病名にこだわらず源流を意識する
2015/01/17 00:01:00 |
ふと思った事 |
コメント:8件
西洋医学では診断名を重視します。
それは診断によって用いる薬が変わったりするからです。
基本的にすべての西洋薬には「適応疾患」というものが定められており、
その「適応疾患」に従って薬を使用すれば、保険診療となり患者さん側が支払う金額が安くなります。
そういう保険診療の仕組みもあって、西洋医学は原則病名をいかにつけるかという事にこだわるのです。
逆に言えば、病名のつかないつかみどころのない症状に対しては、西洋医学は極めて無力です。
例えば「ふらふらする」、「なんとなく元気が出ない」、「疲れやすい」といった症状ですね。
そこに来て、もしも「検査異常なし」と来ようものなら、いよいよ西洋医学ではやりようがなくなってきます。 こうした場合に西洋医学は、自分達の公式に無理矢理あてはめて、この問題を解決しようとします。
その際に最もよく頻用される病名が「うつ病」であったり「うつ状態」といった病名です。
こうなると多くの医師の発想はまず間違いなく抗うつ薬を処方する事に傾くことでしょう。精神療法で対応しようなどという医師は明らかに少数派です。
あるいは、「めまい症候群」という病名をつける医師もいるかもしれません。
そうすれば抗めまい薬という類の薬が選ばれますが、これは本来メニエール病という「内リンパ水腫」という病態を持つ病気に威力を発揮する薬です。
しかしこの場合は、メニエール病だからというよりは、どちらかと言えば抗めまい薬を使うために無理矢理メニエール病と診断しているわけですから、
当然ながら多くの場合、それがそんなに効くことはありません。
そしてもし本当の病態が糖質過剰摂取を基板とした栄養障害にあるのだとしたら、どちらの治療も的外れという事になります。
けれど、抗うつ薬にしても、抗めまい薬にしても、効いているのか効いていないのかはっきりしない状態が続く場合、
実は多くの医師はその薬をそのまま続ける事を選択しているのが現状なんです。
私は効かないと判断した薬はすぐに止めるスタンスの医師です。
また自分が処方していなくても他医でこうした意味のない薬、それどころか益よりも害の多い薬が漫然と投与されている見つけた場合には、
「そんな薬はやめましょう」と患者さんへ積極的に呼びかけるようにしています。
そして薬絶対主義の世の中において、「薬には副作用がある」という当たり前の事実を、声を大にして伝え続けるのです。
残念ながら、その主張が受け入れられない事の方が多いですが、
少ないながらも受け入れて下さる少数の患者さんは、
やはり多くの場合薬剤の副作用の影響を受けていたのでしょう、減薬・断薬により明らかな症状の改善を得て私に感謝して下さいます。
こんな風に自分達の用意した公式に当てはまっていないのに、
無理矢理公式に当てはめようとする西洋医学に限界があるというのはある意味当然の話なのです。
それでも「症状が改善していないのならばそんな薬はやめましょう」というアプローチで通じる場合はまだいいのですが、
問題は薬を使っていても確たる効果を実感できない「予防系の薬」です。ここにおいても西洋医学は必ず病名にこだわります。
例えば、「高血圧」に対して「降圧薬」、「脂質異常症」に対して「スタチン」、「高尿酸血症」に対して「尿酸生成阻害薬」・・・
そして「認知症」に対して「抗認知症薬」です。全て1つの病名に対して1つの薬と、足し算の発想で薬がどんどん増えていきます。
これらの予防系の薬に対しては、「効いてないからやめましょう」という説得が通用しにくいのです。
なぜならば患者さんも「この薬を飲んでいるから、今の(安定した)私があるんでしょう?」と信じて疑わないわけですので。
もはや患者さん自身が自分で気づかない限りは誰が説得しても難しい状況に追いやられてしまっているわけです。
でも糖質制限を学んでわかったのですが、
高血圧も、脂質異常症も、高尿酸血症も、認知症も、
糖尿病も、アレルギーも、自己免疫疾患も、神経変性疾患も、
源流は「酸化ストレス」にあり、全て同じところから派生している病態であり、別々の疾患がたまたま偶発的に重なっているわけではないと思います。
だから、その源流部分に対処する方法一つあれば全ての問題が解決に向かって動き始めます。
その最善の方法が糖質制限だと私は思うのです。
そしてその次に使えるのが漢方薬です。漢方は病名処方ではなく、「証」と呼ばれる状態名処方ですので、
患者の状態は基本的に一つですから、あれもこれもと薬が重なっていくことはありません。
複数処方もせいぜい2種類までで、それ以上に薬がどんどん積み重なっていく事は基本的にありません。
ただそんな漢方も源流にアプローチしているわけではないので、あくまで対症療法に過ぎません。
「(患者は)なぜそのような状態になっているのか」
表面的な複数の病名にとらわれるのではなく、その源流を意識することが、
正しい医療を展開する第一歩であるように思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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つい先日の事です
更年期がひどく先日婦人科へ行ってきました。
はじめ、精神的な問題と指摘され、気持ちを落ち着かせる薬を出しましょうと
・・・ちょっと待った!それって鬱の薬?
はっきり「いりません」といいました。
そしてホルモン剤を処方されました。
しかしこのホルモン剤の副作用のキツイ事!
すぐに服用を勝手に中止しました。
いいのか悪いのかは分かりませんが
なにも服用しないほうが調子がいいです。
勝手な判断ですが
調子がいいということは
状態が良いと判断!
