ネガティブな感情も有意義
2015/02/10 00:01:00 |
お勉強 |
コメント:10件
以前、「飽きる」というネガティブなイメージのある行動が、
生きていくために必要な意味のあるものであるという見解について述べましたが、
今日は「妬み」について取り上げてみたいと思います。
Clinical Neuroscience(クリニカルニューロサイエンス) 2015年2月号
『社会脳-Social brain』
p166-168
高橋英彦 「他人の不幸は蜜の味-妬みと他人の不幸を喜ぶ気持ちの脳内メカニズム-」
妬みとは「他人が自分よりも優れたものや特性を有している場合に、苦痛、劣等感、敵対心を伴う感情」の事です。
例えば、自分と同じような立場の人が先に成功したり、自分が好意を寄せている人が別の誰かと結ばれたりするときにはうらやましいとなると思いますが、
そのように他者が自分よりも優位性を持っている時に「妬み」の感情が生まれる可能性があります。 ただここで「優位性」があるだけでは「妬み」を生むのに必要十分ではありません。
その対象となる他者と自分との関連性の強さが重要となってくるのです。
例えば、もし自分が車が大好きであった場合、
友人が高級外車を乗り回していれば「妬み」を感じるかもしれませんが、
車に全く興味がなければ、そんな友人を全く妬ましく思わないことでしょう。
このように妬みとはやや複雑な感情である事がわかります。
さらに興味深いことに、妬んでいる対象の相手に不幸が起こった場合に、
その妬みの感情が「快感」に変わるという現象が起こります。いわゆる「他人の不幸は蜜の味」というやつです。
他人の不幸によって、それまで存在していた優位性が減少するために、妬みが軽減し快感が得られるんではないかと考えられています。
そして上記の特集では、実験によってその快感が得られる時に、実際に脳の腹側線条体という報酬系に関与する部位の活性が高まっている事が示されていました。
言い方を変えれば、ドーパミンが刺激されているという事ですね。
ドーパミンと報酬系と言えば、当ブログでもしばしば扱う中毒の構造を形成する本質的な部分です。
報酬を期待したり、報酬を得たりする時にドーパミンが活性化されるという事はわかっていましたが、
物質的な喜びだけではなく、人と人との関わりで生じる社会的な喜びによっても同じ構造が刺激されるというところが面白いと思います。
ところで、一般的に妬みは有害な感情とみなされていると思います。
それは妬むことによって人の不幸を望んだり、実際に人が不幸になるような行動をとったりと、
非生産的な行動に結びつくためとも考えられます。
しかしながら、もし妬みが本当に害ばかりで不必要な感情であったならば、
長い進化の歴史の中で自然淘汰されていてもおかしくないのではないでしょうか。
という事は「妬み」には何らかの意味があるのではないかという考える事もできます。
さて、妬みはどういう好意的な意味が存在するでしょうか。
たとえ、相手が優れたものを有していても、
それが自分とあまり関連していなければ強い妬みは抱きません。
狭い視野でその相手と自分しかいないような感じで、しかも一面的に比較して考えてしまうのではなく、
もっと広い視野で様々な観点から相手を捉える事ができれば、
妬んでいた相手にはなく、自分にはあるという自分の良さを見出す事ができるかもしれません。
さらには自分の新しい可能性を模索することにつながる可能性もあります。
妬みの感情が適度に抑えられていれば、そうした建設的な行動につながるのではないかと、
「妬み」とは本来そういう事のためにあるのではないかと思うわけです。
自分のことで考えれば、例えば私は芸能人の「福山雅治」さんのかっこよさを、
うらやましいとは思いますが、妬ましいとは思いません。
福山さんのルックスは明らかに自分より優位に立っていますが、あまり関連性がないからでしょうか。
いわゆる強い「妬み」、ネガティブなところには結びつかないのです。
それどころか、私は福山さんにルックスも歌も演技力も人気も劣るけれど、医学のことに関しては私の方が詳しいと思います(笑)。
人それぞれに個性があって、みんなに違いがある、それって素晴らしいことじゃないでしょうか。
