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医師にいい顔をしすぎる患者達

category - ふと思った事
2014/ 07/ 06
                 
良好な医師患者関係は、

医療を行う上での大前提です。

いかに高度な技術を操れようと、

いかに複雑な知識を持ち合わせていようと、

この関係が良くなければ、良い医療を施す事はできません。

しかし、医療の歴史の長きに渡って、

医師が患者の上に立ち患者を指導するというパターナリズムが主流でした。

近年、情報化社会が発達したという事も手伝って、

ようやく患者の権利というものが声高に叫ばれるようになってきました。

しかし長い歴史と慣習の影響はそう簡単には取り去れないようで,

実際の現場では,医師を盲信してしまい,

「難しい事はよくわからないので先生にお任せします」というように自分の頭で考えない患者さんがほとんどで,

パターナリズムの呪縛とも言うべき状況が現実に残っているのです.
            

そしてその影響は医師を盲信するというだけにとどまりません.

私が糖質制限の指導をしていて思うのは,

「患者さんが医師にいい顔をし過ぎている」ことが多いという事です.

よくあるケースでは「ごはんはほんのちょっとしか食べていません」をアピールするケースです.

患者さんの主張もさることながら,

私は客観的なデータも併せて,糖質制限の効果を総合的に判断します.

体重も不変で,血液データも改善していないような人をみると,

実際にはたいして食事を変えているようには到底思えず,

ただ「私は先生の言う事を守っているよい患者です」という事をアピールしているだけに思えます.

いくら医師にいい顔アピールをしたところで,

実際の行動が伴っていないのなら,空虚な事です.

これもまた長年にわたってパターナリズムが繰り返されてきた事により

残ってしまっている悪しき風習の一つではないかと思います.

そんな事を言われるくらいなら,正直に「すみません,今まで通り食べてしまいました」と言ってくれた方が,

どうしてそのようになってしまうのかを一緒に考える事ができるから,よほどよいのです.


先日もとある明らかに肥満の患者さんに,

何度も糖質制限指導を行っていてもやせないという状況がありました.

その患者さんは外来の度に,「米は一切食べていない」をアピールされるのです.

経験上,肥満が高度であればあるほど,糖質制限導入後の体重減少率は高いので,

その患者さんの主張はにわかには信じがたいことでした.

しかし患者さんが来る度にそのように言われ,

春雨や根菜など隠れ糖質の事,果物の事などいくらチェックしても改善が得られないので,

私は患者さんの言葉を信じて,通常の肥満ではない「症候性肥満」の可能性を考えました.

「症候性肥満」というのは「二次性肥満」とも言いますが,何か原因があって肥満になる特殊な病態の事を指します.

例えば,副腎という所に腫瘍ができる「クッシング症候群」,代謝ホルモンが低下する「甲状腺機能低下症」,インスリンを無尽蔵に産生する「インスリノーマ」などがこれに当たります.

そこで普段測らないホルモンなども測定してみましたが,

結果はどう考えても糖質を摂取しているとしか思えないホルモンのデータでした.

そんなある日,その患者さんのケアマネージャーさんが一緒に来院され,

私に真実を教えてくれました.

この患者さんは,実際には家で30kgのお米を1ヶ月で消費する毎日を送っており,

平均すると1日6合くらいお米を食べていたというのです.

正直,よくそんな状況で米は食べていないと言えたものだ,と思ってしまいましたが,

おそらく「正直に言ったら先生(医師)に怒られる」という心理が働いてしまったのかもしれません.

これでは良好な医師患者関係など夢のまた夢です.



そんなふうに思われてしまわないよう,

御自身の健康の事を何でも正直に包み隠さずに言ってもらえるような,

そんなよい雰囲気を診療の場で作っていく事の必要性を感じました.


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

書くのも躊躇することですが。
こんにちは。
私のまわりは全然違って、
娘が髄膜炎で入院した友人は、「主治医と大喧嘩して入院させた」(入院して髄膜炎と分かった)
出産した友人は「子どもが生まれたことより、母子ともに事故なく無事に退院できたことが一番うれしかった」

若い人は、医療不信があるのです。
私は夏バテがひどかったのですが、病院では治らず、自分で調べて糖質制限して元気です。

医者にいい顔してたら、自分の身が危ないと思っています。
安心を買う
糖質制限をやってくれない人達のなかには、何か自分の考えがある訳じゃなく、「変わった食事療法をしなくとも、そこそこ大きな病院に通っていて、薬を貰っているんだから、行かないよりはましだろう」と思ってるんだと思います。

それが証拠に、病院には真面目に通うし、薬もちゃんと飲んでるんですよね。
Re: 書くのも躊躇することですが。
エリス さん

 コメント頂き有難うございます。

> 医者にいい顔してたら、自分の身が危ないと思っています。

 その通りです。

 医師にいい顔をするのではなく、医師をうまく利用して自分の健康を守って頂きたいと思います。
Re: 安心を買う
河豚田 さん

 コメント頂き有難うございます。

> 「変わった食事療法をしなくとも、そこそこ大きな病院に通っていて、薬を貰っているんだから、行かないよりはましだろう」と思ってるんだと思います。
> それが証拠に、病院には真面目に通うし、薬もちゃんと飲んでるんですよね。


 この患者さんに関しては御指摘の通りでしょうね。確かに通院も内服も真面目に継続されています。

 逆に言えば、この事は「いかに薬絶対主義がはびこっているか」という事を示す傍証でもあると私は思います。
No title
>医師にいい顔
気持ちはわかります。
中には患者を恫喝する馬鹿医者もいますからねぇ…
指導を守れないなら守れないでいいから正直に話して欲しい
そんなお医者さんが大半になってくれるといいのですが。
それはそうと、こういう患者さんには
「あなたにとって米は肝炎の酒と同じで毒ですよ!」
ぐらい言わないといけないんじゃないかと素人考えしますが、
実際の現場ではそういうわけにもいかないのかもしれませんね。
糖尿人にとっての糖質は、
下戸・肝炎人にとってのアルコールと同じで
過量摂取は毒でしかないと思う今日この頃です。
Re: No title
へっぽこ さん

 コメント頂き有難うございます.

> 糖尿人にとっての糖質は、
> 下戸・肝炎人にとってのアルコールと同じで
> 過量摂取は毒でしかないと思う今日この頃です。


 その通りですね.

 理屈が正しくても,思うようにいかないというのが現場での難しさです.

 でも今回,正直に話してもらえるような雰囲気作りをすることも大事なことだという事を学びました.
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