薬を減らすために必要なこと
2014/07/02 00:01:00 |
ふと思った事 |
コメント:4件
現代医療の薬絶対主義はかなり根深いです.
私は神経内科医という職業柄,高齢者の方を診る機会が多いのですが,
ほとんどの人が多剤内服で,5-6種類は当たり前,10種類以上の薬を内服されている方も決して珍しくありません.
これは西洋医学が基本的に薬を足し算式に加えていく方式だということと,
専門分化しすぎた医療の悪影響という側面が強いと思います.
つまり,こちらの内科では血圧が高くいので「降圧剤」を,また胃が悪いから「胃薬」を,
あちらの整形外科では膝腰が悪いので「痛み止め」を,骨がもろいので「骨粗鬆症治療薬」を
そして大学病院では心臓を診てもらっているから,「利尿薬」と「循環作動薬」を・・・
というふうに,芋づる式に薬の量が増えていってしまうわけです.
そうした多剤内服に疑問を持つ患者さんも中にはおられ,
時折「何とか薬を減らしてもらえませんか?」という相談を受けることがあります. あるいは「副作用が心配だから,薬を減らして下さい」とお願いされる場合もあります.
ただ,そうした場合,必ずと言っていいほど,患者さん側は,
薬を減らすために,自身で何か追加のアクションを起こしているというわけではなく,
ただ「薬を減らしてほしい」と懇願しているだけの状況です.
そしてその状況に対して医師は多くの場合,
「薬を使っているからこそ,今の安定した状態になっているわけだから,薬は大事だから飲んでおきなさい」
などといって,結局薬を減らすことができない.そんな人が多いのではないでしょうか.
さて「薬を減らしてほしい」という
患者さんの要望を叶えるためには一体何が必要になるでしょうか.
まず患者さん側が最もシンプルに実行できる事は
「食事を見直すこと」だと私は思います.
私は糖質制限推進派の医師ですから,
私の場合は,この時糖質制限する事を勧めますが,
仮にそうでなかったとしても,例えばまんじゅうや和菓子を食べ過ぎの人はそれをやめること,
果物ばっかり食べているという人はそれを見直すこと,
そういうアクションを何か一つでも起こすことによって,
血圧でも胃の調子でも何らかの改善が得られれば,
別に糖質制限推進派であろうとなかろうと,医師は薬を減らすことに応じてくれることでしょう.
しかしこの時糖質を減らすという観点を持たないままに食生活を変えようとすると,
糖質には中毒性があるために,主食で糖質を摂取したままに食生活を変えようとしても,
主食の中の糖質によって,糖質を渇望するように著しい食欲が動員されてしまうので,多くの場合その挑戦は失敗に終わります.
一方の医師側はどうかと言いますと,
食事療法の効果を軽く見積もっている医師がほとんどだと思います.
食事指導を栄養士に任せていたり, 同じ薬を出し続けていたりしている状況がそれを物語っていると思います.
心のどこかで「食生活を変えるなんて,そう簡単にできるわけがない」という想いがあるのではないでしょうか.
医師の潜在意識の中にそういう認識がある以上は,
薬の減薬など夢のまた夢です.
このように薬の減薬を阻む因子は患者側と医師側の双方に存在していると思います.
ところが,糖質制限の事がわかるとその認識は一気に変わります.
糖質制限を実践する事で,患者さんは糖質の中毒性からくる異常な食欲から解放され,
食生活を変えることが現実的にやりやすくなってきます.
また医師の方も糖質制限によって得られた様々な臨床的に有益な効果を得ることにより,
それならばと減薬に向けて一歩歩き始めることができるようになります.
糖質制限は現代社会の抱える薬剤の多剤化問題に対しても,
一石を投じる救世主となりうると考えています.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
まさに!
