主食抜いても改善しない理由
2013/10/13 00:01:00 |
普段の診療より |
コメント:18件

「三大栄養素のうち血糖値を上昇させるのは糖質のみ」というのは純然たる事実です.
これは物理で言う「ニュートンの万有引力の法則」並みに揺るぎない事実です.
従って,糖質を制限すれば,基本的には万人が平等に血糖値の上昇を少なくできるという恩恵を受けることができます.
そして一般的な食生活の中で,糖質摂取の大部分を占めているのが炭水化物を主成分とした「主食」です.

これは,よく患者さんに見せる画像ですが,
普通のごはん茶碗1杯(白米150g)の中には,角砂糖約17個分の糖質(55.3g)が含まれています.
角砂糖17個を食べろと言われても食べられる人はまずいないと思いますが,
我々日本人はそれを知らないうちに一日3回も繰り返しているということになります.怖い話です.
従ってこんな量の砂糖の塊を抜くことができれば,少々おやつを間食することに比べて効率的に糖質を制限することができます.
従って,私は江部先生のスーパー糖質制限食/修正アトキンス食を基本的に推奨しています.それを受け入れられない人,もしくは受け入れられなさそうな人には順次「半糖質制限食」「食べる順番療法」の選択肢も提示していくという診療スタイルです.
こうした診療スタイルを導入し始めて,1年以上経過しました.
しかしながら,私の説明に納得してスーパー糖質制限食を実践して下さる人はごく少数です.
しかも中には,3食主食を抜いていると豪語しているにも関わらず,血糖値やHbA1cにほとんど改善がみられない,もしくは高度肥満があるのにほとんどやせていない,という人がいます.
こうした人達を見たときに,あまりよくないことなのですが,私は「本当に主食を抜いているのだろうか?」と患者さんの事をどうしても疑ってしまいます.
なぜなら,冒頭でも述べたように「糖質を制限すれば血糖値の上昇を少なくできる」というのは純然たる科学的事実だからです.
万人に共通する事実である以上,主食を抜いているのにデータが改善しないというのはどう考えてもおかしい,それはきっと患者さんが何かしらの勘違いをしているに違いないと思ってしまうのです.
考えうる一番初歩的なミスは「ごはんをやめたけど,パンを食べていた」というパターンですが,私は説明時に抜くべき食品は「ごはん,パン,麺類,イモ類,お菓子,ジュース」だと強調しているので,さすがにそう言う人は少ないです.
あとはひっかけ食材の存在です.例えばから揚げの衣,春雨,練り物などは糖質が結構含まれていますし,調味料も少し意識していないと糖質量が増える原因になってしまいます.
ただ,それを食べていたにしても,主食を抜く効果は絶大なので,それでも改善の兆しが見えていないとやっぱりおかしいと思います.
そうすると,そういう3食主食を抜いているのにデータが改善しない原因はどこにあるのでしょうか?
これまで患者さんにいろいろと質問をしてきて,まだ原因のすべてが究明できたわけではないのですが,
ようやく一つの可能性を見つけることができました.
それはその患者さんが3食主食なみに果物を食べてしまっているということです.
私自身には果物をそんなにたくさん食べるという習慣がなかったので,個人的にはこれは盲点だったのですが,
さすがに3食果物をそんなに多く食べているのだとしたら主食抜きが帳消しになるくらいの糖質が入ってしまっていたのかもしれません.
そうするとさすがにやせませんし,データも改善しないかもしれません.
食生活を聴取することは時間もかかるし,答える患者さん側もすべてをこと細かく覚えているわけではなかったりするので難しい技術です.
しかしここでも常識にとらわれずにあらゆる可能性を探る必要性を感じます.
