糖質量を推定しても意味がない
2014/10/27 00:01:00 |
普段の診療より |
コメント:14件
「先生,なかなか太りませんわ」
そのように言われる80代男性,一過性脳虚血発作を起こした後のフォローアップを私がしているやせ型の患者さんがいました.
この方は頸椎症,C型肝炎,難聴,肺結核,などとこれまでに様々な病気を患っておられます.
一方でこの患者さん,糖尿病があります.
糖尿病があるという時点で,特殊な状況を除いて糖質を過剰に摂取しているということがほぼ明らかです.
やせ型の糖尿病の場合も糖質過剰摂取による血糖値乱高下が起こり,それにより代謝障害起こします.
太るためにはまずその代謝障害を解除する必要があると思います.
そこで私は,いつものように患者さんに糖質制限を勧める事にしました. ただ,実際に料理を作っているのは奥さんなので,奥さんの方に食事の事をお尋ねしてみました.
たがしゅう「ごはんは茶碗にどのくらいよそっていますか?」
奥さん「半分くらい.いや半分よりも少ないくらいです.もともとあんまり食べられないんです」
「茶碗に半分」という言葉はちょっとトリッキーなところがありまして,
自分が思っている「茶碗に半分」と患者さんが思う「茶碗に半分」は往々にして食い違っている事が多いので注意が必要です.
そうした誤解がないように私は茶碗に1杯の画像を見せて,

「この画像の半分くらいですか?」と念を押して確認しますが,
やはりこの患者さんは「その半分くらいです.そんなにも食べられません.」と答えます.
それなら本当にそうなのだろうと信じるしかないのでしょうけれど,
その後,「糖尿病がある以上は,それでも身体にとって多すぎる糖質が入っている事になります.その量をさらに減らして,その代わりおかずを増やすという事はできますか?」と問うと,
「むかしニンゲンですから,ちょっとできません.ごはん大好きなんです.」と答えられました.
一方でごはんは減らそうとしている,でも一方でごはんは大好き.
またも中毒の構造を呈しています.タバコを減らそうとしても,タバコを止められない人と同様です.
今回新たに学んだのは,
「たとえ画像を見せてほぼ正確に糖質の摂取量を推定したとしても,そんな事は糖質制限の受け入れに全く関係しない」ということです.
本当に茶碗半分であろうとなかろうと,この患者さんは米にハマり,米をやめる事ができない人なのです.
そんな事もあって,最近は患者さんがおそらく糖質の摂取量を推定するのはほぼ諦めモードです.
とにかく糖質の害を説き,体調を崩しているという人には今よりも少しでも糖質の量を減らすよう呼びかける.
例え相手が極小の糖質摂取量を申告したとしてもです.
本人が極小と思っていても,実際にはそうでないかもしれませんし,
本当に極小だとしても,体調を崩している以上はその糖質量が身体に悪影響を与えている可能性を否定できないからです.
どちらにしても行うべきマネジメントに変わりはありません.
患者さんの事を信用しないわけではありませんが,
勘違いという事は誰だってあると思います.
糖質摂取量が多かろうが,少なかろうが,
大事な事は「変われる脳を持っているかどうか」だと思います.
糖質の摂取量が少ないと言う人であっても,
その人が体調不良を抱えている患者さんである以上は,
私は常に糖質制限の選択肢を考慮します.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
ご参考までに
先日はありがとうございました。
ところで、患者さんへ指導する際、『はかり』の使用を提案してみるのは如何でしょう。バネ計りとかお持ちかもしれません。
まずは普段どの位の量を食べているか正確に把握して頂く事が出来ます。
そして、お茶碗の大きさを一回り小さくして頂くと、量を減らした時に視覚的にも抵抗感が少しは減るのでは…。
或いは、我が家ではこんにゃく米をこっそり混ぜ込んでますが全く気が付いていない様子、これで少しはお米の量を減らせます。
写真をみて
一方で、そうは思わない人もいるようですね
可能性として
本当は信じていないという可能性も
ありますよね。
あと、
好きな物を食べたいということが、
人生の最終目的に近いという方なら
糖質制限に限らず、食事をどうこうしようとは思わないかも知れませんね。
No title
ただ、本当にそれだけのご飯しか食べていないというのであれば、せめて他のおかずやおやつ、飲み物で、砂糖等を摂ることを止めてもらえれば。。。
母の入所する施設では、先日様子を伺いましたが、相変わらず米を食べさせ、甘いおやつも与えてました。。。
本人が希望するからとの一点張りなのですが、本人に向かって「ご飯食べますか?」と聞いて「食べたい」と応えさせている、誘導しているだけなのは想像できます。
白砂糖は食品ではなく危険な食品添加物
糖質制限を知った今では、ここで言われている殆どのことを違和感なく受け入れることができます。
中でも「砂糖は細胞をジャム化する」には衝撃を受ける人が多いのではないでしょうか?
