なぜ何にでも効くのか
2014/10/09 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:10件
「何でもかんでも糖質制限が効く」
こういうもの言いに医療関係者ほど懐疑的になると思います.
しかし現代医療の中でも「何でもかんでも」使われている万能薬的な位置づけの薬があります.
その薬とは「ステロイド」です.実際,数多くの難病にステロイドが用いられています.
例を挙げれば,気管支喘息,アトピー性皮膚炎,IgA腎症,関節リウマチ,潰瘍性大腸炎,重症筋無力症,尋常性天疱瘡,慢性炎症性脱髄性多発神経炎・・・
それはもうありとあらゆる領域の病気がステロイドの適応疾患です.
これだけステロイドが幅広く効くという事実は,一体何を物語っているのでしょうか. ステロイドはもともと自分の身体でコレステロールを材料に作られるストレスホルモンであり,
これを放出する事によって,身体のストレス状態から速やかに復帰できるように,普段から自律神経を介してバランスがとられています.
このステロイドホルモンが十分に使えなくなり,自力でストレス状態から脱する事ができなくなった状態がいわゆる「難病」ではないかと思うのです.
その表現型に個人差があり,ある人は関節が痛み,ある人は神経が痛み,またある人は腎臓や皮膚が悪くなったりしているというだけだと私は思うのです.
だからこそ,それらの病態に万遍なくステロイドが効くというわけです.
しかし,そういう足りなくなったものを補うという発想だけではうまく行かないということは,
ステロイド診療に携わる全ての医師が経験的に知るところだと思います.
即ち,どうしても使い過ぎると副作用を生じてしまうのです.
酸化ストレスにしても,ストレスホルモンにしても,一過性にそうしたストレスにさらされる事はいわば人生の試練です.
しかし常時そうしたストレスにさらされ続けると人間の身体に破綻をきたす,という事を物語っているように思います.
ここで重要になってくるのが,足りないものを補うというプラスの発想だけではなく,
余剰なものを取り払うというマイナスの発想です.そもそも何でそんなにステロイドを出さなければならないのでしょうか.
それには糖質摂取が深く関わっています.
まず糖質摂取は人為的なストレスです.
本来ステロイドホルモンが働いて血糖値を上昇させ,戦闘モードとなって困難に立ち向かおうとするべきところを,
何らストレスを感じる状況でない時に糖質を摂取する事で同じようなモードに強制切り替えとなります.
それを元に戻すために大量の追加インスリンが分泌されてしまいます.
インスリンが分泌されれば,脂質は貯蓄モードとなるためコレステロールを組織で利用しにくくなり,ひいてはステロイドホルモンを作りにくくなります.
さらにはインスリンによって血糖が下がりすぎないように,その後ストレスホルモンが無駄に分泌されたり,それが間に合わない場合,機能性低血糖症を起こしたりします.
こういう事を繰り返す事によって,副腎が疲労していくのではないかと私は考えています.
つまり糖質摂取は間接的に副腎を疲弊させ,本来出るべき自前のステロイドを徐々に出させなくする行為ではないかと思うのです.
だからこの糖質摂取を控えること,すなわち糖質制限をすることによって
自前のステロイドの分泌を邪魔をする事がなくなり,
出るべき時にしかるべきステロイドが出せるようにさせる最大のコツではないかと思うわけです.
ステロイドが万病に効くという話と,糖質制限があらゆる病気に効くという話は,
まるで一本の線でつながっているかのように私には思えるわけです.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
No title
糖質制限によってインスリンの出番が減ることについて論じられているのは多く目にしますが
ステロイドについても同様だろうという話は初めてみました!
確かにそうですね
膠原病の原因を特定しました、と言える日が来ますでしょうか
シーベリー
No title
自身はスーパー糖質制限を実践、これが本来のヒトの食事と
理解していますが、なぜそれが身体に良いのか、納得しきれて
いないところもありました(体調はすこぶる良いのですが)。
しかし本日の記事を読み、すとんと腑に落ちた思いがします。
ラップ、ラップ
私は幸運なことに、ここ何年も湿潤療法の御世話になるような怪我をしたことが無かったのですが、
先日、アマゾンで鳥谷部先生の褥創治療の本が40円で売ってたので速攻買いました。
専門用語もスマホで検索すれば文書の意味は分かります。
内容は至ってシンプルで
要はラップを張るだけです。
ヤヤコシイ素材でなくて食用ラップです。
殆ど全てラップです。
結局、ラップ。
ラップ、ラップ、ラップ・・・
あとは浸出液が多い場合、ドレナージに気を使うことと、
創を圧迫しないことぐらいですかね?
読み進めて行くうちに大きな疑問が湧いてきます。
私は素人で鳥谷部先生の本しか読んだことが無いので偉そうなことは言えませんが、
医者が今までこんな簡単なことを分からなかったなんて信じられない。
いや有り得ない。
こんな酷い創が本当にラップだけで大丈夫なのか?
などなどですね。
食事療法にしても数々のマニア向けヤヤコシイ食事療法がありますが、
マニアにとっては今までより簡単になることが許せないのかも知れませんよ。
シンプルな方程式を美しいと感じる人もいれば、とにかく色々集めたいというコレクターもいますしね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 膠原病の原因を特定しました、と言える日が来ますでしょうか
私は膠原病の原因は制御しきれなくなった酸化ストレスに端を発していると考えています。エビデンスとは言えない個人的見解レベルの話ではありますが。
Re: シーベリー
御質問頂き有難うございます。
> シーベリーオイルは多くのパルミトレイン酸を含み強い抗酸化作用のあるオイルのようです。アトピーが治るでしょうか。
アトピーは外と内から治す必要があると私は思っています。
そのオイルは有効との事ですが、皮膚だけ見ていては症状を軽くすることはできても、根治は目指せません。
栄養にも配慮しない限りは、おそらくぶり返すのではないかと愚考します。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
本日の記事が「糖質制限が万病に効く」という文言を怪しむ人達へのアンチテーゼになれば幸いです。
Re: ラップ、ラップ
コメント頂き有難うございます。
私はシンプルイズベストだと思います。
高みを目指せばキリがありませんが、最大多数へ最大限の効果をもたらすにはどうしてもシンプルさが鍵になってくると思います。
そこに価値を見出せない人は本質を見失っている可能性があると思います。
No title
「糖質を無自覚に多量に摂取している今の普通の食生活では、ボディーブローのように身体のあちこちを痛めつけ続ける」ということかもしれませんね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 「何にでも糖質制限が効く」というのは、
> 「糖質を無自覚に多量に摂取している今の普通の食生活では、ボディーブローのように身体のあちこちを痛めつけ続ける」ということかもしれませんね。
的を射ていますね。そういう事だと思います。
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