主食半量から入る糖質制限
2014/11/06 00:01:00 |
普段の診療より |
コメント:20件
私の働いている病院は,
糖質制限を受容している病院ではありません.
それでも外来の患者さんであれば,患者さんとのやり取りの中で,
直接糖質制限の事をお話しし,納得した人に自宅で実践して頂くという事が可能です.
しかし,入院患者さんとなってくると話が変わってきます.
入院食のメニューには当然糖質制限食はありません.
そんな状況の中で,入院中に糖質制限を実践するとなると,ひと工夫が必要になります. 以前は,何とか主食抜きで提供してもらえないかと栄養士に交渉した事もありましたが,
「糖尿病の先生に確認してください.糖尿病の先生が推奨していないものを出すわけにはいきません」と取り合ってもらえませんでした.
いつから入院食は糖尿病の医者の専売特許になったのでしょうか・・・?
ただ,糖質制限を認めなくとも,食が細いなど様々な事情で米を減らしてほしいという希望を言われる患者さんは時々おられます.
そういう人のために入院食の中で「主食を半量にする」という内容であれば,栄養士に掛け合わなくてもオーダーする事ができます.
私の現在の入院患者さんへの戦略としては,
まず通常食の主食を半量にしてオーダーします,そしてその意義を患者さんに理論的に説明して納得してもらいます.
それから体重を週に1~2回,血液検査も適宜フォローします.
それによって,たいていの人は標準体重に近づいていき,また血液検査の肝機能や,総蛋白やアルブミンといった栄養状態を現す指標が改善します.
1ヶ月以上入院している人であればHbA1cまで改善を確認する事ができます.
それくらい緩い糖質制限でも改善させる事ができるのです.これは次につなげるための大切な第一歩になると思います.
ところで当院の場合,通常食は1800kcal/日に設定されていて,主食半量にすると1360kcal/日になってしまいます.
1360kcal/日なんてのは,たいていの人にとって少ないカロリーだと思いますが,
実際にはこれだけ食べていても血液検査でみる栄養状態は改善していく事は多々観察されます.
その事実だけみてもカロリー理論がいかにでたらめかという事が明らかだと思います.
それと主食全量の時はおかずを残していた患者さんが,主食を半量にすることでおかずも残さず食べるようになる,という事も関係しているかもしれません.
そして,理解の良い人であれば,データの改善を確認後,「自宅退院後が本当の勝負だ」という事を力説し,
自宅に帰ってから本格的な糖質制限に取り組む事を強く勧めます.
主食を減らすか,主食を抜くかの間には大きなハードルがありますが,
そのハードルを乗り越えた患者さんは,実に目覚ましい改善を遂げています.
私の目指す理想とはほど遠いやり方ではありますが,
従来の糖尿病食をそのまま出すのに比べたら数倍よいやり方だと自負しています.
そう言えば,ここ数年従来の糖尿病食を私は全くオーダーしていません.
食事の全体量を減らし,なおかつその中の炭水化物の割合を50~60%に固定する従来の糖尿病食に全くメリットを感じないからです.
先日も糖尿病食を食べると食後血糖2時間値が200を超えた人が,
通常食の主食半量にすることで,ほぼ同じカロリーにも関わらず2時間値を150程度にまで押さえられる事を確認しました.
糖質制限食を指導した事のない医師は,
まずはこういう所から真実を知って頂くというのも一つではないかと思います.
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
経験
半年前、私の子供が とある疾患で 1週間の 入院治療を余儀なくされました。問題は、病院食でした。
子供は 数年前より かなりの肥満体で、1年前から 私の作る糖質制限食を受け入れ 食べ続け 嘘みたいに体重が減っていくと行った途中での入院でした。子供も 糖質制限の効果を体験しているので 入院して出される食事に抵抗感を抱いたようです。
「なんで こんなに糖質ばかりなんだ?」「ほとんど食べるものがない」と。
仕方なく 提供される食事+糖質制限の食材の持ち込みをする事で入院生活を無事終える事ができましたが…ロクに食べれるものが少ない病院食で 食事代を支払い+持ち込みの食事代…
本当に どうにかならないのかと…悲しくなりました。
今のままの医療態勢では 糖質制限を知る者には 過酷すぎます。
そのため、主食を残すと『食欲がないんですか?』『どこか体調が悪いですか?』と聞いてくることがあります!そこで、糖質制限の話をしても通じません!
入院時の食事
その時は糖質制限の知識は全くなかったのですが、食事量の多さにうんざりした覚えがあります。
ただでさえ入院時はベッドで過ごすため活動量が低下するにも関わらず、3食きっちり食べさせられる訳ですよね。
このままの食事を続けていたら確実に太ると思い米飯・パンはほぼ残してなるべくおかずをしっかり食べるようにしていました。
それを看護師に言っても、「量が多いのでみなさん残されるんですよねー。」
といって、残すことに対しては全くおとがめなしでした。
私の場合は、婦人科疾患での入院でしたので大丈夫でしたが、他科となると大変みたいですね。
非糖尿病では?
