多すぎても少なすぎてもダメ

2015/01/22 00:01:00 | 素朴な疑問 | コメント:1件

引き続きリンについて考えます

リンは臨床現場では腎不全との関連で語られる事が多いです。

それは「腎機能が低下するとリンが蓄積してしまうので、リンの摂取を制限しなければならない」ということです。

生体にとって重要な役割を果たしているリンを摂取しすぎるとなぜ悪いかと言いますと、

まず血液の中に多くなったリンはカルシウムと一緒に結合し析出するので、低カルシウム血症を引き起こします。

カルシウムが低いことは筋肉の収縮を邪魔しますので、こむら返りやテタニーといった筋肉の異常につながります。

そしてリンと一緒にくっついたカルシウムは全身をめぐり臓器や結合組織などに石灰化を起こりますし、

血管の壁が石灰化を起こし、動脈硬化が起こり、血圧が上がったりもします。

ただここで注意しないといけないのは、「原因と結果をはきちがえてはいけない」ということです。 すなわち、リンが多いせいで腎機能障害になっているのではなく、腎機能障害のせいでリンが多くなってしまっていると解釈すべきだと考えるべきなのです。

この話は「蛋白質を取りすぎると腎機能が悪くなるという誤解」に通じています。

リンは腎臓以外にも副甲状腺ホルモン、骨細胞など様々な因子によって調節されているので、

少々取りすぎたり、足りなかったりしたところで一定の値に保持されるわけですが、

ひとたび腎機能が悪くなってしまった場合にはリンの尿への排出がうまく執り行われなくなってしまうので、

高リン血症となりその事が身体に支障をきたすということなんです。

それを是正しようとし人体は副甲状腺の働きを高め、副甲状腺機能亢進症もきたしますが、これも原因ではなく結果です。

従って、腎機能障害の時にリンを制限することは、同じく腎機能障害の時に蛋白質やカリウムを制限するのと同様あくまで対症療法であって、

根本的な治療に持っていくは腎臓をいかに守るかという発想でアプローチすべきだと思います。

そのために最も有効な方法は、酸化ストレスを最小化するためのアプローチであり、

禁煙や節酒、ストレスマネジメントなどと並び、糖質制限が基本になってくると私は思うわけです。


従って、高リン血症に対しても、低リン血症に対しても、

糖質制限は根本的で極めて有効なアプローチになりうると私は考えます。

この事はいかに重要な物質であっても、

「多すぎてもダメ、少なすぎてもダメ、ちょうどいいのが一番いい」

とうホメオスターシス(恒常性)の重要性を物語っているように感じます。

血糖でも、インスリンでも、コレステロールでも尿酸でも、似たような話がありますよね。

特にミネラルに関しては単に食事からの量が「多い少ない」だけでは語れない部分があります。

ナトリウム、カリウム、カルシウムの「多い少ない」に関しても、それが原因なのか結果なのか、

その視点を持って本質を見失わないようにしていきたいです。


たがしゅう
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2017/01/16(月) 15:47:56 | | #
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