ただ考える際にも,我々には基盤となる揺るぎない科学的事実があるということを忘れずにいれば,
方向性を見失うことはないと私は信じています.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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レコーディングダイエット
美容女子です。健保の栄養指導がきっかけで、私は、何時に何を何グラム食べた、何時にはかった体重は何キロだった と言うことをできる範囲で割と克明に測って、数年分の記録が残り今に至っています。ほとんど家計簿と同じで、今も書くのが習慣になっています。(ノートにではありません。雑紙、広告紙の裏を使っています。エコです。)
例えば、2011.3.20(火)の夕方には、「いなりずし3個 250g、 みそ汁(えのき、とうふ、ねぎ)、 塩ゆでスナップえんどうマヨネーズ」を食べました。
いなりずし 250gは、糖質制限をしている今では考えられないのですが、当時の管理栄養士さんの正しい栄養指導はこれだったんです。(ホントに、真面目に取り組んで損した!と今は思います。)
気づけたことは、例えば、ご飯100g食べても、とうふ100g食べても、体重が100g増えるのは同じです。ですが、糖質を多く食べた翌朝には、その100gの体重が減らない(もとの体重に戻らない)傾向にあるんです。なぜなんでしょう。
市販の食品には多くのものに栄養成分表が印刷してあるので、それを切り抜いて記録紙に貼っています。家計簿にレシートを貼るのと同じ感覚です。
3大栄養素のバランスを見て、ヨーグルトドリンクより豆乳ドリンクを選ぼうという動機づけになります。
レコーディングダイエット、いいですよ。いろいろな発見があります。なぜ、ジャンクなものをこのとき食べたのか?の考察もします。
果物思ったよりも糖質多そうです
私見ですが、果物はすごいです。去年の秋から冬それまでの糖質制限で調子がよかったので、一日一個のリンゴを食べ始めたらあっという間に体重も戻りました。
そして先週、リンゴの紅玉が大好きなので、一日四分の一個ならと思って、動き始める前の朝だけと思って食べ時始めたら、その次の日から着実に(500gずつ)体重増えました。特に運動量やほかの動作には変化がありません。
市販の冷凍ブルーベリーや我が家産ブルーベリーは、糖質量が少ないこと、一度にたくさん食べられないこともあり体重の変化はありませんでした。
日本産の果物は改良が進みすぎとても糖質が多いのではないかと考えているところです。
そもそも、真剣に血糖値やHbA1cを改善しようと思ってないんでしょうね。
Re: レコーディングダイエット
いつもコメント頂き有難うございます.
> 私は、何時に何を何グラム食べた、何時にはかった体重は何キロだった と言うことをできる範囲で割と克明に測って、数年分の記録が残り今に至っています。ほとんど家計簿と同じで、今も書くのが習慣になっています。
すごいですね.なかなか皆が皆できることではないと思います.
しかし,その事によって見えてくる新しい事もおおいにありそうですね.
> 気づけたことは、例えば、ご飯100g食べても、とうふ100g食べても、体重が100g増えるのは同じです。ですが、糖質を多く食べた翌朝には、その100gの体重が減らない(もとの体重に戻らない)傾向にあるんです。なぜなんでしょう。
これは既存の理論で考えれば,おそらくは食事誘発性熱産生の違いからくるものでしょう.
ごはんのような炭水化物主体の100gと豆腐のような蛋白質主体の100gでは,食事誘発熱産生量が変わってきますので,平たく言えば豆腐を食べた方が消費カロリーが増えるということなのだと思います.
ただ,私の印象では,人のブラックボックス部分(体質差)があってそう理論通り単純にはいっていないようにも思えますので,まだまだ未解明の部分はあるのではないかと思っています.
2013年10月1日(火)の本ブログ記事
「カロリー理論はどこまで正しいか」
もご参照ください. http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-40.html#more
Re: 果物思ったよりも糖質多そうです
いつもコメントを頂き有難うございます.
> 日本産の果物は改良が進みすぎとても糖質が多いのではないかと考えているところです。
私もそう思います.
糖質の中毒性が極限まで高められた状態と申しますかね.
だからこそおいしいのでしょうし,それだけハマってしまう人も多いのだろうと思っています.
Re: タイトルなし
いつもコメントを頂き有難うございます.
糖尿病は自覚症状がないだけに真剣に取り組むモチベーションに欠けるのかもしれません.
メタボの方は目に見えるデメリットがあるわけだから真剣に取り組んでもよさそうなものですが,
これは自分が昔そうだったからわかりますが,「自分はそういう(太る)体質だ」と最初からあきらめてしまう側面はあるように思います.だから頑張らないし,頑張れない.
でもそうじゃないんですよ,ということを,私は自分の2年前の太った写真を患者さんに見せながらいつも説得しています.それでも思い込みのためか,常識の壁のためか,なかなか私の想いは伝わりません.
最低の耐糖能患者
純然たる事実です.
エッ!?...知らないの?
これはⅡ型の糖尿病の人だけの話でしょう
Ⅰ型の事を あなたは知らない.....
私は水しか飲んでいなくても基礎インスリンが
切れると糖質0でもガンガン血糖値が上がるヨ
私もあなたのような無知な医者に言われて
水だけを飲み有酸素運動の登山をし超高血糖を引き起こし
登山道でゲロゲロ吐きまくっていた事があります
「三大栄養素のうち血糖値を上昇させるのは糖質のみ」
こんな嘘話を信じていたからネ...
もう少し勉強してから記事を書きなヨ!
