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減薬に応じない医師

category - 普段の診療より
2014/ 09/ 13
                 
薬に副作用はつきものです。

また薬と毒は紙一重で、いずれも身体に何かしらの影響を及ぼす物質ですが、

その影響が我々にとって都合がいい場合には「薬」と、都合が悪い場合には「毒」と呼んでいるだけの違いでしかありません。

今の医療は薬絶対主義とでも言うべき状況ですが、我々医師は薬であると同時に「毒」を取り扱っているという認識を持つことが必要だと思います。

ところが、世の中にはそんな事は到底意識せず、漫然と薬を使い続ける医師が極めて多いのです。

多くの医師が「それは副作用かもしれない」と思うのは、いつも重大な何かが起こった後です。
            

実際には、薬を使っている途中で、重大な副作用の一歩手前の軽い副作用、「なんとなく体調が悪い」レベルの副作用は多々起こっているはずなのです。

しかし、多くの医師はそれに気がつきません。なぜでしょうか?

それは医師は所詮他人だからです。微妙な副作用を感知できるのは本人より他にいません。

だからある目的を持って飲み始めた薬が、その目的が達成できない、もしくはデメリットの方が目立ち始めた場合は、その時点でその投薬は速やかに見直されるべきなのです。

かく言う私も所詮他人ですので、おそらく軽い副作用の多くは見逃してしまっていることでしょう。

それでも、できるだけ未然にトラブルを防ぐべく、糖質制限を通じて減薬に努めるよう意識しています。

しかし、世間には副作用に対してあまりにも無頓着な医師がいるものです。



とある80代女性で、脳梗塞後のフォローアップで私の外来に通院されている方がいます。

この方に私は糖質制限を指導し、理解を示して頂いてもう2年くらいの付き合いになります。糖尿病と併せてコントロール良好です。

不安の強い方でもあり、こまめに私の所を受診され様々な相談をされますが、

高血圧や糖尿病などの薬は別の開業医に処方してもらっている状況です。

で、ある時その患者さんが飲んでいるベンゾジアゼピン系の抗不安薬を、

精神的に落ち着いてきた所で、その中毒性について説明するとともに、減薬について提案致しました。

その話を了解され、次の時にその抗不安薬を処方している開業医へその事を相談したところ、

意外な返事を返されたそうです。

中毒になるのは20代とかの若者の話だ、あんたのような年のもんはそんな事は気にせんでいい。しっかり薬飲んで寝た方がいい

これがめちゃくちゃな言い分であることは、別に医療の専門家じゃなくても明らかではないでしょうか。

残念ながらこんな医者はそんなに珍しくありません。医者ってこんなものなのです。

また別の時にこの患者さんが同じ開業医へ頻尿について相談したところ、

出された排尿障害改善薬を何ヶ月飲んでも改善せず、別の薬に変えて欲しいと相談を投げかけた患者さんに、

その開業医はこう言ってのけたそうです。

その薬は良い薬だから続けて飲んでおきなさい

意味不明です。効かない薬の何が良い薬なのでしょうか。

私の感覚で言えば、何ヶ月も投与して効かない薬は直ちに中止すべきです。

この開業医は患者さんと真剣に向き合っていません。

邪推になりますが、症状が改善していないのは気のせいだとか思っているのかもしれませんし、もしかしたらその薬しか治療の引き出しがないのかもしれません。

ましてや漫然と効かない薬を投与し続けることによる副作用のリスクなど、夢にも考えていないと想像します。

この開業医にかかっている以上、減薬は夢のまた夢と考えざるを得ませんでした。

どうしたらいいかと尋ねる患者さんに私は、

「一番はあなたがどうしたいかだ」と話しました。

その上で完全にかかりつけ医を私一人に一本化する選択肢も提示しました。

しかし患者さんは、普段はそれでいいけれど、風邪など引いた時にその開業医へ受診しにくくなる事を心配され、

結局今まで通り、我慢して両方へ通院するという事になりました。



はたして、こういう場合、どうするのが一番いいのでしょう?

長期的には減薬に無理解な医師を減らすのがいいというのは言うまでもありませんが、

短期的な良い解決策が思い浮かびません。

地道な啓蒙活動しかないでしょうか。

現場では、本当にいろいろな事が起こります。


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

No title
 いつもありがとうございます。今回の先生の記事読ませていただいて「あはは^^」と笑ってしまいました。私のかかりつけのお医者さんも「効かない?えっ・・そんなことはない・・続けて服用してください」ってしょっちゅう言います。今までどれだけ効かない薬を服用したかわかりません。 副作用についても「記載されてる症状があるんですけど」なんて言っても「それくらいなら大丈夫。気にせず続けて」は決まり文句です。笑ってしまうほど一般的?恐ろしいことです。先生、日常スラッと流してしまっていることをいつも気がつかせていただいて・・感謝しております。
Re: No title
あーちゃん さん

 コメント頂き有難うございます.

