炭水化物が風邪をこじらせる
2013/09/25 01:05:26 |
普段の診療より |
コメント:2件
糖質制限を長く続けていると,風邪を引きにくくなることを感じます.
また引いたとしても軽くて済みます.
やはり免疫力を高めるには普段の食生活がいかに大切かということを考えさせられる本日の症例です.
20代の男性で,約10日前に熱,頭痛,のどの痛みを自覚,近所のクリニックを受診して風邪と診断され,(西洋薬の)風邪薬を処方されました.
しかし改善せず7日前に別の病院を受診.今度は抗生物質と解熱剤が処方されました.
のどの痛みは引いてきたものの,今度はやたらと頭痛がひどくなり,吐き気もし始めて3日ほどろくに何も食べれない状態が続いたために,私のところを紹介受診されました.
やせ型で肌がくすんだ感じの男性でした.頭が痛くて非常に辛そうです.
しかし診察をしてすぐにわかりました.首を触ると硬いのです(これを医学的に「項部硬直」と言います).
項部硬直があると真っ先に疑うのが「髄膜炎」という病気です.
「髄膜炎」というのは脳の表面を覆う髄膜という膜に炎症反応が起こった状態です.
例えば風邪は炎症反応がのどに起こった状態ですが,これがこじれた場合に身体の深い部分まで炎症が波及し,髄膜炎に移行してしまうことがあるのです.
髄膜炎の原因の多くは風邪と同様ウイルスです.稀にばい菌(細菌)やカビ(真菌)が髄膜炎を起こすことがありますが,こちらは重症化し治療も刻一刻を争う緊急事態になります.
ウイルスが原因の場合の髄膜炎は比較的軽症で入院して点滴を受けながらだいたい1~2週間で治ります.
しかし,普通の健康成人なら風邪で終わるところが,髄膜炎にかかってしまうという場合は,普通何らかの免疫力低下をきたす病気が隠れている可能性を考えたくなります.たとえばAIDSとか白血病とか自己免疫疾患などの病気です.
ただ,いろいろ調べる限りでは,幸いこの患者さんではそういう病気は隠れていなさそうでした.
しかし,例によって糖質制限に注目している私はこの患者さんの普段の食生活を聞いてみました.すると問題点が浮き彫りになって参りました.ちなみに彼は肉体労働系の仕事をしています.
朝:欠食
昼:カップラーメン
夕:家で親が作る食事を食べる
どう思われますか?
料理をしない男性だからか,具体的なメニュー名や食材名こそ出てきませんが,いかにも炭水化物が多そうな印象を受けます.
しかも欠食をしているから全体の摂取エネルギーが少ない可能性もあります.
そして私はここでもう一つ,彼の認識を知るために「炭水化物を取りすぎたりしていませんか?」と尋ねました.
すると彼は「そんなに炭水化物は食べていないと思いますけど」と答えました.
ここで注意しなければならないことがあります.「炭水化物を取りすぎていませんか?」という質問は,本当に炭水化物摂りすぎの人を見つけ出す質問として不適切である可能性が高いということです.
というのは,おそらく私が思う「炭水化物が多い」という基準と彼が思う基準は大きく異なっているからです.
普通糖質制限を知らない人にとってみればごはん茶碗1杯の量は,まさに「普通」のごはんの量です.しかし私たち糖質制限を知った者からすれば角砂糖17個分に相当するものすごい糖質の量です.
このギャップを埋めないことには話が進みません.
そしておそらく彼は,炭水化物を主体にした食生活を送っていた結果,免疫力が弱まり,ただの風邪をこじらせ,髄膜炎に移行するという事態を招いたものだと考えられます.
現在入院して点滴加療中の彼,主治医は私です.
もう少し彼が元気になってから,彼が同じ病気を再発しないように,じっくりと新しい栄養学の基本について教えたいと思っています.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
丁寧に糖質オフの考えを広げましょう
普通の常識を持っている人に、糖質オフを納得してもらうのは根気が要ります。
>このギャップを埋めないことには話が進みません
丁寧に科学的に粘り強く説明しましょう。
私も頑張ります。
Re: 丁寧に糖質オフの考えを広げましょう
応援有難うございます。
まさに根気がいる作業ですよね。
私も地道な努力を続けたいと思います。
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