人生を変えるプレゼン
2014/10/01 00:01:00 |
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コメント:10件
「頭の良い人が教え方がうまいとは限らない」
時折そのように感じる事があります。
古くは高校時代の数学の先生がそうでした。
とても頭がよいのは分かるのだけれど、その先生の説明を理解しきれない私がいました。
また医師になった今でも時々いろんな講演会に参加しますが、
難しげなスライドをたくさん披露されるものの、雑多な最新の医学情報の羅列に終始し、
結局何が言いたかったのかまとまりが悪い、と思う事も多々あります。
しかし「本当に頭のよい人は教え方もうまい」と私は思っています。 先日、日本糖質制限医療推進協会の東京講演会に参加してきました。
理事長の江部先生と、コレステロール革命の本を書かれた東海大学名誉教授の大櫛陽一先生のダブル講演でした。
江部先生の御講演は個人的には通算6,7回聴講しているので、
流石に内容はかなりの部分頭に入っていますが、やはりよくまとまったプレゼンテーションです。
世の中に様々な糖質制限流派のようなものがありますが、いろいろ比較して初心者の方は江部先生のお話から入るのが一番わかりやすいと思います。
そして今回私は大櫛先生の御講演を初めて聞きました。
著書は数冊すでに読んでいて、書かれている内容がとてもわかりやすかったので、
どんなプレゼンテーションをされるのか、個人的に非常に注目しておりましたが、
タイトルからして、きわめて分かりやすい内容でした。
題して『脂肪とコレステロールはあなたの体にいいですよ』
メッセージ性の強いこのタイトルだけでも、大櫛先生のおっしゃりたい事がよく伝わってくるのではないでしょうか。
私自身、コレステロールの重要性はわかっていたつもりでしたし、スタチンは極力処方しない派の医師でしたが、
今回大櫛先生のお話を聞いて、私が考えていた以上にコレステロールは重要で、スタチンがろくでもない薬だという事を学びました。
そしてその事を非常にわかりやすく教えて頂いたように思います。
よく糖質制限仲間の方々からもコレステロールや中性脂肪にまつわっては質問を受ける事が多々ありますが、時に悩ましい質問が来る事があります。
しかし、そのほとんどの心配が杞憂であるとわかり、これからはさらに自信を持って説明できそうです。
いろいろなポイントがありましたが、講演の中で私が特に大事だと感じたことは大きく2点あります。
一つはスタチンがケトン体産生を抑制する、ということです。
この事はは糖質制限を患者さんに勧める時に注意が必要です。
即ち、スタチンを飲みながら糖質制限をしてしまうと、ケトン体産生が抑制されるためケトン体からのエネルギーが使えず、なおかつ糖質も制限しているのでエネルギー不足に陥る可能性があります。
しかもスタチンには横紋筋融解症や糖尿病のリスクを高めるなど、副作用が数多くある事が知られています。
唯一スタチンの利点は炎症を抑える、免疫抑制剤的な作用があるということですが、
一般的な免疫抑制剤に比べて免疫抑制の作用が弱く、なおかつ副作用が多いときたものです。
いわばスタチンは「出来損ないの免疫抑制剤」です。
糖質制限をしながらの他院でのSU剤内服は極力止めるするよう呼びかけてはいましたが、
スタチンに関しては正直多少許容していたところがありました。
でも今回のお話を聞いて、スタチンに有益性が少なく、副作用が多いという事をしっかりと伝え、
可能な限り積極的減薬に取り組んでいこうという気持ちを新たにした次第です。
そしてもう一つの大事なことは、脂肪ばかり食べても血液中では遊離脂肪酸にして10gという少量で飽和するため、それ以上脂肪を食べても身体に取り込まれない、ということ、
しかし、ひとたびインスリンが出てしまうと、グルコースと遊離脂肪酸という二つの経路で脂肪を蓄える方向へ代謝がシフトしてしまうということです。
インスリンが最大かつ最強の肥満のメカニズムだということですね。
逆に言えば、肉ばっかり食べていても糖質さえ制限していれば脂肪は遊離脂肪酸にして10g以上は吸収されないということなので、
そういう食事を行っている人にとっては大変な安心材料になることでしょう。
このように、講演で聞いた内容が、
そのまま明日からの診療に活かせるという、
すぐれたメッセージ性を持った、わかりやすいプレゼンテーションだったと思います。
「ある人のプレゼンが別の人の人生を変える」
よい指導者、よいプレゼンとはかくあるべし、と私は思います。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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もったいない
どんだけ重要なんだって話ですよね。
>そしてもう一つの大事なことは、脂肪ばかり食べても血液中では遊離脂肪酸にして10gという少量で飽和するため、それ以上脂肪を食べても身体に取り込まれない、ということ、
>逆に言えば、肉ばっかり食べていても糖質さえ制限していれば脂肪は遊離脂肪酸にして10g以上は吸収されないということ
これは、脂肪を大量に摂取しても無駄ということですか?
