やせ体質の人の断食の意義
2014/06/26 00:01:00 |
読者の方からの御投稿 |
コメント:10件
ゆりママ さんより以下の御質問を頂きました.
『私の場合は少し食べる量を減らすとすぐやつれてしまいます。
今も糖質制限しながら体重を、増やすことを意識しているのでなかなか量を減らせません。
しかし先生のおっしゃるように、食べることはリスクも伴うと思うので、少食で体重や健康が維持できたら理想です。
少食は、痩せている人や体重を増やしたい人には向かないのでしょうか? 』
この質問に対する私の考えは、実体験を伴わないのであくまで仮説になりますが、
食べていてもやせてしまうという人は、
消化吸収をつかさどる消化管の機能に何らかの故障があるようなものではないかと思っています。
その故障の正体が何であるかはわかりません.
しかし,故障が何であれ,人間の身体にはそれを自ら治そうとするシステムがいろいろと備わっていると思います。 そして故障を治そうとすれば、消化管を使用しないこと、すなわちある程度の絶食の期間が必要なわけです。
たとえ糖質をとっていなくとも、食べるという行為を続けてしまえば、
次々やってくる食べ物を処理するために消化管は働き続けなければならず、故障の修復が二の次になります。
その結果が、消化吸収が不十分になり、リーキーガット症候群などのトラブルを起こしたりするのではないかというのが私の考えです。
私の考えが正しければ、
やせすぎの人が少食や断食をすることによって、
食べても食べても太れなかったという弱った消化管機能が回復し、
再び食べる時には効率的に栄養が吸収できるようになっているのではないかと思うのです。
でも,すでにやせているというのに断食なんかしていたら、
そのままやせ細って死んでしまうのではないか、と思われるかもしれません。
ところが、長期に断食した経験者の方を話を聞いていると、
ず〜っと断食をしていると、普通に考えればそのまま際限なくやせていきそうなのですが、
予想に反して途中から体重が横ばいになってくるのだそうです。
しかも以下の本には、なんと3年も食べずに過ごすことができたという実体験が書かれています。
3年も食べなければ、普通の感覚ではやせていようと、太っていようと餓死するのではないかという気がしますが、
実際、この方は餓死するどころか、身体のあらゆる機能が活性化したという経験を理屈抜きで書かれています。
信じる信じないは個人の自由ですが、
もし本当だとすれば、これはカロリーの多い少ないだけで考えては説明できない現象です。
そして、なぜそのような事が起こるのかについては推測の域を出ませんが、
一つの可能性はエピジェネティクス(後天的遺伝子制御変化)です。
ヒトの遺伝子はONになっているものとOFFになっているものとがあり、
環境によってOFFになっている遺伝子をONに変えることができるという考え方です。
絶食という生命の危機に瀕するとヒトの遺伝子は、
OFFになっている遺伝子を次々とONにすることで、
食べなくてもエネルギーを節約したり,別のシステムを起動させたりするといった働きが高まり,
危機を乗り越えようとする潜在能力が発揮される可能性があります。
それを実証されている一例が脊髄小脳変性症を克服された森美千智代さんです。
つまり、やせすぎの人が少食や断食をすることで、
危機的状況に瀕した身体がそれに反応して、
今まで眠らせていた遺伝子をONにしていくことで、
体重増加にも寄与してくれるのではないかと思うのです。
この事は、肥満サイドにいる私では到底実証できませんし、
本当にうまくいくかどうかの保証も全くありません。
しかし、私はやせ体質の人が経験するマイナートラブルを解決する鍵は、
その辺りにあるのではないかと思っています。
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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私の質問に対して先生のお考えを丁寧に書いて下さり、とても勉強になりました。
今まで食べる量が少しでも減るとすぐやつれてしまう体質ですが、先生のおっしゃるように断食をして消化吸収が良くなると聞き、
以前断食を試みたこともあります。
ですが、その時の断食は失敗に終わりました。断食道場に10日間行ったのですが、1日食べないだけで、胃が荒れてしまい吐き気や頭痛に襲われ、立つこともできず、指導者から中止しましょうと言われ結局残りの日数は玄米のみを少量食べるようなやり方に変更されました。
もちろん体重は一気に落ちてガリガリにやつれて帰りました。
そんな経験があるので、なかなか断食には踏み込めず、、でもやはり先生のおっしゃるように断食がうまくいけばきっとこの体質が改善するのではと、思っております。
糖質制限を知った今では、玄米のみを少量食べていたことに問題もあるように思います。
とにかく、実体験なしにはいつまでも解決しないのでもう一度体調のいい時に再挑戦したいとは考えております!
