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本来の糖尿病治療方針の説明

category - ふと思った事
2013/ 10/ 05
                 
昨日の記事の続きです。

糖尿病はそれ単独では無症状です.

しかし放置していると血管を傷つけ全身の臓器を痛めて合併症を起こします.

しかし(空腹時)血糖値が低いことも,HbA1cが下がっていることも,それだけでは合併症を起こさないことを担保できていません.なぜなら,血管を傷つける最大の要因は平均血糖変動幅の増大,食後高血糖だからです.

空腹時血糖が低くても,その後糖質を取って血糖値が上がっていれば,

あるいはHbA1cが下がっていても,平均の値が優秀でも,低血糖と高血糖を繰り返しているような状態では,

医師に「うまく行っている」と言われたとしても,決してうまく行っていない,合併症の危険からは免れていないのです.
            

真に「糖尿病の治療がうまく行っている」の意味は,平均血糖変動幅の増大,食後高血糖を避けている状態,すなわち毎食後の血糖値の上昇が最小限で済んでいる状態のことを言うのです.

従って医師が患者さんに尋ねるべきは,血糖値を挙げる唯一の栄養素,「糖質」の摂取量に尽きるのです.

もっと言えばSU剤を使って血糖値を下げることは,決して「うまく行っている」とは言えません.なぜならインスリンを膵臓から無理矢理出させるので膵臓に負担をかけますし,インスリンを使って血糖値を下げるので高インスリン血症にもなります.これで血糖値が下がるのはあくまで応急処置です.長く続けることは身体にとってよくありません.



それでは医師はどう説明し指導するのがよいのでしょうか?

私は以下のことを指導の原則としています.

『まず「三大栄養素のうち血糖値を上げるのは糖質のみである」という事実を確実に伝えること,

次になぜ自分の血糖値が上がっているのかを振り返らせること,また主食にいかに多くの糖質が含まれているのかということを認識させること,

その上で血糖の変動を避けるために糖質の摂取を最小限に抑える必要があること,できる人は運動も併用すること,

薬を使うのはそれらがどうしてもできない場合に限ること,しかし薬で血糖値を下げるのは自然ではないこと,血糖値の波を完全に抑えることはできないし,インスリンそのものに害もあるということを確実に伝えること.

それでも薬を使う場合には低血糖にくれぐれも注意すること,特に早朝の起き掛けは最も血糖値が下がる時間帯なので十分に注意すること,特に低血糖の症状は人それぞれ異なりわかりにくい事も多いので気を付けること,冷や汗,倦怠感,動悸だけでなくイライラ,興奮などつかみどころのない症状も低血糖症状であることがあるということを知ること.

そして糖質制限食/ケトン食であればそうした低血糖の危険はまずないということ.』

このように説明を行います.

そして私は血糖値とHbA1cの値だけを見て,糖尿病治療の良し悪しを判断しません.必ずいろいろな話を聞いて判断します(体のだるさがとれていないか,眠りが深くなっていないか,顔色がよくなっていないか,口の渇きがとれていないか,など).



糖尿病は非常に患者数の多い病気です.

一人ひとり丁寧に説明などしていたら時間が足りないだろうと糖尿病診療に当たる医師から批判を受けるかもしれません.

しかし「時間が足りない」と「しなくてもよい」とは決して同義ではありません.

時間が足りなくてもしなければならないことはしなければならないのです.

足りないのであれば,足りない時間でいかに効率的に説明していくかということを考えなければならないと思います.

一方で患者さんの方もこの事はしっかりと踏まえておかないといけません.

医師の言うことを聞いていればすべてうまくいくと考えるのは幻想です.変な言い方ですが,そのように考えた時点で負けだと思ってください.

情報を共有しあい,病気の治癒に向け一緒に歩んでいくというのが本来の医師患者関係だと私は思います.


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

ありがた迷惑なアドバイスが多いですね
たがしゅう先生、こんにちは。
先日は低糖質のジャムを食べているつもりが普通のジャムを食べてしまって思ったよりも高い食後血糖値になってしまいました(それでも150くらいでしたが(^_^;))

糖尿病って病気の名前は広く知られていますが誤った認識を持っている人(医学関係者以外ですが)いて、色々と余計なアドバイスをしてくれます。

ケース1
私が炭水化物を制限しているというと当時(今年の春頃で日本糖尿病学会が糖質制限に対して否定的な見解を出した頃だと思います)の日経新聞の切り抜きを私にみせて炭水化物を制限すると健康に良くないしそれは止めたほうがいい

というのですね。炭水化物の制限を止めたら血糖値が上がって食後高血糖→血管内皮ストレスということが確実に起こるのでそれを受け入れることはできないんですよね~

とやんわりというとそれ以上のアドバイスはありませんでした(^_^;)

ケース2
自分の知り合いがもう何十年もインスリン注射を打っていて、先日も入院したけど病院の食事はご飯は丼に8分目くらい食べされられている。インスリン注射離脱なんて考えないで炭水化物を摂って新スリン注射を続けたほうがいい

という内容でした。この人はインスリン注射は一度したら一生涯するものだと思っていました。かなり自信満々にアドバイスするので医者でもないこの人が何を根拠にこんなことをいうのかと思って華麗にスルーしました。

こういうシーンは私だけではなく他の方もけっこうあるかもしれませんね。
Re: ありがた迷惑なアドバイスが多いですね
クロワッサンさん

 いつもコメントを頂き本当に有難うございます.

> ケース1
> 日経新聞の切り抜きを私にみせて炭水化物を制限すると健康に良くないしそれは止めたほうがいい

> ケース2
> この人はインスリン注射は一度したら一生涯するものだと思っていました。


 いずれのケースでも思考停止してしまっていますね.
 「なぜそうなのか」ということに関して自分の頭で考えていないのです.

 かくいう私も偉そうに言っていますが,2年前まではカロリー制限を何の疑いもなく指導していましたので,あまり人の事は言えません.

 自分で考える力をつけるには,基礎となる揺らがない土台(科学)をしっかり学ぶべきですね.