ですが、この中で、代替甘味料について述べられていることに対しては何とも分からず、たがしゅう先生のお考えを聞かせて頂けると嬉しいです。
ちなみに自分はほぼ毎日、コーラ0を飲んでいますし、糖質0系の食品も普通に食べています。
ここ半年は体重の増減無いのが何とももどかしいところですが。。。(^^;
どの程度の糖質制限を勧めればよいか
糖質制限は主食を抜くという所が最も注目されますが、その他の菓子や清涼飲料を摂取しなくなるという所も大きいと思います。
我々のようにスーパー糖質制限で日々過ごしていると砂糖を抜くだけでは生ぬるく感じますが
北里研究所の山田先生が仰るような「緩やかな糖質制限」程度の糖質量はクリアできるような気がします。
まぁ、それで糖質依存から抜けられるとは到底思えないのが問題ですが、まずやってもらうのなら仕方ないのかとも思います。
山田先生はそういう理由があって緩やかな糖質制限を勧めているのかなと思ったりしますが・・・
Re: ご参考までに
コメント頂き有難うございます.
> ところで、患者さんへ指導する際、『はかり』の使用を提案してみるのは如何でしょう。
なるほど.一つのアイデアですね.
レコーディングダイエットもそうですが,今の自分の状態を客観的にするいう事は大事ですよね.
Re: 写真をみて
コメント頂き有難うございます.
> この写真をみると、私は糖質でできた『白い巨塔』を連想します。
まさにそうですね.巨塔ができる程の量の糖質を摂ってしまうのはやはりダメだと思います.
Re: 可能性として
コメント頂き有難うございます.
> 出来る出来ない以前に、
> 本当は信じていないという可能性も
> ありますよね。
そうなのですよ.
そういう人にはどういう工夫をしても声が届かないという辛さがあります.
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
> 食の貧しい戦中戦後を生きてきたお年寄りには、お米を食べれないことは、当時の辛い記憶を思い出すことに繋がるのかもしれませんね。。。
そうかもしれません.
「米食べない代わりにおかずを食べるという事でひもじい思いはしない」という事を強調して説明するのですが,そういう工夫をしても結局やってもらえない事が多いです.
Re: 白砂糖は食品ではなく危険な食品添加物
御質問頂き有難うございます.
> 代替甘味料について述べられていることに対しては何とも分からず、たがしゅう先生のお考えを聞かせて頂けると嬉しいです。
代替甘味料に関して私は,「どうしてもの時に留めておくべき食品」という考えです.
2014年7月25日(金)の本ブログ記事
「人工甘味料の落とし穴」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-345.html
も御参照下さい.
とは言いながらも,私も時々ゼロカロリーゼリーとか食べたりしています(笑).
Re: どの程度の糖質制限を勧めればよいか
コメント頂き有難うございます.
緩やかな糖質制限も健康への第一歩で,良いと思います.
ただそこを最終目標と定めるかどうかという点においては,私はあくまで通過点とすべきという考えです.
2013年12月29日(日)の本ブログ記事
「許容と雲泥では雲泥の差」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-135.html
も御参照下さい.
ご提案
ありがとうございます。
最近話題の高額プライベートジム。
指導する食事の内容も糖質を控えるもののようですし、
それに担当トレーナーに毎回、携帯で撮った食事の写真を送っているというところが、なるほどと思いました。
患者さんに次回来院されるまでの食事を写真で撮ってもらうというのはいかがでしょうか。
更新楽しみにしています。ではでは。
Re: ご提案
コメント頂き有難うございます。
> 患者さんに次回来院されるまでの食事を写真で撮ってもらうというのはいかがでしょうか。
その案は、実は今までに糖質制限がうまくいかない何人かの患者さんに実際に勧めさせて頂いた事があるのですが、
今のところなぜか誰も写真を撮ってこられません。面倒くさいのか、知られたくない何かがあるのか、理由はよくわかりませんが…。
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