さらに私は福山さんのようなかっこいい大人になろうと、後を追いかけようと新しい可能性を模索しています。
その事は私が糖質制限をこれからもずっと続ける大きなモチベーションの一つになっています。
軽い「妬み」は、強い「妬み」と違い時として、
人生を活気づける薬になってくれるのではないかという気が致します。
こうした感情を上手く扱って、
幸せに生きていきたいですね。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
私は糖質制限で性格が穏やかになりました。自分で言うのも変ですが攻撃的な性格がずいぶん温和になった気がします。それと共に「他人の不幸は蜜の味」という嫌な感覚を持つ事が無くなってきました。
ヒトの気持ちを感じて、ヒトの気持ちを大切に動く、という事の大切さに気づきました。こんな性格になると当然ヒトを妬む気持ちも無くなってきます。
糖質制限してから半年以上が経過し、得たモノは多いです。
たがしゅう先生の影響で私も最近ブログをはじめました。
Re: No title
>たがしゅう先生の影響で私も最近ブログをはじめました。
よろしければブログURLを記載して頂ければ訪問させて頂きます。宜しくお願い致します。
No title
たがしゅう先生
上記がブログアドレスです。初心者ゆえ不手際もあります
どうぞよろしくお願いします
Re: No title
ブログ見ました。素晴らしいですね。
それぞれの立場でできる事があると思います。私にはできない情報発信を是非とも宜しくお願いします。
No title
http://www.mededge.jp/a/psyc/8402
考え方や受け止め方次第で、大きな可能性があるのだと思わされますねえ・・・
その分、上手くコントロールするのも難しいのでしょうが、糖質制限はそれをサポートする強い味方ですね。
ナンバーワンにならなくてもいい(以下略)という歌詞はあまり好きではありませんが、複雑怪奇で謎多き人間それぞれの個性があるのだから、確かにそれを活かさないのは損ですね。
糖質セイゲニストには、上手く活かしてる人がやたら多い気がします(笑)
Re: No title
情報を頂き有難うございます。
心と身体は文字通りつながっています。
心の有り様をいかに持っていくかという事で、身体の健康に大きく影響してくると思います。その辺も病気の治療を追求する上で重要な問題ですね。
芸能ネタでも許してください
福山さん、46歳になられました。糖質制限の実践でこのように若々しくいられるのですよ、という広告塔(でも、”制限する”をぜひ広告してほしいという業界は、ありません。残念ですが)
数年前、おつきあいしている女優さんの姿を福山さんの自宅前で写真誌に撮られました。福山さんは、即引っ越しをし、その女優さんのことも「何でもありません」
その女優さんは今でも独身です。
2人の本当のことはわかりませんが、これからの未来を思い描こうとしている時にこんなでは、うらやましくないでしょう。
福山ファンは、そういうたいへんな環境にありながらも絶対に不平不満を見せない姿を分かって、ファンであるのです。
福山さんは福山さんで、きっと大変だし、福山さんの社会的使命があり、とても努力をされ、そこから得る幸せもあるのだと思います。それはきっと、たがしゅう先生だって同じなのだと思います。(誰だってそうかも)
Re: 芸能ネタでも許してください
コメント頂き有難うございます。
> 福山さんは福山さんで、きっと大変だし、福山さんの社会的使命があり、とても努力をされ、そこから得る幸せもあるのだと思います。それはきっと、たがしゅう先生だって同じなのだと思います。(誰だってそうかも)
確かに、各人それぞれの悩みというものがあるでしょうね。
私も自分の悩みと向き合い、自分なりの幸せを探していきたいと思います。
福山さん、ご結婚
Re: 福山さん、ご結婚
コメント頂き有難うございます。
ついにこの時が来たか、という感じでしたね。でもとてもお似合いの二人のように思えました。
是非とも幸せになって頂きたいと願います。
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