私が糖尿病食をオーダーしない理由
2014/11/07 00:01:00 |
糖尿病 |
コメント:6件
今の一般の糖尿病食に全くメリットがない、と申しましたが、
その糖尿病食を出していても、実際に血糖値が良くなっていったという患者もおられます。
この現象はどう説明すればよいでしょうか。
それは簡単な話、「今までが糖尿病食よりも多くの糖質を摂ってしまっていた」からだと思います。
それでも、「糖尿病食でも改善するのであればそれでよいではないか」と思われる方もいるかもしれませんが、私はそうは思いません。
その理由は大きく分けて3つあります。 まず、よく言われる事ですが、「糖尿病食は継続が難しい」という事です。
常識的なカロリーの範疇で、炭水化物50〜60%に固定されてしまったら、
多かれ少なかれ、血糖値の乱高下が引き起こされる事はほぼ不可避です。
また血糖値の上昇により多幸感を生じ、ドーパミンを介した脳の報酬系が刺激される事によって、
身体は次の糖質を欲するよう仕向けられる、いわゆる依存症の様相を呈してきます。
身体の内部がこのような状況で、管理された病院の中であればまだよいですが、
退院すれば、冷蔵庫があり、テレビがあり、買い置きの食材があるような環境に置かれるわけです。
なおかつ足りなければ自分の意志で、あるいは家族に頼んで食材を買い出す事ができる環境です。
そんな環境で糖尿病食を継続するのが至難の業であることは想像に難くありません。
そのくせそれが守れずに「意志が弱い」と批難されようならたまったものではありません。
そもそも、そんな苦行に耐えられるような精神力の持ち主は糖尿病になっていないであろうし、苦行に耐える必要性自体がないのです。
もう一つの理由は「糖尿病の本質を教えていない」ということです。
仮に糖尿病食で血糖値が下がっても、その苦行に耐えられる精神力を持っていたとしても、
糖尿病食で指導をする以上、血糖値が上がる理由をカロリー理論で説明している事になります。
しかし高カロリーで血糖値が上昇するというのは明らかに間違いであるわけですから、
いくら結果オーライでも、その患者さんはずっと間違った知識を信じ続ける事になります。
間違った理論のままであれば、自分で軌道修正をかける事もできず、
長期的にみていつかは均衡状態に破綻をきたすのは目に見えています。
最後の理由は、「たとえ血糖値が正常範囲に収まっていても、糖質の影響は必要最小限にしておくべき」と考えるからです。
私は血糖値に反映されない糖質の害というものがあると常々感じています。
例えば血流の乱れ、免疫系・内分泌系のかく乱、蛋白の変性、がん化、などです。
全ては血糖値の乱高下に始まる酸化ストレスの増大を起源に持つと考えれば、
生活習慣病をはじめ、種々の原因不明の病気が年々増え続けている理由も説明がつくように思います。
血糖値の奥にある、その先の本質を見据えるべきだと私は考えている次第です。
これらの理由から、私が自ら従来の糖尿病食をオーダーすることはまずないでしょう。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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学会は信用できぬ
千葉大学の研究偽装の試験責任者は小室一成教授です。
http://mainichi.jp/select/news/20141021k0000m040037000c.html
ところがこの人物は未だに学会の理事として存在しています
http://www.jpnsh.jp/board.html
このように、学会というところは信用できないと疑ってかかるべきでしょう。
そこじゃない
食事療法で入院したとき、
日頃の食事よりも、むしろ量が多くて
食事を残してしまったという話を聞きました。
勿論、血糖値は下がりません。
HbA1cは・・・
測った形跡がありませんでした。
Re: 学会は信用できぬ
コメント頂き有難うございます.
おっしゃる通りです.もはや学会を鵜呑みにする事はできません.きちんと自分の頭で考えて行動していかなければなりませんね.
Re: そこじゃない
コメント頂き有難うございます.
肥満型であろうと,やせ型であろうと,糖質制限は双方にとって本質的なアプローチになりうると私は思います.
それが学会
学会では毎年新しい治療薬が出るたびに喜んでいます。
糖尿病専門医は3~5種類のクスリを平気で出します。専門医は糖尿病患者のほとんどがクスリに頼らないと良くならないと信じています。つまり患者さんが自らの意志で食事や運動療法で改善できる可能性を根本的に信用していません。
糖尿病が悪い患者を病院の専門医に紹介したら
教育入院退院後にクスリが4種類盛られて帰ってきました。
昨日も専門医の処方で経口血糖降下剤を5種類内服している方が集中力がなく判断力が鈍くなったと言っていました。糖尿病専門外来っていったい何なのか?とすら思いますね。1か月で1000人診ている糖尿病専門開業医も少なくないようで
メンクリと同じで、日本ではたくさんクスリを出せば勝者。患者はクスリを求めて外来に日参するという習慣が長年定着していて、この習慣を変えるのは困難。
発売1年ですでに複数の死者が出たSGLT-2阻害薬を未だに野放しにしてる現実も到底理解できません。
Re: それが学会
コメント頂き有難うございます。
> 日本ではたくさんクスリを出せば勝者。患者はクスリを求めて外来に日参するという習慣が長年定着していて、この習慣を変えるのは困難。
完全に歪んでいますね。医師も患者も本質を見失っています。
双方とも変わっていかなければならないと思います。
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