非必須栄養素も重要

2015/02/15 00:01:00 | おすすめ本 | コメント:0件

栄養学的に必須脂肪酸と必須アミノ酸はあるけれど

必須糖質はない。だから糖質をする制限するのは妥当である
」という考え方があります。

そもそも必須と呼ばれる所以は、「人体で合成する事ができないから」ということですが、

ともすれば、非必須栄養素はさほど重要ではないものと捉えられかねませんが、

あくまでも「食物から摂取する事が必須」という意味であり、「非必須栄養素が重要ではない」という意味ではありません

そのことは、例えば非必須アミノ酸であるグルタミン酸の事を考えてみてもよくわかります。



アミノ酸と生活習慣病―最新アミノグラムで探る「いのち」の科学 単行本 – 2010/2/1
杤久保 修 (著), 安東 敏彦 (著)
上記の本によりますと、必須アミノ酸は非必須アミノ酸よりも、

代謝のステップが長く、合成コストが高いものが多いそうです。

一方で、非必須アミノ酸であるグルタミン酸、アスパラギン酸やグリシンなどは代謝負荷(利用率)が大きく、特定の時期や条件下で迅速に必要とされる性質があります。

そのため自身で合成する能力を欠かすことができません。

太古の昔から絶食が常で生きてきた人類にとって、食物がなくても合成する事ができるということは、

裏を返せば、非常に重要なアミノ酸だとみることもできます。

糖質制限においても常に履き違えてはいけない事として、

糖質は必須ではないけど、グルコースは必須だという事実がありますが、

自分で合成する能力を持っているという事は、それだけ人体にとって重要だということの裏返しではないかと私は思うわけです。


さて、さらにグルタミン酸について深く掘り下げてみてみます。

グルタミン酸はアミノ酸代謝・窒素代謝の中心的な役割を果たしています。

例えば、代表的な特性としてグルタミン酸は、毒性がある事で知られるアンモニアと合わさってグルタミンシンテターゼの働きによって、

グルタミンに変換され、このグルタミンは腸管や免疫細胞の主たるエネルギー源として利用されます。

毒素を無毒化して、なおかつエネルギー源として利用するという非常によくできたシステムの根幹を担っている事がわかると思います。

また脳においてもアンモニア解毒の主要な基質となるだけでなく、

興奮性の神経伝達物質としても機能していますし、

GAD(グルタミン酸デヒドロゲナーゼ)の働きによって、抑制性の神経伝達物質であるGABAに生まれ変わります。

さらにはグリシン、シスタチンという別のアミノ酸と合わさる事によって、

生体内過酸化物を除去する働きを持つグルタチオンを合成することもできます。

グルタチオンは脳においてはその働きの上で酸化ストレスの発生が避けられないドーパミン産生神経の酸化ストレスを、

速やかに処理するという意味で重要な役割を果たしています。

加えてグルタミン酸と水酸化ナトリウムを作用させることで、

うまみ成分として知られるグルタミン酸ナトリウムに変化するという事も興味深いです。


このように非必須栄養素と呼ばれるものの中にも、

生命を維持する上で非常に重要な役割を果たしている栄養素も存在しているという事です。

必須だから重要、非必須であれば重要ではないという先入観は捨て

フラットに人体のミクロコスモスを俯瞰し観察する視点が重要ではないかと考えます。


たがしゅう
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