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「食べる」についての再考

category - ふと思った事
2014/ 06/ 24
                 
今日は「食べる」という行為について,

少し大きな視点でとらえてみたいと思います.

先日のビッグヒストリーの記事でみたように,

ヒトの生命活動を化学反応の連続ととららえるならば,

その化学反応を理想的な状態に保つための条件として重要な事は,3つありました.

1.適度なエネルギー
2.様々な化学物質
3.水などの液体


これを保つために,ヒトという生物がとった戦略の一つが「食べる」という行為です.
            

「食べる」ことによって,適切なエネルギー,様々な化学物質,水分の全てを手に入れる事ができるわけなので,これは合理的な行動に見えます.

だから我々は,「生きる事は食べること」だと考え,

とりわけ糖質制限について考える人達は,その意義を根本的に見直そうとしているわけです.



しかし,一方で人類の歴史は長く飢餓との戦い,その連続であったと考えられています.

そう簡単に「食べる」という行動に移せたわけではなく,狩猟や採集と行った活動によってようやく得られる報酬でした.時には獲物を得られず数日間食べられずに過ごすという事もきっとあったことでしょう.

そうした歴史を生命の起源である単細胞生物の時代から振り返れば,約40億年もの長きに渡って基本的に飢餓であったという事になります.

そんな中,生命は食べなくても生命活動を維持させるための新たな戦略をDNAという設計図に書き込み続け,

飢餓においてもできるだけ化学反応を理想的な状態に保ちやすくするような遺伝子,「倹約遺伝子」を発達させてきたと思います.

つまり,生物は「食べる」という不確実な行為に頼るのではなく,食べなくても現状維持できる戦略をかなり発達させてきた歴史があるのです.

しかも「食べる」という行為自体,なかなかにリスクを伴うものでした.

食べる事によって細菌を一緒に摂取して感染症に罹患するおそれもあったわけだし,

痛んだ食べ物や毒物を摂取する事によって,生命の危機にさらされる危険もあったわけです.

これは食文化が整った現在我々が食べているものも例外ではなく,

腐敗や感染のリスクの代わりに,食品添加物や抗生物質などの薬剤を同時に摂取するというリスクを抱えています.

そのように考えると,

今は「食べる」という事は,生きていくための基本でかつ,

お金さえあればほぼ確実に実践できる安定的な生命活動の一つと認識されていると思いますが,

歴史を振り返れば,生物にとって「食べる」という行為は,

長く生命を維持するためには必要だが,必ずしもいつも実行できるとは限らない,しかもリスクを伴う行為』であったとも考えられます.


さて,ヒトの腸管は構造がシンプルで、腸内細菌との共生を必須とせず、

自前の消化酵素を持ち他の動物の肉を分解することによって腸内細菌の力を借りることなくエネルギーを得るというシステムである事から,

本来ヒトは肉食動物であるという考え方が有力です.

その一方で消化酵素を発達させる事によって,植物も分解して自らの栄養草食に柔軟に対応する事ができるというのがヒトのすごいところです.

とはいえ,自らが動物であるヒトにとっては,

同じ動物を食べた方が,植物を食べるよりも自分の構造を維持するために必要なタンパク質をそのまま効率的に獲得する事ができるわけですが,

動物を食べるためにはある程度の労力とリスクを伴います.

一方の植物は,手に入れることは比較的容易ですが,

食べる事によって動物とは違うタンパク質を獲得するために生体を維持するのに比較的効率性が劣るというのと,

植物が産生する毒素を一緒に摂取するというリスクを伴います.アルカロイドもその一種でした.

ただし,動物の場合でも,フグ毒のような例外もあります.

このように「食べる」という行為にはリスクがあるわけですが、

「動物性食品」は獲得が大変だが、現状維持には効率的でややリスクの低い食品」
「植物性食品」は獲得は容易だが、現状維持には非効率でややリスクの高い食品」

という傾向があるように思えます。

ならば、動物性食品を中心にリスクを最小限にするという観点も重要で,

「野菜はヘルシー主義」もほどほどにしておく必要があると思いますが,

そしてそれ以上に私は,「できれば少なく食べて,それで現状が維持できるのであればそれに越したことはない」という考えに至りつつあります.


「でも,食べる事は楽しみです.それを否定するのはどうでしょうか.」

そんな声が聞こえてきそうです.

確かにこの考え方は理想論だと思います.皆さんに推奨するような類のものではありません.

しかし,こと病気の治療という事になってくると理想は追い求める必要があります.

私のように糖質制限を長くし続けているにも関わらず,

完全な標準体重に達していない人間にとっては,

まだ肥満症の治療は完了しておらず,理想的な状態に持っていくには糖質制限だけでは十分ではないのです.

その障壁となっているのが,「食べる事は生きるための基本」という考え方そのものであり,

「食べる事は生きるための楽しみである」という価値観なのではないかという思いに至っています.

別の言い方をすれば,私はまだ自分が「食べる」という行為の習慣依存症ではないかと思っているのです.

私の身体には脂肪というエネルギーがまだ余剰に蓄積されており,

生命を維持する化学反応を理想的な状態に保つための条件の一つである「1.適切なエネルギー」となっているとは到底思えません.

となれば,次に私がすべき事は「少食療法」という事になってくると思います.

その際,「2.様々な化学物質」「3.水などの液体」にも気を遣う必要があります.

そして,少なくとも肥満が残っているヒトにおいては,

「ヒトは生きるために毎日食べなければならない」という常識自体も,

抜本的に見直す必要があると思っています.


たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

塩分
>>「2.様々な化学物質」に気を使う必要あり

最右翼は塩分の摂取についてでしょうか?
自分は塩分の習慣性は糖質よりも強力に感じて苦戦しております。

御参考:かくちゃん先生のブログより
「炭水化物と食塩」のヒミツ
http://ameblo.jp/jykdkk/entry-11850433522.html
Re: 塩分
ゴロンタ さん

 コメント頂き有難うございます.

 塩分についても適量を目指す必要があると思いますが,

 優先順位としては,糖質を制限する方が先だと私は考えています.
たがしゅう先生、こんにちは。
いつもブログ楽しく拝見させて頂いてます。とても興味深い内容でしたので、コメントさせて頂きます。
私も少食でいけるならぜひともそうしたいものです。
しかし、私の場合は少し食べる量を減らすとすぐやつれてしまいます。今も糖質制限しながら体重を、増やすことを意識しているのでなかなか量を減らせません。
しかし先生のおっしゃるように、食べることはリスクも伴うと思うので、少食で体重や健康が維持できたら理想です。
少食は、痩せている人や体重を増やしたい人には向かないのでしょうか?

私も1日1食にするのが理想ですが、
空腹時間が長すぎるとアドレナリンが出て副腎が疲労し、様々な症状が出るとも聞きます。
たがしゅう先生は副腎疲労についてはどう思われますか?副腎のためには、やはり空腹をつくりすぎない方が良いのでしょうか。
お忙しい中申し訳ございませんが、ご意見お聞かせ下さい。
宜しくお願い致します。
Re: タイトルなし
ゆりママ さん

御質問頂き有難うございます。

> 私の場合は少し食べる量を減らすとすぐやつれてしまいます。
> 少食は、痩せている人や体重を増やしたい人には向かないのでしょうか?


この質問に対しては私は自分なりの考えを持っています。

ただ、あくまで実体験を伴わない仮説だというのと、説明しようとすると少し長くなります。

なので詳しくは後日改めて記事で御返答させて頂きます。

> 空腹時間が長すぎるとアドレナリンが出て副腎が疲労し、様々な症状が出るとも聞きます。
> たがしゅう先生は副腎疲労についてはどう思われますか?副腎のためには、やはり空腹をつくりすぎない方が良いのでしょうか。


「副腎疲労と糖質制限」についてもいずれ記事にしたいと考えていますが、

まだ関連本の読み込みが不十分で、時間がかかっています。今しばらくお待ち下さい。

一つ言える事は、少々食べないくらいではアドレナリンはそうそう駆動されないかもしれない、という事です。

具体的には私の場合、1週間断食してもまだアドレナリンは出ませんでした。ただこの事にはおそらく個人差が大きいと思います。
糖質制限で痩せる範囲とは
私は3ヶ月程度の糖質制限で16キロほど痩せまして、以前のBMI30越えの状態から、26〜7程度の状態にまで来ました。
まあ日本の基準で言えば肥満ですし、海外でもoverweightなんでしょうが、このところ体重の減少が止まったか、明らかに減少の速さが落ちました。
今までかなり太っていた分、速度が落ちるのも仕方ないとは思うのですが、それにしても落ちない感じがします。
江部先生はBMI22〜23で落ち着くとよく仰いますし、気長にやればいいとは思うのですが、私はそこまでいかないんじゃないかと少し思うんです。

と言いますのも私はもう小さい時から肥満でして、いま目指している標準体重は中学生入学程度の体重に相当します。
成長で様々体の組成はかわったとは思いますが、そういう時期にそんな体型だったが故に、標準体重というものが普通よりも多くなるようプログラムされてしまったのではないかと疑っています。
よく成長期に脂肪細胞の数が決定されて、云々と言いますしね。

まだ糖質制限をして浅いですから停滞期なのかもわかりませんが、今まで停滞期を感じずにここまで来れたものですから、ちょっと考えものです。
たがしゅう先生も糖質制限による体重減少が止まっているとの事ですから、糖質制限のみで痩せられる限界というものが人によって何処かに起因している部分があるのかもしれませんね。
Re: 糖質制限で痩せる範囲とは
mina さん

 コメント頂き有難うございます.

> 糖質制限のみで痩せられる限界というものが人によって何処かに起因している部分があるのかもしれませんね。

 そうかもしれません.

 多分,現状維持という目的なら糖質制限で十分達成できると思うのですが,

 今まで知らずに受けてきた糖質の害の部分の古くから蓄積されている部分,いわば『負の遺産』については古ければ古い程糖質制限だけで解消するのは難しいと思うのです.糖質制限によって速やかに改善するのは,比較的新しい時期の糖質の害だけではないかということですね.

 ただ私は古い時期の害もできる限り取り除く方法論を確立したいと考えています.そのためにまず自分の身体でいろいろと試しているところです.
Re2: 塩分
御返事有難うございます。
私も糖質は最優先で減らしました。
(家族の糖尿病対策で共に糖質制限食を開始して約一年になります。)
最近、それに加えて減塩を意識しだしたところです。
糖質の次には塩が重要かと思ったのです。
言葉が足りずに申し訳ありませんでした。
Re: Re2: 塩分
ゴロンタ さん

 コメント頂き有難うございます.

 塩分を調整する人体のシステムは充実しているので,基本的には糖質ほど厳密に制限しなくても体が調節してくれると思います.

 ただし,腎機能,内分泌機能が弱っていたり,食塩感受性遺伝子があるような人は注意が必要です.

 私の場合は,糖質制限をして解決しない問題(例:高血圧など)が出た場合に初めて,塩分量にも注意するというスタンスですね.