調子が悪ければしかたないですが。
薬の服用で今の状態から脱出できると思い込んでおりましたが
結局 副作用のほうがきつくつらかったです。
ストレスから来てると思います→即、気分が楽になる薬は違うとおもいます。
先生のようにちょっと考えてくださると
患者側もありがたいんですが・・・
このような経験をしました。
Re: つい先日の事です
コメント頂き有難うございます。
> 勝手な判断ですが
> 調子がいいということは
> 状態が良いと判断!
それで良いと思います。「体調は最良のバロメータ」です。
ストレスの原因も探らずにすぐに薬を勧めてくるような医者は、それだけでダメ医者の可能性が大だと思います。
酸化抑制の視点
そういう抗酸化物質を含む食品を摂取する事も良いとは思いますが、多くの糖質を摂取しているようでは、焼け石に水な気がします。
酸化を抑制した生活を送り、抗酸化を意識した生活を送れば、すごいことが起きるのでは?と思います。
糖質制限で白内障が改善したという話を時々目にしますが、「老化であり避けようのないもの」と思われていた病気でも避け得るのでは・・・!?
ところで、米国のニュースですが
http://www.afpbb.com/articles/-/3036564?ctm_campaign=txt_topics
体内埋め込み式の食欲をコントロールする機器をFDAが承認したというものです。
迷走神経を刺激して食欲をコントロールするものらしいですが、何か非常に恐ろしいものを感じます。もちろん、高度肥満解決の最終手段としてなんでしょうが。。
そういえばかつて、胃にバンドをつけて食欲をコントロールする機器をTVで見て、やりたいなぁと私も思ったこともありました…
本当にそんなのにお世話にならずによかったと思います。
薬を飲むかは当事者(患者側)が決める事
薬を飲みたいかは患者側が決める事です。私も軽症の一般的な感冒患者には漢方薬しか出しませんが、十人が十人とも薬をくれと言いますね(苦笑)。
めまいも薬飲んでも治らないことは患者を何人かみていれば医者なら誰にでもわかる事ではないでしょうか?最近は自分でできるめまいリハビリを指導しています。
抗うつ薬として頻用されて製薬会社がボロ儲けしているSSRIに関しては、抗不安薬という作用しかないので、日本ではこの10年くらいベンゾジアゼピンの代りに使
われてきましたが、ベンゾジアゼピンより怖い副作用報告が続出しているようですね。本当のうつ病にはSSRI如きでは到底効かないというのが定説のようです。
神経内科の分野でも有名病院の外来はMRIだのPETだのSPECTだのすぐに検査検査で、ロクに診察もしてません。診察しないので、神経変性疾患の初期はよく見逃
されているようです。まあ治らないとされている難病なので、たとえ初期に見逃されても何の罪の意識もないようですが、いかがでしょうか?
効果がはっきりしない薬をやたら盛られている患者は非常に多いです。私は一度や
めてみましょうと提案します。薬が増えれば増えるほどに想定外の副作用が起こり
それは多くの場合は無視され隠蔽されます。特に抗認知症薬(コリンエステラーゼ
阻害薬)は副作用のデパートと言えます。なかなかやめてくれないという患者側の怨嗟の声が絶えないようです。私は何のためらいもなくやめてしまいますが(苦笑
抗酸化ストレスの栄養療法がいま注目されていますね。栄養療法を中心にして薬物治療を否定している賢明な精神科医も少なからず存在するようですね。
Re: 酸化抑制の視点
コメント頂き有難うございます。
> 酸化を抑制した生活を送り、抗酸化を意識した生活を送れば、すごいことが起きるのでは?と思います。
本当そうですね。まさに病気の源流を意識した生活です。
食欲を人為的にコントロールしようというのも私に言わせれば愚かな行為です。もっと自分の身体の本来持つ力を信頼すべきだと思います。
Re: 薬を飲むかは当事者(患者側)が決める事
コメント頂き有難うございます。
> 神経内科の分野でも有名病院の外来はMRIだのPETだのSPECTだのすぐに検査検査で、ロクに診察もしてません。診察しないので、神経変性疾患の初期はよく見逃
> されているようです。まあ治らないとされている難病なので、たとえ初期に見逃されても何の罪の意識もないようですが、いかがでしょうか?
否めませんね。特に大学病院は検査に頼る傾向が強いです。
神経変性疾患の初期診断の鍵は取りも直さず問診です。病歴でいかに早く検出し糖質制限を導入するかが大事だと私は思っています。
夏バテ考
私の夏バテ体験です。
検査異常なし、内服薬(ビタミン剤など)効果なし。
夏バテに良いといわれるビタミンBサプリ、クエン酸サプリ摂っても効果なし。
糖質制限=酸化ストレスから離れたこと
が、いちばん夏バテには著効でした。
昨夏、消費期限をあまりに越えたらもったいないので残っていたビタミンBサプリ、クエン酸サプリを摂ってみたのですが、
今度は糖質制限で元気よくて、やっぱりサプリ類の効果はわかりませんでした。
私の夏バテの場合の結論は、
糖質制限>内服薬やサプリ でしたよ。
Re: 夏バテ考
コメント頂き有難うございます。
> 私の夏バテの場合の結論は、
> 糖質制限>内服薬やサプリ でしたよ。
夏バテも西洋医学でとらえられない病態の代表格ですね。
エリスさんの御経験から、食がいかに根源的かということを考えさせられますね。
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