糖が十分運ばれずに脳機能が低下するんじゃないかとか素朴な疑問があります。
普遍的にするためには体重や性別に応じた必要最小限の糖質摂取量や統計学的な大規模臨床試験による信頼のおけるデータがほしい所です。
No title
糖質制限食は 糖尿病の人であれ 非糖尿病の人であれ 健康でいたければ 有効です。
江部先生のblogでも たがしゅう先生の過去の発信内容にも 何回も その事が記載されています。
一度 blogの内容を振り返ってみてはよいかと思いました。
発表する
体重を週に1~2回,血液検査も適宜フォロー。
たいていの人は標準体重に近づいていき,血液検査の肝機能や,総蛋白やアルブミンといった栄養状態を現す指標が改善。
1ヶ月以上入院している人であればHbA1cまで改善。
このよい結果の統計を集めて、何か研究発表のときに発表する。その資料をたくさん作って、それをまた、患者さんへの説明に使うのはどうでしょう。
先生の努力に、頭が下がります。
Re: 経験
コメント頂き有難うございます.
> ロクに食べれるものが少ない病院食で 食事代を支払い+持ち込みの食事代…
> 本当に どうにかならないのかと…悲しくなりました。
辛い現状ですね.残念ながら糖質制限が普及するまではそのように自己防衛するしかないと思います.
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます.
医療従事者に知られていないというのは問題ですね.地道に糖質制限の普及を続けていきたいと思います.
Re: 入院時の食事
コメントい忠明有難うございます.
入院食になって主食の量が多いと感じる方も結構おられるようですね.しかしまさか病院の食事が間違っていると思う人はいないでしょうから,そのまま素直に食べるという人が大半だと思います.
何とかしなければならない現状です.少なくとも糖質制限食が選べる状況に変えていきたいですね.
Re: 非糖尿病では?
> 非糖尿病者があまり糖質制限しすぎると低血糖で倒れるんじゃないかとか
> 糖が十分運ばれずに脳機能が低下するんじゃないかとか素朴な疑問があります。
基礎インスリンが保たれている非糖尿病者では糖質制限単独で低血糖を起こす事はありません.
脂質,タンパク質などを材料に肝臓で糖新生ができますし,コルチゾールやアドレナリン,成長ホルモン,グルカゴンなど多重のバックアップシステムがあるからです.
事実,私は非糖尿病者ですが,3年近く糖質制限を続けて低血糖など起こした事はなく元気に過ごしています.
2013年12月4日(水)の本ブログ記事
「エビデンスを待たずとも」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-109.html
も御参照下さい.
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
Re: 発表する
コメント頂き有難うございます.
> このよい結果の統計を集めて、何か研究発表のときに発表する。その資料をたくさん作って、それをまた、患者さんへの説明に使うのはどうでしょう。
そうですね.
ただ今の立場で発表すると,いろいろな人に迷惑をかけてしまうという問題もあります.あせらずに実績を重ね,しかるべき時機を待ちたいと思います.
アンチスタチンさんへ
『糖質制限食の長期的安全性と根拠となる信頼度の高い論文』 2014年11月06日 (木)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-3167.html#comment27503
は参考になりますでしょうか?
また低血糖は、高糖質食の反動によるもの、薬剤によるものと思っています。
また糖質制限食の場合、アルコールの過剰摂取も低血糖の危険が高まると思っています。
No title
少し意見させてください。
「糖質制限で低血糖になるのではないか?」のやりとりについてですが、低血糖(血糖値60mg/dL以下)を拡大解釈している人(医療者・患者を問わず)がいます。
例としては、
・いつもの数値より低いと低血糖(たとえ100mg/dLでも)
・空腹感があると低血糖(血糖値を測っていない)
・汗をかいたら低血糖(冷や汗かどうかは誰にも分からないし血糖値を測っていない) などなど
同じ『低血糖』を話題にしていても拡大解釈(誤解)をしている人がいるので訂正と注意が必要です。
医療現場でも、医師や看護師が上記のような誤解をしているのを目撃します。もちろん「低血糖症状です」とは言いません。
「低血糖症状かもね」と言うのですが、それを聞いた患者さんは「空腹を感じたり汗をかいたら低血糖なんだ」と思うようです。
Re: アンチスタチンさんへ
コメント,情報を頂き有難うございます.
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
鋭い御指摘ですね.「低血糖」という言葉をめぐっての誤解,勘違いは臨床現場でよく感じる所でありました.一度記事にまとめてみたいと思います.
あんたーにゃ先生に同感です。
今年1月に夏井先生が出演された
『炭水化物制限(糖質制限と言って欲しい)は是が非か?』
でも、自身が糖尿病である松村邦洋さんが
『炭水化物を抜いた事があるが、と頭がボ~っとした』
という発言を受けて、編集によるものでしょうが
『頭がボ~っとなる=低血糖』
と胆略的に結論付けていて違和感を感じました。
自分も糖尿病なので血糖測定してます。
炭水化物制限(糖質制限)してますが、始めた当初は頭がボ~っとしましたが
血糖値は低血糖ではありませんでした。
予め、江部先生の書籍で炭水化物(糖質)を制限すると頭がボ~っとしたりイライラしたりするが
喫煙者が禁煙した時に生じる禁断症状と同じである
という主旨の事が書いていたので何ともありませんでした。
(元々喫煙してましたし)
いまでも、炭水化物制限してますが何ともありません。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
低血糖に対する誤解、結構な頻度でありそうですね。私も考察してみたいと思います。
炭水化物を抜くと低血糖?
今までの経験では、糖質制限食実践で低血糖が頻繁になったというような
人はありません。
ただ個人差はありますが、米国で炭水化物中毒と呼ばれているような範疇の方々は
糖質制限食開始後の1~2ヶ月が、そうでない人に比べて大変つらいということはあります。
Re: 炭水化物を抜くと低血糖?
情報を頂き有難うございます.
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