薬を止めるだけで名医?
2014/12/26 00:01:00 |
よくないと思うこと |
コメント:2件
私の所属する神経内科という科は、
比較的他の診療科からのコンサルト(相談)を受ける事が多い科です。
「脳の事はわからない」とか、「わけのわからない症状はとりあえず神経内科へ」といった事がよく言われます。
頭が痛いとか、イライラするとか、疲れがとれないといったつかみどころのない症状などが多く、こういうものは総称して不定愁訴と呼ばれます。
一方で不定愁訴と表現してしまう事は医者の力量不足を示しているという話もあります。
すなわち、患者さんの症状が一定していない(不定〉なのではなく、
様々な症状をまとめあげる医師の能力が足りないだけだというのです。 耳の痛い話ですが、実際には本当に様々な症状を訴えされて、
それらをまとめあげて病態にアプローチするのが難しいという患者さんのケースもしばしばあります。
しかしそういうケースを通じて最近私が思うのは、
わけがわからないとされる症状の多くに多剤内服の問題が関わっているという事です。
向精神薬の過剰投与問題は、過去にも当ブログでも取り上げてきましたが、
ことは向精神薬の問題だけにはとどまりません。現在の医療はほとんど薬絶対主義と言っても過言ではない状況です。
向精神薬以外にも神経内科の領域なら抗認知症薬、抗パーキンソン病薬も副作用が問題になりますし、
降圧薬、スタチン、SU薬、ステロイド、抗血栓薬、抗生物質など副作用が問題になる薬は他にもたくさんあります。
にも関わらず、高齢者医療の現場ではほとんどが多剤内服をされている患者さんばかりです。
それだけ薬への信仰、薬への依存が根深いという事を示していると思います。
先日も過剰に投与された抗認知症薬をただ減量するだけで、
患者さんに感謝されるという出来事がありましたが、こういう事は稀でなく経験しています。
ただ薬を減らしたり、薬をやめさせたりするだけでわけのわからないとされる症状が和らいでいくとはいかがなものか。
それは今の薬絶対主義の治療が誤っているということの裏返しではないでしょうか。
薬が重なれば重なるほど、それら薬どうしの相互作用も複雑化していきます。
そうなるとまとめあげるといっても複雑すぎて、把握不可能な現象が身体の中で起こりうる事になります。
その結果が「わけがわからない」とされる症状の出現につながっているのではないかと思うわけです。
薬を止めさせただけで感謝されるなんて、医者としては複雑な気持ちです。
それで名医と扱われる医療など恥ずかしい限りです。
そもそもそんな状況にならなくて済むように、薬絶対主義からの脱却をはかり、
糖質制限+必要最小限の投薬というスタンスで
これからも着実に経験を積んでいきたいと思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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抗認知症薬の不適切使用が横行している悲劇
「クスリ絶対主義」を誘導しているのは製薬会社とそれに関連した医師利権団体ですね。医師のほうが臨床研究・研究会・学会などを製薬会社に依存している状況です。それゆえ出資してやるからクスリを使うように講演会で誘導しろと露骨な内容のものも少なくありません。そういう講演会で本来は真っ先に議論されるべきであるクスリの副作用の事(製薬会社にとって不都合な真実)が討論されているのをまったく見たことがありません。
今年行われたある学会で抗認知症薬の副作用の問題点を指摘する学会発表がいくつかあったのですが、抗認知症薬を製造販売しているある製薬会社が、昨年までの共催から撤退してしまいました。うちの薬を否定する発表を承認する学会などには金はビタ一文出せんという事でしょうか(苦笑)?
あとは「抗認知症薬を止めると認知症が悪化する」というよく言われているおどし文句のようなのがありますが、それを丸々信じてクスリを使い続けられて副作用の苦しみで悲惨な目に遭っている方々が後を絶たないようです。半年間も食事が十分とれなくなって衰弱してしまっていたという方もいました。また抗認知症薬の場合は不適切使用も多くて、いわゆる「物忘れ外来」で年齢相応の物忘れというだけで抗認知症薬が出されたり、アルツハイマーとはまったく別の神経変性疾患の記憶障害なのにそれを知らない勉強不足の医師が高次脳機能評価や神経所見もロクにとらずに認知症というだけで安易に抗認知症薬を出す(苦笑)。認知症=物忘れ=抗認知症薬という単純作業であれば、もはや医者の仕事は素人以下ではないのか?と感じられる今日この頃です。
年のせいだからわざわざ神経のバランスを破綻させる劇薬などわざわざ飲みなさんなという医者のほうがよほど良心的だと思いますね。こういう医者にかかると少なくとも抗認知症薬の悲惨な副作用で苦しむ事はないのですから。
薬の副作用と気がつかずに、「止めると病状が悪化する」という謳い文句にしばられて中止できない医者のなんと多い事か!副作用を止めるためにさらに劇薬(抗精神薬)を追加するという愚行も横行しているようです。
物忘れ⇒受診⇒製薬会社の利益という利権構造を黙認しているこの国はどうなっているのか??いいかげん国民もおかしい事に気がつくべきです。
Re: 抗認知症薬の不適切使用が横行している悲劇
コメント頂き有難うございます。
おっしゃる事至極ごもっともです。何とかしなければならない事態だと感じています。
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