その時の体験談は、また情報提供させて頂きます。
長々と失礼しました。
たがしゅう先生、ありがとうございます。
Re: この話は、こわいです。
率直なコメントを頂き有難うございます。
おっしゃる事はごもっともです。本来断食は医学的安全が確保された環境で行うのが一番いいと思います。
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
> 断食道場に10日間行ったのですが、1日食べないだけで、胃が荒れてしまい吐き気や頭痛に襲われ、立つこともできず、指導者から中止しましょうと言われ結局残りの日数は玄米のみを少量食べるようなやり方に変更されました。
貴重な御報告だと思います。
やせ体質の人は基本的に「インスリン分泌能が低い」というのは以前の私の考察です。
2013年11月9日(土)の本ブログ記事
「見えないやせのメカニズム」
http://tagashuu.blog.fc2.com/blog-entry-81.html
も御参照下さい。
一般的には絶食から48~72時間後に、急激なケトン体上昇に伴う一過性のアシドーシスをきたし、頭痛や嘔吐に襲われる事が知られています。一方で断食の世界ではこれを好転反応と呼び、これを乗り越える事で体質が改善するというふうにも言われています。
ところがゆりママさんの場合は、それが24時間以内に起こっているということで、
もしかしたらやせの人は、インスリン分泌能が低いが故に、普通の体型の人よりケトン体が急上昇しやすいのかもしれません。
24時間断食が辛ければ、最初は半日断食からというように徐々に慣らしていくやり方もあると思います。あるいはそもそも断食などしないというのでも別にいいと思います。私の話は参考程度にして下さい。
いずれにしても「いかに食べるか」ということばかりが注目される中で、「食べないこと」にも価値を見出し始めている今日この頃です。
8日前に出産したものです
恐れ多いですが、私も不食について昨今良く考えております。
タイトル通り先週に出産しました。LCHFP/MEC食を半年続けた自分にとっては一日の食事は妊娠/産後に拘らずかなり減り、1.5食で今だに満足しています。食欲も朝はなく、毎日18時間の断食に成功しています。
母乳は赤ちゃんを満足させられるほど十分でるし、新生児の体重増加も順調です。一方、私の体重は既にBMI20を切り平均値になりました。体温は平均36.7、血圧も大体120/70を推移しています。
私は、新生児に対して、無理に栄養過多なミルクを与えるのは如何なものだろうか?そんなに人の子は弱いか?そういうことも良く考えます。というのも中国人の自分の主人当人は妊娠7カ月の超未熟児で生まれ、中国の田舎で何の医療も充てがわれず自宅分娩、母乳も出ず豆乳や芋汁だけで生き延びたのです。何という生命力か、感心しています。まさに先生の仰る生命力のスイッチが全てオンになったのではと想像しています。
Re: 8日前に出産したものです
御出産おめでとうございます。また貴重なコメント頂き有難うございます。
> LCHFP/MEC食を半年続けた自分にとっては一日の食事は妊娠/産後に拘らずかなり減り、1.5食で今だに満足しています。食欲も朝はなく、毎日18時間の断食に成功しています。
> 母乳は赤ちゃんを満足させられるほど十分でるし、新生児の体重増加も順調です。一方、私の体重は既にBMI20を切り平均値になりました。体温は平均36.7、血圧も大体120/70を推移しています。
新生児がケトン体を利用している事に関しては、
今年の初頭に産婦人科医の宗田先生が発表なさっていましたね。
母子ともに順調なようで何よりです。
> 中国人の自分の主人当人は妊娠7カ月の超未熟児で生まれ、中国の田舎で何の医療も充てがわれず自宅分娩、母乳も出ず豆乳や芋汁だけで生き延びたのです。何という生命力か、感心しています。まさに先生の仰る生命力のスイッチが全てオンになったのではと想像しています。
同感です。
ヒトの身体には私たちが想像する以上に、食べることに依存しない生命力が秘められているような気がいたします。
管理人のみ閲覧できます
なのでやってみようと思います!!
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
ただ予備知識のないまま断食をする事は一定のリスクを伴いますので、
実践される場合は、管理された場で行うか、もしくは十分に勉強した上での自己責任でお願いします。
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