います。
特に効果が実感できない予防薬の類は曲者だと私は思います。
薬は基本的に飲んで効果があると実感できる時に飲むべきで、
効果がなくなれば飲むのを止めるというように必要最小限にすべきだというのが私の考え方です。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
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治療ガイドラインが多剤併用を奨励
日本でも糖尿病学会、高血圧学会はいずれも多剤併用を推奨していますね。学会の治療ガイドラインが多剤併用をスタンダードにしているのです。高血圧や糖尿病の専門医の先生方は降圧剤や経口血糖降下剤を4~5種類ほど後期高齢者に処方する事に何の抵抗もありません。それがスタンダードだと信じて疑わないからです。精神科医が抗精神薬や抗うつ薬を3~4種併用するのと全く同じです。
最近エビデンス至上主義のアメリカの糖尿病学会がコレステロール値に関わらず全症例にスタチンを飲ませろ!というありがたい提言を出しました。糖尿病で末梢神経や筋肉が悪くなるのに、なぜそれを助長するような薬を飲ませろと言うのか?理解に苦しみます。専門医=学会=製薬会社利権という構図が見えます。
スタチンでどれだけ動脈硬化は予防できるのでしょうか?長期に飲み続けて大丈夫なのでしょうか?ときどき生涯スタチンを飲み続けて筋肉がやせて衰弱して栄養失調になって免疫力が低下して肺炎起こしている高齢者を少なからずみかけますが。スタチンを販売している製薬会社は非常に多いので、学会が製薬会社から圧力をかけられているのではないか?アメリカは製薬会社の権力が日本とは比べ物にならないほど強いと聞きます。スタチンが心血管疾患を予防するという効果はどれほどのものなのか?と正直思いますね。医療の基本は食事と運動など生活習慣の改善がまず第一のはず。薬をホイホイと処方して見た目の数値を正常化したら患者がぬか喜びするという短絡的なものでは決してないと思います。
一時は裁判も考えましたが、、、
いまから10年前、当時67歳の父は脳梗塞を発症、14日の入院の後、プレタールを処方され漫然と内服し自宅療養をしておりました。
その後、熱発し、再入院、尿路感染の診断。その後随分抗生剤を変えたが解熱しないと担当医は逆ギレ、その数時間後には播種性血管内凝固症候群からの肺炎で死亡。脳梗塞発症からわずか3ヶ月半の出来事でした。
当時、私の不勉強もあり、父には可哀想な思いをさせました。一時は何が起きたのか知りたくて、色々と調べましたが、最終的には“病気にならない工夫”を怠った父にも原因があったのだと母とも変な納得をし、現在は病院にかからないように努めています。
Re: 治療ガイドラインが多剤併用を奨励
コメント頂き有難うございます。御指摘の通りだと思います。
薬絶対主義がある限り、多剤内服の問題はいつまでたっても「問題だとは思うけど、ある程度仕方のないこと」という認識止まりです。
食事療法の重要性がわかれば、この問題の本質に気がつく事ができると思います。
Re: 一時は裁判も考えましたが、、、
コメント頂き有難うございます。
またお父様の件、お察し申し上げます。
過去を悔いるより、今をどう生きるかが大事です。
負の経験も必ず活きる機会があると思います。
是非とも今後につなげて頂きたいと願うばかりです。
ご返事ありがとうございます。
ありがとうございます。先生の様に薬の怖さについて言及してくれる方がもっと増え、いつかは最低限の投薬が標準治療になることを切望いたします。
花粉症
患者の目線に立った先生のお考えに共感するものが多く、毎日楽しみに先生のブログを楽しみにしています。 ありがとうございます。
糖質制限4年生です。
花粉症は20年選手ですが、以前は花粉症の薬(エバステル)を飲んでも眠くならず、毎年この時期を乗り越えきました。
ところが、糖質制限を初めて2年ぐらいから、エバステルを飲むと眠くてしかたなくなりました。 それで、大人の量の半分を飲むようにしましたが、やはり眠くなります。 車の運転も危ないので漢方に変えましたが、糖質制限を実践することにより、副作用が出やすくなることはあるのでしょうか?
Re: 花粉症
コメント頂き有難うございます。
> 花粉症は20年選手ですが、以前は花粉症の薬(エバステル)を飲んでも眠くならず、毎年この時期を乗り越えきました。
> ところが、糖質制限を初めて2年ぐらいから、エバステルを飲むと眠くてしかたなくなりました。 それで、大人の量の半分を飲むようにしましたが、やはり眠くなります。 車の運転も危ないので漢方に変えましたが、糖質制限を実践することにより、副作用が出やすくなることはあるのでしょうか?
興味深いです。
ただ糖質制限して酒に強くなる人、弱くなる人とがいるように一律に言える話ではないのかもしれませんね。
あくまで推測に過ぎませんが、糖質制限で花粉症の本態が治まっているため、
その状況で抗アレルギー薬を使うと効果を発揮すべき対象がなく、残るは副作用として働きかけるしかなくなってしまう、とそんな感じなのかもしれません。
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