> 私のかかりつけのお医者さんも「効かない?えっ・・そんなことはない・・続けて服用してください」ってしょっちゅう言います。

 いかに医者が患者の事がわかっていないか,ということですよね.

 医者も所詮は他人,他人の痛みは痛くもかゆくもないのです.だからそういう言葉が出るのだと思います.

 そして医師はプライドが高い人間が多いです.「それは自分が出した薬の副作用かもしれない」と思えるかどうかが,良い医師への道の第一歩となるのではないかと思っています.
主治医を替えればいい。
おはようございます。
美容院だって、見たいテレビ番組だって、読みたい本だって、病院だって、選ぶのはこっちだって、思います。
もし私のおばあちゃんなら、近所の評判なんかを聴いてから「別のB医院に主治医を替えたら」とすすめると思います。初診には、ついて行きますね。
薬は化学物質で、食品添加物以上に身体に悪い。口から入り身体に負担がかかるのは必須なのだから、慎重に考えたいです。
Re: 主治医を替えればいい。
エリス さん

 コメント頂き有難うございます.

 御意見ごもっともですが,通院のしやすさなど地理的な事情もあって,元のかかりつけ医に見放される怖さあら決断に踏み切れないようです.

 悲しいかな,こういうのが今の医療の実情だと思います.
コウノメソッドとベンゾジアゼピン
コウノメソッドでは、ベンゾジアゼピンを支持しています

ドクターコウノの認知症ブログ(2014年1月13日)のQ&A参照
http://dr-kono.blogzine.jp/ninchi/2014/01/2014113_1d40.html

1/20、1/27のblogにもベンゾの記載あり

河野Drの症例集を読んでみましたが、認知症老人にいきなりベンザリン5mgを使ったりしています。転倒riskが心配です
本当ですか?
例えば、脂質異常症などは、
医者としては薬を処方する以外に何も出来ないと言うのは本当ですか?
スタチン系の薬ができるまでは血中のコレステロール値を下げる術がなかったとも聞きます。

医者は食事・栄養のプロではありませんから、減薬するということは自分の守備範囲から離れていくということですかね?
No title
たがしゅう先生、こんにちは。

私もこれまでの人生で、散々同じような体験をしてきました。
心の奥では絶対おかしいとわかっていても、患者というのは「自分が間違っているのではないか」と自分を責めがちなものだと思います。
お医者様であるたがしゅう先生がこのような説明をしてくださると、やっぱり自分の感覚はおかしくないのだと胸の晴れるような思いがします。

私は、根本治療ではなく、対症療法の薬で、依存性や副作用が確認されている薬を指示され「症状は我慢できるので、いりません」と言ったら、カルテに「薬恐怖症」と書かれて、さらに結局その薬を処方されました。
使いませんでしたが、私のお財布にも、国の医療費にも、無駄なことだと思います。
受診後、なんだか落ち込んで、ぐったりしてしまいました。

これからも先生の糖質制限や医療、断食のお話を楽しみにしています。
Re: コウノメソッドとベンゾジアゼピン
精神科医師A 先生

 情報を頂き有難うございます.

> コウノメソッドでは、ベンゾジアゼピンを支持しています
> 河野Drの症例集を読んでみましたが、認知症老人にいきなりベンザリン5mgを使ったりしています。転倒riskが心配です


 確かに,コウノメソッドではベンゾジアゼピンに対して好意的な見方のようですね.
 この点に関しては私は不同意です.

 河野先生は徹底的な患者観察を行ってるので,その効果にはかなりの信頼性があると思いますが,

 どんな人間もミスはするもので,100%ではないということだと思います.この点については一度記事にさせて頂きます.
Re: 本当ですか?
河豚田 さん

 御質問頂き有難うございます.

> 例えば、脂質異常症などは、
> 医者としては薬を処方する以外に何も出来ないと言うのは本当ですか?


 真意はそれぞれの医師に聞くより他にありませんが,

 私の知る限りでは,多くの医師は脂質異常症に対してかなりハードル低めにスタチンを処方します.

 患者さんで脂質異常について他の医師に食事指導を受けているという話は聞いた事がありません.

 おそらくスタチン以外にコレステロールを下げる方法を実質持ち合わせていない医師がほとんどだと思います.

 なお私の場合は,まず糖質制限が第一選択ですし,

 もっと言えば,質さえよければコレステロールはそんなに一生懸命下げなくてもいいと考えています.
Re: No title
くろまめ さん

 コメント頂き有難うございます.

> 心の奥では絶対おかしいとわかっていても、患者というのは「自分が間違っているのではないか」と自分を責めがちなものだと思います。

 私は医師だからわかりますが,

 医師だって普通の人であり,普通に間違ったりするのです.

 しかし,医師になる過程があまりに特殊でプライドが高くなっていく環境であるが故,

 おかしい事をおかしい,と素直に認められない医師が増えてしまうのだと思います.

 基本的には自分の感覚が一番正しいと思います.その感覚を是非とも大事にしてほしいです.