ニュースを見る、そして「考える」
2015/01/25 00:01:00 |
医療ニュース |
コメント:4件
以前、看護師さんの交代勤務制に関して記事にした時に、
交代勤務制のストレスが腰痛に関わっている可能性を指摘しました。
不規則な勤務によって、睡眠の概日リズムが崩されてしまいますし、
落ち浮いて過ごしたい夜の人が少ない時間帯に、何かトラブルが起ころうものならストレスも大きいことでしょう。
そんな風に考えていたところ、いつもおなじみケアネットニュースより、
次のような内容のニュースが目に入ってきました。
(以下、引用)
【交替制の夜勤で心疾患や肺がんのリスクが増大】
提供元:HealthDay News 公開日:2015/01/22
交替制での夜間勤務により、健康が脅かされる可能性が新たな研究で示唆された。
この研究では、昼間や夕刻の勤務に加え、少なくとも月3回の夜間勤務があることを交替制夜勤の定義としている。
米ハーバード大学医学部准教授のEva Schernhammer氏が率いるチームによる今回の研究では、米国全域で約7万5,000人の看護師のデータを22年間追跡した。
その結果、因果関係は明らかにできなかったものの、5年以上交替制夜勤で働いていた人は、原因を問わない死亡リスクが11%高かった。
6~14年間にわたり交替制夜勤で働いていた人は、心疾患による死亡リスクが19%高く、15年以上働いていた人は23%高いこともわかった。
さらに、15年以上交替制夜勤で働いていた人は肺がんで死亡するリスクも25%高かったという。この知見は、「American Journal of Preventive Medicine」3月号に掲載された。
研究著者らによると、以前の研究でも夜勤が心血管疾患やがんのリスク増大に関連することが明らかにされているという。
「今回の結果は、交替制夜勤が健康や寿命に有害である可能性を示す、新たな根拠として加えられるものである」と、米ブリガム・アンド・ウイメンズ病院(ボストン)の疫学者でもあるSchernhammer氏は述べている。
個人の性質と交替制夜勤との相互作用により健康に害が及ぶメカニズムを知るためには、さらに研究を重ねる必要があると同氏は付け加えている。
(引用、ここまで)
看護師さんをはじめ交代勤務制で働いている方は、
このニュースを見て嫌な印象を受けるのではないかと思いますが、
私はこういうニュースを見た時にも、すぐに額面通りに受け取らずに
「なぜそうなのか」という事を「自分の頭で考える」という事が大事だと思います。
では、なぜ交代勤務制が健康を脅かす可能性があるのでしょうか。
ヒトは、日中に活動し、夜間に休むという生体リズムを基本としています。
日中に活動する事で日光を浴び、ビタミンDの合成を促進するというメリットもありますし、
日光を浴びる事はメラトニンという物質を介して、概日リズム(体内時計)の調節にも役立っています。
夜勤をするという事は、まずそのメリットが受けにくくなるというデメリットがあります。
実際、看護師さんから話を聞いてみると「不眠に悩まされている」と訴える方は多いです。
ただ一方でヒトの体は日中であろうと夜間であろうと、活動する事を通じて生じた疲労を回復させるシステムがあります。それが「睡眠」です。
夜勤を行っている人であっても、質のよい睡眠ができている場合は、きちんと疲労を処理する事ができます。
しかし、夜勤をしている人で健康が脅かされているというデータが出ているという事は、
現実には質のよい睡眠が得られていない人が大半を占めているという事を物語っているのではないかと思います。
だから私はこのニュースを見て思うことは、「交代勤務だと健康ではなくなるのか」と嘆く事ではなく、
「いかにして睡眠の質を高めるか」という事について考える事だと思います。
近年の研究で、睡眠中にはグリンパティック系と呼ばれる髄液の流れを介した自浄システムが働いている事もわかってきています。
質の良い睡眠を得る事は、グリンパティック系を活性化させ、
過酷な勤務環境であっても健やかな状態を維持できる基盤を作ってくれるものだと考えます。
そして、糖質制限を実行する事で睡眠の質が改善する事は、多くの実践者の間で経験されています。
糖質制限をしていれば短い時間でも疲れがとれるし、時間のあるときはじっくりと身体を休める事もできます。
だから糖質制限実践者はこうした情報に案ずることはないと私は思います。
たがしゅう
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
劇的向上!
毎日楽しく拝見させて頂いております。
食後の眠気は、血糖値下降時に起こるのでしょうか?→インスリン分解酵素の働きよるものなんですか?
私は、インスリンが眠気を誘発すると思ってました。低脳の私でも理解できるよう教えて下さい。
糖質制限すると、本当に夜に熟睡できますよね。
現在私は、減量目的というより、良好な睡眠の質の維持の為に糖質制限を継続してると言っても過言ではないです。
これが証拠に毎シーズン2~3回引いてた風邪も今年はまだ引いてません。
主治医には、あなたは扁桃腺が大きいから風邪ひきやすいと言われてたのですが…
今は、目覚まし時計さえ使わず、定時にスッキリ起床。
こんなに激変するとは、未だに信じられません!
何せ以前の病的肥満だった私は、睡眠時無呼吸症候群でCPAPや睡眠薬、果ては寝具にまでお金を使ってました。(ちなみに今はニトリの一番安い敷布団です(笑))
以前の事を考えると、糖質制限で食費が多少増えても問題ないですね。
Re: 劇的向上!
コメント頂き有難うございます。
> 食後の眠気は、血糖値下降時に起こるのでしょうか?→インスリン分解酵素の働きよるものなんですか?
実は食後の眠気のメカニズムはまだはっきりとした事はわかっていません。
ただ糖質制限により食後の眠気がリアルタイムに改善する事より、血糖乱高下が何らかの形で関わっている事が推測されています。
一つ仮説として言われているのは、オレキシンという神経ペプチドを介したメカニズムです。
つまり「糖質摂取→ブドウ糖上昇→オレキシン低下→眠気」という流れであり、
糖質制限で食後の眠気が改善するのは、上記の流れがなくなるからと言われています。
しかしそれだと糖質制限をしていればいつまででも眠たくないという事になってしまいますが、実際にはそうなっていないので、まだ把握できていない別の眠気のメカニズムが隠されていると思います。
No title
交代制勤務の人間としておっしゃることはよくわかります。糖質摂取後の眠りは短時間で覚醒することが多く、疲れが取れないですね。あと変な夢を見て嫌な思いをしたり。血糖値変動がなんらかの影響を及ぼすんでしょう。
糖質制限後わかったことですが、覚醒と睡眠の状態が完全に分かれるんですね。これが健康な人の世界なのかと感動しました。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 糖質制限後わかったことですが、覚醒と睡眠の状態が完全に分かれるんですね。
確かに。ぐっすり眠れますからね。
ONとOFFがはっきりしているとか、切り替えが早い、とも言い換えられるかもしれません。
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