糖尿病と自律神経失調

2013/10/02 00:01:00 | 普段の診療より | コメント:1件

糖尿病は万病の元だと感じさせられた本日の症例です。

70代女性、2型糖尿病でHbA1c7.9%(NGSP)、慢性心不全もあり、経口糖尿病薬は3種類内服中(薬剤名:オイグルコン、メトグルコ、トレシーバ)。

繰り返す意識消失発作ということで、神経内科の方に回ってきました。

この方、意識を失う際に血圧がすごく下がるという特徴がありました。

そのため、血圧を上げる作用のある薬を数種類使われていましたが、一向に効きません。

詳しく調べてみると、この方は「自律神経」の働きがかなり低下しているということが明らかになりました。

「自律神経」とはよく聞く言葉だと思いますが、意外と患者さんに意味が正しく理解されていないことが多いので、ここで少し解説をしておきます。

自律神経というのは普段ヒトが意識しないところで恒常性を保つために勝手に働いてくれている神経の事です。

例えば、ヒトは体温を調節するために汗をかいたり、体が震えたりしますが、そうしようと思ってしているのではなく、いわば体が自律神経を介して勝手に調整してくれています。また排便に関しても同様の事が言えます。

自律神経は全身にはりめぐらされていて、興奮性を高める交感神経と、鎮静性を与える副交感神経の2種類があります。

この二つが絶妙にバランスを取り合うことでヒトは恒常性を保っています。

そしてもう一つの自律神経の働きが、「血圧を一定にする」という事です。

ヒトが寝た状態から起き上がった時には、それまで心臓と同じ高さにあった脳が、起き上がった時に心臓より位置が高くなり、重力の影響を受けて脳内の血液が下の方へ下がります。

こうなると脳の血流が少なくなり、ふらつきの症状が出現します。これがいわゆる立ちくらみ(起立性低血圧症)です。

普通はそれが起こらないように自律神経が働いて心臓の動きが早まり、脳への血流が少なくならないように勝手に調節してくれているのですが、

自律神経がうまく働いていない人はこのシステムがうまく働かずに立ちくらみを繰り返してしまうのです。

一方で、糖尿病の三大合併症の一つに神経障害があります。

実は糖尿病神経障害でやられるのは手足の神経だけではなく、自律神経とて例外ではないのです。


従って、おそらくこの方の自律神経障害(自律神経失調)の原因は、糖尿病だと考えられます。

そうなるといくら薬をいっていてもよくならない理由も想像がつきます。

ちなみにこの方は自律神経失調という言葉のことを「精神不安定」という意味で捉えられていました。

私に言わせれば、その精神不安定さえも糖質の過剰摂取が原因となっていると思いますが、

つくづく「糖尿病は万病の元」だと感じたのでした。


たがしゅう
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コメント

Re: 大学病院でのとんでもない治療

2013/10/03(木) 00:45:16 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
あひるさん

 はじめまして.お辛い実体験を御報告頂き有難うございます.

 またお気持ちお察し申し上げます.私も大学病院の勤務医ですのでそうした実態はよく存じ上げております.

 現状,権威者の方から変わるとは残念ながら到底思えません.

 自分の身は自分で守るしかないと思います.私のような若輩者が申し上げるのも大変恐縮ではございますが,是非とも情報を上手に得て,自分で考える力を磨いていきましょう.

 5日というのは10月5日(土)の島根県保険医協会での夏井先生講演会ですね.

 江部先生の時もそうでしたが,医療関係者限定の会のようです.

 どうしてもの場合はどなたか関係者の方と一緒に参加するか,もしくは保険医協会へ直接問い合わせてみてはいかがでしょうか.

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