夏バテの真の対策とは
2014/08/01 00:01:00 |
お勉強 |
コメント:6件
暑い時期になってきました。
今日は以下の本を参考に「夏バテ」について考えてみたいと思います。
まず、「夏バテ」という言葉は医学用語ではなく、言わば「患者用語」です。
『夏ばて』を広辞苑で引くと、『夏、暑さのために、身体がぐったりと疲れること。夏負け』とあります。
「熱中症」と混同されがちですが、こうしてみると夏バテの方がより広い概念だとわかります。
このような患者用語は解釈に注意を要するので、
必ず対応する医学用語に変換して、患者さんの訴えの本質をとらえるように医師は教育されます.
ところが,いわゆる「夏バテ」に相当する医学的な状態は実は結構たくさんあります. 具体的には以下の表がすべてが夏バテの状態を起こしえます.

その範囲は実に多岐に渡っていて,一見気が滅入りそうですが,
患者さんの話を詳しく聞くことで,まずは大きく「熱中症」「睡眠障害」「消化器疾患」「精神・心因性」かどうかを見分ける事が大事です.
例えば,「なんとなく身体がだるいし,ふくらはぎがつる」と来れば,
先日紹介したこむら返りが高熱に伴う脱水により増悪した状況,熱中症の一つ「熱痙攣」の状態だと推測できます.
また,「夜は寝苦しいし,日中は身体がだるい」と来て肥満があれば,睡眠時無呼吸症候群かもしれませんし,
「横になってると何ともないが,立ち上がるとめまいがしてふらふらする」と来て,便が黒ければ消化管出血の可能性が疑われます.
もしも消化管から血がチョロチョロと出ていれば,血の赤色が胃酸の影響を受けて黒色に変色し,便と混じる事で黒色便となるからです.
さらには,上手な聞き役に徹することで,身内の不幸や,テレビでの健康番組を見て不安になった,などの背景因子を聴取する事ができれば,
精神的な要因が関わっているということも推測する事ができます.
しかし,よくよく考えればそれら全ての病態に対して,
糖質制限を行う事は有利に働くと思います.
糖質制限で血流を改善すればこむら返り予防につながりますし,
勿論減量効果により睡眠時無呼吸症候群の解消もできれば,
タンパク質をしっかり確保することでストレスに対抗するためのドーパミンやセロトニンの材料を確保し消化管をストレスから守れます.
精神疾患に糖質制限がよいことも私は自分の身体で実証済みですし,その理屈もすでに考察しています.
もっと言えば,上記の表に書かれているその他のたくさん「夏バテ」をきたしうる疾患のほとんど全てに糖質制限が有効である可能性が秘められていると思います.
夏バテというのは、糖質の頻回過剰摂取により生じた代謝障害のせいで、
暑さという外的要因に対して身体が対応しきれなくなった状態だとみることができるかもしれません。
最後に上記の特集雑誌において、
夏バテに関して漢方医学的な考え方が記載されており、
これが割と興味深い内容でした。
そこには食養生の考え方が書かれていました。
本来、身体が熱くなってしまった夏バテの状態に対しては、
身体を冷やす食べ物を食するのが理にかなっているのですが、
現代の食生活は普通にしていると身体を冷やす方向に傾きすぎてしまっているようです。
具体的には冷たい飲食物に加え、生野菜、果物、砂糖、酢が食養生の中で身体を冷やす食べ物とされています。
しかも、もともとは夏に穫れる野菜(例:キュウリ、トマトなど)は身体を冷やし、
冬に穫れる野菜(例:ダイコン、人参など)は身体を温める傾向がありましたが、
農作物の栽培技術の進歩により、一年間を通じて好きな野菜を食べられるようになりました。
加えて昔にはありえなかった精製炭水化物の頻回過剰摂取を繰り返すことで、
冷やす云々以前に代謝が乱れてしまい、外気温にうまく対応できなくなる状況もあるというのだから、
そのような複雑な事情が積み重なり、古来の食養生の理論が当てはまらなくなってきているのが現代の食生活であるようなのです。
となればせめて糖質を制限しつつ、ひとまず本来に近い状態へ一旦リセットして、
そこから見えてくる問題を改めて考え直すという工程が必要となりそうです。
そういう意味で糖質制限は、
夏バテ対策の核となってくると考えます。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
先日大関に昇進された豪栄道関は焼肉大好きでも白米、ビールは飲まずだそうです。保守的な相撲界ですら確実に流れが来てるようですね。それはさておき・・・
糖質制限後、明らかに暑さに強くなったのを感じます。50度以上の熱風を浴びる職場ですが、水を飲んで涼しいところで五分程度休憩すればすぐ回復するようになりました。
日焼けや下着の締め付け、虫刺されなどの不快さも改善されました、驚嘆しますね。
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
夏は暑いのは暑いですが、糖質制限をしてからというもの、いわゆる夏バテはしなくなりましたね。
旧態依然たる角界も改革は大変でしょうが、変われるところから変わっていってほしいものです。
夏バテしてて、損した。
暑中お見舞い申し上げます。
夏バテは私の天敵でした。糖質制限ですっかり治り、今は並みの人より元気です。夏バテに良いと言われていたVB群、クエン酸、VCなどのサプリは、糖質を控えないと効果は無いです。逆に糖質を控えれば、サプリ無しでも夏バテしません。ホントですよ。夏バテに栄養剤は不要でした。
(美容目的でビタミンサプリは摂ることあります)
3年前までは、夏バテで疲れて疲れて、いろんな予定が狂っちゃったり、仕事以外は休んでいたり、注意力散漫になってミスをしたり、土日は寝て過ごしてしまったり、ずいぶん時間を損してきました。それに、つらい悲しい気持ちにもなります。本当にもったいなかったです。
今夏も猛暑更新中ですが、今は夏バテする気がしません。電車でお疲れ気味に眠っている人に「糖質、控えるといいですよ」と言いたくなるけど、我慢しています。体質じゃなくて、食生活で治るんです。
今は、そうめん、冷やし中華にも気をつけています。あの食べやすさはとってもアブナイです。でも、夏っぽいから少しは食べます。
Re: 夏バテしてて、損した。
コメント頂き有難うございます。
ビタミンが足りないことより、糖質によって代謝が乱されていた事の方が夏バテの原因の本質であったという事を実感されたのではないかと思います。
あとは文化とか、風情とかとどう折り合いをつけるかは個人の価値観次第ですね。
暑さに強くなってます。
私も糖質制限を開始してから暑さに強くなっています。
暑さに鈍感になっているのではなく、我慢強くなっているようですね。また、汗も以前ほどかかなくなっています。
平熱も36代後半から37度に上がりました。
コメントされている方も、暑さに強くなっているようですので、糖質の過剰摂取が夏バテの原因のような気がしますね。
もしかしたら、熱中症も糖質の過剰摂取と関係があるのではないかと睨んでいます。
Re: 暑さに強くなってます。
コメント頂き有難うございます。
> もしかしたら、熱中症も糖質の過剰摂取と関係があるのではないかと睨んでいます。
御指摘の通りだと思います。
暑さに対応できないというのは別の見方をすれば、自律神経の働きが弱っているということです。
血糖値を乱高下させ自律神経の働きを乱す糖質摂取は、熱中症に大いに関わっていると思います。
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