せっかく摂取した脂肪が吸収されないなんでもったいないですよね。
値段も高いのに・・・。
例えばケトン食は脂肪が全体の70%ぐらいになるんですよね。
エネルギーとしても使用されないんでしょうか?
Re: もったいない
御質問頂き有難うございます。
> 脂肪を大量に摂取しても無駄ということですか?
> せっかく摂取した脂肪が吸収されないなんでもったいないですよね。
純粋に脂肪だけなら10gで飽和してしまうという事です。もったいないと言えばそうかもしれませんが、それ以上身体が欲していないという事であり、そうやって恒常性を維持しているわけです。
でもそこにインスリンが分泌されるような事が起これば、グルコースと遊離脂肪酸の二つの経路で中性脂肪に変換される事でさらに脂肪は蓄えられます。
タンパク質摂取は通常血糖は上がりませんが、インスリンとグルカゴンは同時分泌されます。肉ばかりでやせないという人はこのインスリン分泌がネックになっているのかもしれません。
有難うございます
脂肪についてはもっと勉強しないといけませんね。
今後の栄養学とかがどうなっていくのか注目です。
以前は、EPAのサプリを摂取したり、えごま油を摂ってみたりもしましたが、正直、何らかの効果を実感することは出来ませんでした。
たがしゅう先生のブログでもオメガ3もオメガ6も、それ程変わらないことが分かってきたというようなことが書いてありましたよね。
できれば高価なサプリメントや、特殊な脂などを購入しないで健康を維持できれば有難いと思います。
追伸(独り言)
エパデールを処方してもらっていて、コレステロールが悪いって主張している、糖質制限推進派の人って何なんでしょうかね?
糖質制限だけではコレステロール値や中性脂肪値をコントロールできないんでしょうか?
コレステロールが健康に良いって思ってる人で、コレステロール値が高く、サプリとしてエパデールとか摂取している人とかいますけどね。
糖質制限前提
糖質制限をしていると周囲からコレステロールと脂肪について危惧されることは日常茶飯事ですが、しっかりと説明できる気がします。
私はそれを指摘されるとよく「糖質制限してれば平気なんだよ」という、よくよく考えればかなり怪しい解説(?)をしていたので、非常にためになります。
ちゃんと説明できないと糖質制限を広められませんね。
ところでこんな記事を見つけたのですが
http://www.jafra.gr.jp/souda.html
抗酸化というよりも炎症を抑制することが重要ではないか?という内容です。
ポリアミンが炎症を抑制、という事でアレルギーについても話は広がっていて、興味深いです。
糖質制限やmecでもアレルギー改善という事は耳にしますが、このあたりとも関係あるかな?と感じました。
No title
朝に数十グラムサラダオイルを飲んでたのは無駄だったのですね…
夏井先生も疑義を呈されていましたが、
食品の成分分析上の値と、実際の吸収量は思っていた以上に乖離しているのかも知れませんね。
人類の必要食事摂取量は従来よりもっと少ないのかもしれないと思いました。
Re: 有難うございます
コメント頂き有難うございます。
糖質制限を極めれば極めるほど、現代医療と離れる方向へ進みます。
この点をどう捉えるかについては同じ糖質制限推進派医師の中でも考え方は大きく異なります。
私の場合、大きくは「糖質制限+必要最小限の医療」という考え方ですが、
たとえ推進派医師であっても、医師を盲信するのは禁物です。おかしいと感じる自分の感覚を大事で、そこにこだわるべきだと私は思います。
Re: 糖質制限前提
コメント頂き有難うございます。
> 抗酸化というよりも炎症を抑制することが重要ではないか?という内容です。
> ポリアミンが炎症を抑制、という事でアレルギーについても話は広がっていて、興味深いです。
こういう研究は素晴らしいです。
しかし一方で枝葉末節にとらわれすぎてはいけないとも思います。
一つ一つメカニズムを解き明かしていく作業自体は大事ですが、例えばポリアミン以外にも様々な物質が人体には無数にあると思うのです。
情報を参考にしながらも、細部にとらわれすぎず、大局を見失わないようにしたいです。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
> 人類の必要食事摂取量は従来よりもっと少ないのかもしれないと思いました。
私もそう思います。
もっと言えば、身体のシステムがきちんと働いていれば、
かなり多い量でも、かなり少ない量でも、うまく調節して適応するように対応できるのではないかと思います。
「Do No Harm(害をなすことなかれ)」を大事にしたいです。
私も参加しました。
講演会ではコレステロール摂取過多であっても肝臓が合成を休止するという話が印象的でした。
両先生にはパソコン上のテキストではうかがい知れない事もジョークを交えながら、分かりやすく説明していただきました。勝手ながら遠路はるばる行って良かったです。
何でこの講演会を知りましたかのアンケート欄にはこちらのブログ名を記入させていただきました。
Re: 私も参加しました。
コメント頂き有難うございます。
アローンさんも来られていたのですね。
書籍やブログの印象と実際に会って受ける印象は大分違いますよね。両先生とも関西弁でフランクに語られる様子が印象的でした。
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