片頭痛の慢性化を根本的に防ぐ方法

2014/08/04 00:01:00 | お勉強 | コメント:0件

肥満は片頭痛の慢性化するリスクだと言われています。

しかし、実臨床では片頭痛がこじれている人が必ずしも肥満にはなっていません。

実はその背景に脂肪細胞由来のレプチン、アディポネクチンなどのアディポサイトカインの存在があることが指摘されています。

北村英二ら.
Chronic migraineのリスクとしての高レプチン血症と塩酸アミトリプチリンによるCSD抑制効果について
日本頭痛学会誌,41:63-67,2014


この論文では特にレプチンが高い時にCSD(皮質拡延性抑制)という一箇所の神経細胞の過剰興奮の後に抑制的な電気信号が回りの大脳皮質の脳細胞に広がっていく現象が起こり、

その事が片頭痛を慢性化させる、そしてそれは抗うつ薬の塩酸アミトリプチリンで抑える事ができるという報告をしています。

つまり、太っていようが、太っていまいが、レプチンが高いと頭痛はこじれるという可能性があると思います。 そして、どういうときにレプチンが出るかというと、「摂食」「インスリン投与」などです。

レプチンは脳などの中枢神経に作用し、食欲を抑える働きがあります。

逆にレプチン遺伝子に変異を持つマウスが肥満を呈する事から、レプチンと肥満は密接な関係があると言えます。

さらにレプチンは一酸化窒素や、CGRP(Calcitonin Gene-Related Peptide)、種々の炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-6など)の産生を促し、片頭痛の病態に関与するという事が知られています。

しかしレプチンというホルモンがもともと頭痛を起こすために存在しているとは到底思えません。

レプチンが様々な物質を産生させる事には何らかの意味があると考えられます。

最近、慢性的に出続けるとよくないが、一時的に出る分には良いことをしていると思われる物質を多々見かけます。

コルチゾールなどのストレスホルモンしかり、筋肉の疲労を回復させるための乳酸しかり、

また、まだ確証には至りませんが、尿酸も一過性で放出される分には抗酸化作用を発揮し、本来人体の中で起こる何らかのトラブルを収束させるよう働きかけている物質ではないかと私は思っています。

そしてレプチンもおそらくそういうものなのではないかと私は考えるのです。



つまり、食べる事によって生じるリスクを最小限にするためにレプチンが分泌され、

食欲を抑えてこれ以上食べないように仕向けるとともに、食事によって生じた何らかの身体の不具合を修理するために炎症性サイトカインを分泌して事態の収束を図っていると、

ところが、間食などで1日に何回も食べていたり、レプチン刺激となるインスリンがどぱっと出る糖質などを摂取したりしていると、

本来は事態の収束のために出ていたレプチンによる炎症性サイトカインが、今度は逆に身体の別の部分に炎症を起こさせる害をもたらしてしまうこととなり、

それで片頭痛が悪化していってしまうのではないかという風に思うのです。

そうなれば、片頭痛の慢性化を防ぐためにまずすべきことは抗うつ薬を使うことではなく、

レプチンを出させないようにするために、糖質を制限する、あるいは食事回数を減らすということが

有効になってくるのではないかと思います。

糖質制限が片頭痛に有効であると考える根拠がまた一つ増えました。


たがしゅう
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