低血糖も高血糖もよくない

2014/07/24 00:01:00 | 医療ニュース | コメント:0件

m3.comという医師向けの総合情報サイトにて,

糖尿病に関するニュースが紹介されていました.2008年のACCOR試験についてです.

この試験は有名ですが,簡単におさらいしておきますと,

インスリンやSU剤などの薬を使って厳格に血糖値を下げた患者群(平均HbA1c6.4%)と,食事や運動療法などの通常の血糖管理を行った患者群(平均HbA1c7.5%)とを比較し,

どちらが治療予後がよかったかということを調べた大規模臨床試験です.

予想では当然,厳格に血糖を下げた群の方が成績がよいはずだと,おそらく誰もが考えていたと思いますが,

実際には厳格治療群の方で死亡率が有意に高かったため,5年間行う予定であった研究が,3.4年で緊急中止になったという衝撃の結果をたたき出した,というものです. 今回そのACCORD試験でなぜ死因が増加したか,ということに関して新説が出たというニュースです.

ACCORD試験の死因に新説【米国糖尿病学会】
夜間低血糖が除脈を起こし、心血管障害につながる
2014年5月15日 米国学会短信

 米国糖尿病学会(ADA)は、Diabetes誌5月号に掲載された英国シェフィールド大学による夜間低血糖と不整脈との関連性を示す研究結果について紹介した。

 2008年に、強化療法によって2型糖尿病患者の心血管障害を低減できるかどうかを検討する臨床試験(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes試験:ACCORD試験)が実施されたが、死亡率が予想を上回ったために早期終了となった。当時、その死亡原因については不明であった。

 シェフィールド大学のSimon Heller氏らは、心血管疾患の既往歴のある2型糖尿病患者において、夜間の低血糖と心不整脈の感受性増加の関連性を見出した。これにより、ACCORD試験での死亡原因だけではなく、1型糖尿病患者におけるdead in bed症候群についても説明できる可能性が出てきた。

 Heller氏は、今回示唆された不整脈の発生機序を確証する調査は必要であるが、「低血糖が長期にわたり除脈を引き起こし、心臓への血流を妨げ、致死的な心血管障害をもたらす」という推定機序の説明において潜在的重要性のある結果だとしている。

 論説の著者であるワシントン大学のSimon Fisher氏は、「目標血糖値は個別に設定するべきであり、重度の低血糖や命にかかわるような不整脈を引き起こす低血糖を回避するよう調整することが重要」と述べている。



突然死に直結する2大臓器と言えば,脳と心臓です.

以前よりACOORDでの死因の増加には低血糖が関わっていただろうとは言われていましたので,

今回はその低血糖が心臓の不整脈を引き起こし,死亡を引き起こしたのではないかというのが新説の肝であるようです.

ただまあ,正直あまり目新しい話でもないというのが私の感想です.

低血糖そのものでも,治療が遅れれば脳に支障をきたし死因につながりますし,

それが低血糖と心臓にも関連があるかもしれないという可能性を示しただけで,

現場からしてみれば,低血糖を予防するという治療方針でいく事になんら変更をもたらさないからです.

それに,この新説の中には,平均血糖変動幅の増大や高インスリン血症の害という観点は読み取れません.

実際には平均血糖変動幅増大や高インスリン血症で動脈硬化リスクが高まり,脳卒中や心筋梗塞などの血管障害で突然死が増えた可能性も十分にあると思います.

低血糖のことだけを見据えてしまうと,日本糖尿病学会で最近定まったHbA1c目標値のように,

「HbA1cの高い人は低血糖になりすぎないように控えめに血糖を下げるようにしましょう」という消極的な治療に留まらざるをえなくなってしまいます.

低血糖も高血糖もよくない,という事になれば,なすべき事はただ一つです.

血糖値を上昇を防ぎ,なおかつ低血糖を起こさない糖質制限あるのみです.


たがしゅう
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