糖質制限で口渇感が弱まる理由
2014/08/07 00:01:00 |
糖質制限 |
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暑いと喉が渇くと思いますが、
口渇感というのは単純に水分が失われても感じるのですが、
血液中の浸透圧によっても大きく影響を受けることが知られています。
血液の中の血漿(血液の凝固成分を除いた液体成分)の浸透圧は以下の式で計算することができます。
血漿浸透圧=2(Na+K)+(血糖/18)+(BUN/2.8)
※正常値:285~295mOsm/L
その主要な規定因子はナトリウムなのですが、
汗などで水分が大量に失われる状態が続くと、血液中のナトリウムの濃度が濃くなります(高ナトリウム血症)。
その結果浸透圧が上がり、その水分の喪失を埋め合わせるように人は口渇感を感じ飲水行動を取るというわけです。 糖尿病の人がよく口渇感を感じるというのも血糖値が上昇しすぎると浸透圧が上がるためと考えられています。
浸透圧を一定に保つことは、細胞環境を守るために極めて重要なことなので、
口渇感を与え水を飲むように仕向ける脳の刺激は相当強力なものです。
さて、糖質制限をしていると比較的喉が渇きにくくなるという話を聞くことがありますので、
本日はその理由について考えてみたいと思います。
一つは血糖値が安定しますので、血糖値の上昇により浸透圧上昇部分がなくなるというのが一つでしょう。
もう一つはナトリウムの観点ですが、
糖質を摂取しているとNa-Kポンプが回り、水とナトリウムが一緒に吸収されます。
この原理を応用して脱水治療に活かしたのがOS-1などの経口補水液、逆応用して糖尿病の治療したのがSGLT2阻害剤です。
という事は、糖質制限すると水とナトリウムが入らなくなり、
浸透圧はどちらかと言えば低下する方向に行くのではないかという気がします。
しかしミネラルに関して言えば、ナトリウムが入らなくなればナトリウム欠乏になるというような単純な構造にはなっていません。
普段ナトリウムは利尿ホルモンや腎臓の尿細管での再吸収などのシステムによって
少々ナトリウムを摂りすぎたり、不足したりしても一定の浸透圧を保てるように自己調整されているのです。
では、なぜ糖質制限をすると口渇感が弱まるのか。
一つは高脂肪食なので、脂肪を分解することで効率的にエネルギーが生み出されますが、
この時エネルギーと一緒に水分が産生されます。そのため水分不足になりにくいというのがあると思います。
余談ですがラクダのこぶはほとんど脂肪から出来ており、
砂漠でもラクダが何ヶ月間でも水なしで生存できるのは、その脂肪を分解して水を作り出しているからだと言われています。
でも糖質を摂取していても脂肪が溜まるのにつじつまが合わないじゃないかと思われるかもしれませんが、
糖質を摂取している以上は、そこに蓄えられた脂肪が使われる事はありません。
なぜなら頻回にインスリンが出ており、インスリンは脂肪を蓄積する方向へ代謝を傾けるホルモンだからです。
従って、インスリンが必要以上に出ている状況があれば、
そこに脂肪があるのに使えないという因果な事になってしまうわけです。
もう一つの観点はそのような代謝障害に原因ある可能性があります。
先ほどナトリウムの自己調整の事について触れましたが、
そういうコントロールシステムが働くのも、全身の血液がめぐり、十分な栄養が行き届いてこそだと思いますが、
糖質摂取によって代謝が乱れる血糖値の乱高下、それに伴う高インスリン血症を繰り返していれば、
そうしたシステムが故障してしまう事があります。
例えば、若くて腎機能が正常な人が熱中症になった時にガンガン点滴をしてもナトリウム入りすぎてトラブルになるという事はまずありませんが、
腎不全で弱ったお年寄りが同じような事になった場合は、自己調整が効かず入れた点滴のミネラルが直接身体に反映されますので、より輸液メニューには気をつかう必要があるのです。
従って、糖質摂取によって代謝障害をきたしているような人は、糖質制限によって口渇感が弱まる感を自覚する可能性がありますが、
糖質摂取時代からそんなに代謝が乱れていなかった人は、糖質制限しても口渇感にあまり変化は現れないかもしれません。
ちなみに、私が幼少期の頃、
遠足などに出かけると、帰りの頃には水筒のお茶がなくなっており、
上手に節約して飲んでお茶が余っているお友達をうらやましく思っていたという時代がありました。
今にして思えば、もしかしたらあれも糖質過剰摂取の影響があったのかもしれません。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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