酸化ストレスは善か悪か

2014/08/19 00:01:00 | 医療ニュース | コメント:0件

世の中には様々な病気が定められていますが,

その多くの根本的な原因は酸化ストレスに帰結できると私は考えています.

食事,運動,喫煙,飲酒,ストレス,放射線など何らかの要因で酸化ストレスが発生し,

それが身体の中で消去できない状況が続く事によって,

あらゆる病気を引き起こすのではないかという考え方です.

その酸化ストレスを直接引き起こしているの物質の一つがフリーラジカルという活性酸素です.

そんな中,おなじみのケアネットから,

フリーラジカルが増加する要因について検証した論文の情報が取り上げられていました.

フリーラジカル脳損傷 増加要因は?

 フリーラジカルによる脳損傷と、ライフスタイル要因との関連性を調査したところ、人の脳におけるフリーラジカル損傷は年齢やBMI、喫煙に大きく関連していることが示唆された。ワシントン大学Elaine R Peskind氏らの報告。脳の健康のためのロードマップHealthy Brain Initiative(2013-2018)では、より良い脳の健康が模索されている。本研究では、どのようなライフスタイルがフリーラジカルによる脳損傷と関連するか調査した。JAMA neurology誌オンライン版2014年7月21日号掲載の報告。

 本研究は多施設断面調査。被験者は、医学的に健康かつ認知的に正常であった21~100歳、320人(うち172人が女性)であった。脳へのフリーラジカル損傷は、年齢、人種、性別、喫煙、BMI、アポリポ蛋白E(APOE)遺伝子のε4対立遺伝子の存在、アルツハイマー病の脳脊髄液バイオマーカーを関連因子として、脳脊髄液中のF2-イソプロスタン※(CSF F2-IsoP)濃度(を基に評価した。
※F2-イソプロスタン:プロスタグランジンF2α誘導体であり酸化ストレスマーカーとなる。

 主な結果は以下のとおり。

・CSF F2-IsoPの濃度は、45~71歳の年齢層において年齢が上がるごとに約3pg/mL(約10%)増加した(p<0.001)。
・CSF F2-IsoP濃度は、BMIが5上昇するごとに約10%以上増加した(p<0.001)。
・CSF F2-IsoP濃度と相関する因子を比較したところ、現在の喫煙は年齢に比べ約3倍の強い相関が認められた(p<0.001)。
・他の因子で調整後、女性はすべての年齢層で男性よりも平均CSF F2-IsoP濃度が高かった(p=0.02)。
アポリポ蛋白E遺伝子のε4対立遺伝子、およびアルツハイマー病バイオマーカーは、共にCSF F2-IsoP濃度との関連性が示されなかった(p>0.05)。
CSF F2-IsoP濃度と人種について、喫煙状況の影響を調整したところ有意な関連性は認められなかった(p=0.45)。

 今回の結果より、人の脳におけるフリーラジカル損傷は年齢依存的に増加し、損傷の程度は男性より女性で大きいことが明らかとなった。また、BMI・喫煙といった2つのライフスタイルがフリーラジカル損傷に与える影響力は、加齢よりも強いことがわかった。これらライフスタイル要因の改善は、老化プロセスの抑制よりも脳のフリーラジカル損傷を抑制するうえで、より大きな効果があると研究グループは報告した。



 今回のニュースは私にとって考察のしがいがあります.一つ一つ考えていきましょう.

①「45~71歳の年齢層において年齢が上がるごとに酸化ストレスマーカーが約3pg/mL(約10%)増加」について

普通に考えれば、年齢が高くなればなるほど、

酸化ストレスが増えていきそうなものですが、

今回の研究対象者は、21〜100歳であったにも関わらず、年齢毎に酸化ストレスマーカーが増えていったのは、45〜71歳の期間のみでした。

それ以外の年齢には有意差がなく、何らかの代償機構が働いている可能性が示唆されます。

その代償機構も、若い時期にあるのは何となく納得がいきますが、

72歳以降の時期にも働いている可能性があるというのが興味深いところです。

それまでの人生で散々酸化ストレスにさらされた72歳以上の方の中の一部には、

もしかしたら何らかの遺伝子がONになり、新しい代償機構が発動するというような事があるのかもしれません。

これは「超高齢になったら血圧をそんなに一生懸命下げなくてよい」という話とリンクしているように思えます。


②「BMIが5上昇するごとに酸化ストレスマーカーが約10%以上増加」について

肥満すると見た目が悪くなるという明らかなデメリットがありますが、

肥満自体はエネルギーの備蓄であったり、高血糖の害から身を守る側面もあったり、

必ずしも悪い事ではないという見解を私は持っています。

また心臓の領域では,肥満がある方が心不全の予後が良いという「肥満パラドックス」と呼ばれる現象が見られる事が知られています.

そういう状況がある中で,BMIが上昇するごとに酸化ストレスマーカーが上昇していくという現象を眺めて見た時に,

肥満により酸化ストレスマーカーが上昇していく事は,ある段階までは人体に対して好ましい効果をもたらしている可能性があるのではないか,という気がしてきます.

少なくとも「酸化ストレス=悪」という一義的な捉え方は控えた方がよいと私は思います.

 
他にも考察したい事がいろいろとありますが,

長くなりそうなので,続きは次回に回したいと思います.


たがしゅう
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