「主食」という言葉はクセものですね
私感ですが「主食」という概念は『コメ文化圏特有の考え方』の様な気がします。
フレンチやイタリアンなどのいわゆる欧米食では、パンは決して「主食」ではなく、あくまでも肉や魚が「メイン料理」ですね。
一方、コメ文化圏では「コメ」を食うために多種多様な「おかず」が存在しているということに気が付きます。
私は、質制限食に取組む前「主食-副食」という考え方を「主菜-副菜」に変えました(江部先生の著書にこの様な表現があったと思います)。
「主食(炭水化物≒糖質)」の呪縛から逃れる一つの方法として、食事内容の変更に先立ち「頭の中も変える」というのはいかがでしょうか?お金もかかりませんしね。
Re: 最低の耐糖能患者
御指摘有難うございます.
確かに1型糖尿病では基礎インスリンを補充していなければ糖原性アミノ酸の影響で血糖の上昇が起こりえます.
自らが1型糖尿病患者で糖質制限を実践しておられるアメリカのバーンスタイン医師によれば,
「64kg程度の成人で1gのタンパク質が1型糖尿人の血糖値を0.93mg上昇させる」そうです.
従って,1型糖尿病の方とっては「三大栄養素のうち血糖値を上昇させるのは糖質のみ」というのは適切ではない表現でした.その点は申し訳ございません.
ただ,それでも血糖値を上昇させる割合は糖質の方が圧倒的に多い(64kg程度の成人で, 1gの糖質が1型糖尿病の人の血糖値を5mg上昇させる)ので,1型糖尿病患者の方においても糖質を控えることが必要です.
そして,大多数の方には「三大栄養素のうち血糖値を上昇させるのは糖質のみ」が当てはまります.
Re: 「主食」という言葉はクセものですね
コメント頂き有難うございます.確かにそうですね.
『英語圏では日本語の主食に相当する言葉はない』という話を聞いたことがあります.真っ先には「main dish」という言葉が思い浮かびますが,確かに意味はいわゆる「主食」とは違いますよね.
「主食」という概念そのものの見直しが必要と思います.
No title
私は慎重が175センチで体重は67キロですが、一時期90キロ近くあった時がありました。この時は食べる量を減らしても体重がなかなか減らなかったり、かえって増えたりすることがありました。
よく考えてみたら、小腹がすいた時にコンビニであんまんや肉まんを買って食べた・・・
とかいわゆる「食べた」とカウントしていないものがけっこうありました。炭水化物抜きも患者さん自身もそれほどそのことが重要だと思っていないと
主食食べていないから・・・・
ということだけで判断してしまうことがありそうですね
Re: No title
いつもコメント有難うございます。
> よく考えてみたら、小腹がすいた時にコンビニであんまんや肉まんを買って食べた・・・
> とかいわゆる「食べた」とカウントしていないものがけっこうありました。
なるほど。そういうパターンもあるかもしれませんね。
今度疑わしい患者さんに尋ねてみたいと思います。アドバイスを頂きどうも有難うございます。
No title
専門家が非専門家に説明する場合はわかりやすく趣旨を説明する必要がありますよね。しかしながら正確な記述をしようとするとわかりやすくないことが多いです。例えば私の場合だと
糖質のみが血糖値を上昇させる
がメインですがそれ以外の栄養素でも血糖値を上昇させることがあります。ということは勉強して知りました。
人体の場合はブラックボックス的な部分があると思いますが全ての事例を網羅してブログで触れるのは無理があります。この辺りは実際にやりとりで埋めるのが現実的でしょうね。
たがしゅう先生のブログは理論だけではなく医療の現場から触れられているので私には大変勉強になり役に経ちます。
Re: No title
応援と御理解のコメントを頂き誠に有難うございます.
与えられた情報を活かすか殺すかは,その人次第だと思います.
果糖
果糖とAGE
http://www.kamiokadaiin.or.jp/roukabussituage1.html
No title
ですから、太り過ぎると私も糖尿病になる可能性があると思いつつ、甘い物を食べては自己嫌悪です。
主食を食べて甘い物も食べていたら糖質を摂り過ぎることになるので、甘い物を食べて主食を抜くことによって体重を維持しています。
パンが好きで、どうしても我慢が出来なくてパンを食べ始めるとパンの量に比例して体重が増えます。
先生の「主食を抜けば少々のオヤツを間食しても糖質の制限になる」の言葉で自己嫌悪から開放された気がします。
これからも、ストレスを溜めないように糖質制限を続けようと思います。
Re: No title
コメント有難うございます。
糖質制限は無理なく続けるという事が一番大事です。
糖質中毒から逃れるやり方も私の場合はスパッと切るのが楽でしたが、そうでない人も当然いらっしゃると思います。
「糖質を減らした方がよい」という原則さえきちんと理解していれば大丈夫です、あせる必要はありません。じっくりと時間をかけて自分に合ったやり方を模索してみて下さい。
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