しかしながら、糖質制限食が体力全体(或いは防衛体力)の
底上げをするのは当家の場合、顕著に実感できました。
現在、当家の被介護者は糖質制限開始約1年の間に、
ジャヌビア(糖尿)、アマリール(糖尿)、ノボラピッド(糖尿インスリン注射)、オルメテック(高血圧)、パリエット(胃薬)、エルカルチン(脚のしびれ)、メチコバール(脚のしびれ)、ロキソニン(脚のしびれ湿布薬)、インテバンクリーム(乾燥肌掻痒塗り薬)などと縁が切れました。
他にもC型肝硬変(非代償期)の持病があり
(そもそも糖尿病も高血圧もC型肝炎由来との事)
全快には未だ遠いのですが希望が見えてきた思いです。
C型肝硬変についてはインターフェロン適応外と診断され、
肝庇護療法しか出来なかったのですが、
ここ数年の間に新たな選択肢が出来たので試してみようとの、
新たな肝臓主治医(総合病院によくある移籍)のお言葉を得られました。
これだって糖尿病の状態が思わしくなければ無かった話です。
事のついでに、いっしょに糖質制限食を始めた私自身にも
顕著な変化がありました。
一昨年に愛犬を亡くして以来、
ヤケ食いと運動不足(毎日の犬散歩が無くなったので)で
急激に5kg程太ってしまった体重が、
ものの二ヶ月ほどで7kg減量でき、
その後は安定しております(BMI:21)。
例年の健康診断では高血圧気味、高脂血症気味、メタボ気味など、
予備軍オンパレード状態だったのですが、きれいさっぱり解消しました。
たがしゅう先生、是非これからも良質な情報の提供に邁進ください。
微力ながら応援致しております。
Re: まさに!
コメント頂き有難うございます。
様々な体調の改善、よかったですね。素晴らしいです。
> たがしゅう先生、是非これからも良質な情報の提供に邁進ください。
> 微力ながら応援致しております。
応援頂き感謝申し上げます。私ができる事をこれからも続けていきたいと思います。
私の場合
いつも先生の素晴らしい内容のブログで勉強させて頂いています。
私は約3年前に長年苦しんできたうつ病の治療のため、栄養療法を行っているクリニックの医師の指導で糖質制限食を始めました。
その結果、良くなった病気とやめることができた薬をご参考として紹介したいと思います。
うつ病→完治
レメロン パキシル レスリン サイレース デパス→すべて断薬
高血圧症→完治
血圧175/115→110/70
オルメテック アムロジピン→すべて断薬
首・肩のひどいコリ→消失(筋トレ・ストレッチ・姿勢改善も行いました)
ミオナール インテバン軟膏→すべて断薬
その他に薬は飲んでいなかった次の症状も良くなりました
体重88kg→60kg(身長165cm)
脂肪肝・肝機能障害→完治
脂質異常症→完治
めまい・耳鳴り→消失
ED→復活!
花粉症→軽快
今から振り返ると、糖質制限食を始める前は、あれだけの量の薬をまじめに飲んでいたので、その副作用でどんどん体調が悪くなり、一方で病気の原因はなんら改善していかなかったのだと思います。
当時受診していた精神科医はなかなか薬を減らそうとしなかったので、クリニックの先生に相談しながら自分の判断で徐々に薬を減らしていきました。
この経験から私は次のことを学びました。
○人間の身体はすべて食べたものからできている
○健康も病気も精神も食べ物次第
○原因と結果を履き違えてはいけない
○自分の頭でよく考えてみる
話は変わりますが、もう他界した私の父親はパーキンソン病を長年患っていました。晩年は気管切開して人工呼吸器、胃ろう、手足が固まり指一本も動かせない状態でした。
そのこともあり、たがしゅう先生が神経内科医であり、かつ、糖質制限食推進派医師というところに凄く魅力を感じています。
これからも先生のご活躍を陰ながら応援しています。
Re: 私の場合
はじめまして。コメント頂き有難うございます。
種々の病気の改善素晴らしいですね。お見事です。
> もう他界した私の父親はパーキンソン病を長年患っていました。晩年は気管切開して人工呼吸器、胃ろう、手足が固まり指一本も動かせない状態でした。
一方お父様の件は残念でした。お辛かったであろうとお察しします。
一般的な神経内科医としては異端の意見になりますが、
私はパーキンソン病にも糖質制限は有効だと考えています。
今後少しでもパーキンソン病で悩む患者さんを減らせるよう微力を尽くしたいと思います。
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