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強引な論理展開に気付かない
ゆほびか 2014年 07月号 [雑誌]
大学教授が10kg減!ご飯・パン・パスタもOK!
糖質を食べてもこうすればやせる
20年の追跡調査で判明!「糖質を食べたほうが長生き」
次に糖質制限批判をしているのは,
島原病院肥満・糖尿病センター長・京都府立医科大学客員教授の吉田俊秀先生です.
(以下,引用)
【厳しい糖質制限はかえって逆効果】
私は30年前,京都で肥満外来を立ち上げてから,これまで5000人以上に肥満治療を行ってきました.
その中には,ひざや股関節の手術をするために,短期間で体重を大幅に落とさなければならない人もいます.
そのような切羽詰まった人には,短期間,お菓子はもちろん,パンやご飯,麺類,イモ類などの糖質(炭水化物)を一切とらないよう指導することがあります.
こうした糖質制限を行うと,50人いれば48人は減量に成功します.糖質制限食には,それほど高い効果があるのです.
しかし,これはあくまで短期間でどうしてもやせなければならない人に限った話です.
一般的な人のダイエットでは,3か月とかもう少し時間をかけて,ゆるやかに体重を落としていく事が理想です.
その場合,あまりにも厳しい糖質制限は,かえって逆効果です.
糖質を全くとらないと,イライラしてストレスがたまり,ついケーキやチョコレートといった甘いものに手が伸びてしまうからです.
ネズミを使った実験では,7年間糖質を与えずにいたら,動脈硬化が促進したという報告もあります.
カロリーを補うため,脂っこいものを好んで食べるようになり,血管の壁に脂がたまって,結果的に早死にしてしまうというものです.
これはネズミのデータですが,人間の場合でも,糖質制限食は,現時点ではまだ,決して安全性が保障されているとはいえないでしょう.せっかくやせても,健康が損なわれたのでは意味がありません.
(中略)
普段,私は料理にも砂糖を使わず,人工甘味料で代用しています.
それでも,たまに砂糖入りのコーヒーを飲んだりすると,
甘いと思う半面,気持ちがホッと安らぐのを感じます.
これは,糖質をとることで,興奮を抑える脳内の神経伝達物質「セロトニン」が増えるからです.
逆にストレスがかかるとセロトニンは減少します.
イライラするとつい甘いものに手が伸びるのは,脳内のセロトニンを回復させようとする体の反応なのです.
前ページで「ダイエット中の食事で糖質を制限しすぎると,イライラして甘いものに手が伸びてしまう」と述べたのも,そういう意味です.
つまり,ダイエットを成功させるには,
食事である程度の糖質をとることはもちろん,
日常生活の中にストレスがあるなら,それを解決して,甘いお菓子を食べてしまうのを防ぐことが重要です.
(引用,ここまで)
島田先生は糖質制限で減量に高い効果があるということを認めながらも,
最終的には「極端な糖質制限は逆効果」という表現を使って,糖質制限を長期間行うことに警鐘を鳴らしています.
これまた「長期の安全性は保障されていない」とするお決まりの批判パターンです.
しかし一つ一つ読んでみると,これがまた,おかしな事をおっしゃっているのです.
例えば,「ひざや股関節の手術をするために,短期間で体重を大幅に落とさなければならない」とありますが,
手術をするためにやせるというのは何か変ではないでしょうか.
つまり,やせられないために膝や股関節に負担がかかってしまった結果,手術をするのであって,
やせられるのならそもそも手術をする必要がなくなるはずです.
それから,「一般的な人のダイエットでは,3か月とかもう少し時間をかけて,ゆるやかに体重を落としていく事が理想」という点についてですが,
よく1ヶ月に1-2kgくらいのペースでやせるのが理想的と言われますが,
それは糖質制限の価値観がない人にとって,1ヶ月単位で急激にやせるのはがんや糖尿病,甲状腺機能亢進症などの病的な状態を彷彿とさせるからだと思います.
しかし私は糖質制限をすることで,10カ月で30kgの減量に成功しました.1ヶ月に平均3kgのペースですね.
そのようなハイペースでやせて,何か体に悪い事が起こったかというと,そんな事は全くありません.むしろすごいスピードで体が回復していくのを感じました.
その経験を通じてみると,「「一般的な人のダイエットでは,3か月とかもう少し時間をかけて,ゆるやかに体重を落としていく事が理想」という事態が勝手な思い込みだという事がわかります.
次に,「糖質を全くとらないと,イライラしてストレスがたまり,ついケーキやチョコレートといった甘いものに手が伸びてしまう」についてですが,
糖質制限の理論がわかれば,このイライラが糖質中毒の離脱症状だということがわかります.
離脱症状は中毒の原因物質を再摂取することで軽減しますが,その代わりいつまでたっても中毒から抜け出すことができません.これはニコチン中毒や覚醒剤中毒などと同様の構図です.
しかしこの先生は,「ストレスがあるとセロトニンが減少し,イライラするとつい甘いものに手が伸びるのは,脳内のセロトニンを回復させようとする体の反応」という見解を示していますが,これは解釈を誤っています.
というのもストレスは直接セロトニンに影響しません.
ただストレスがかかった状況において,セロトニンが十分に働いていれば,その状態を乱れた神経伝達物質(ドーパミン,ノルアドレナリン.グルタミン酸,GABAなど)を調節する事ができます.
従って,セロトニンが少ない状況だと,その調節が効かずストレスによって体が悪影響を受けやすいという事にはなりますが,
ストレスのせいでセロトニンが減少するという事実はないのです.要するに原因と結果をはき違えています.
そして糖質をとるとセロトニンが増えるというのは,確かに事実ですが,これも過去記事で触れたように,
「脳が回復しようとしている反応」というのは全く勝手な思い込みであって,実際は単なるセロトニンの強制刺激なのです.
つまり私に言わせれば,「イライラするとつい甘いものに手が伸びる」本当の理由は,
『糖質の離脱症状によって,脳内の神経伝達物質が乱れ,
ドーパミンを介して,再度糖質を欲するように身体が仕向けられ,
その結果,糖質を再摂取し,糖質によるセロトニンの強制刺激によって,何とか神経伝達物質の乱れを付け焼刃的に解消している』
という状態だと思います.
そして糖質には中毒性があるので,摂取した糖質の効果が切れる頃にまたイライラがくるという悪循環をひたすら繰り返してしまい,
ひいては,「私は甘いものが大好き」「甘いものだけはやめられない」という嗜好性が作られ,中毒から逃れられなくなってしまうのだと思います.
そして,ネズミの実験を持ち出して,人間の長期安全性が確保されていないという論理を展開していますが,
これはもう明らかにおかしいですね.
穀物を主食とするネズミと,基本肉食で雑食であるヒトを単純比較するのは根本的に間違っています.
もっと言えば,糖質を与えないという前提の実験でありながら,
「好んで脂っこいものを食べるようになった」という解釈をしています.おかしいですね.
だって糖質を与えていないのだから,主に食べるものは脂質,蛋白質で,必然的に脂っこいものを食べるしかない状況になるでしょう.
それをわざわざ「好んで脂っこいものを食べるようになった」と表現するところに,私は意図的なものを感じます.
最後に,一方で糖質をとる事を勧めておきながら,
甘いお菓子を食べるのは控えましょうと言っている.これは完全に論理矛盾です.
糖質も,甘いお菓子も,どちらも摂取すれば体の中で分解され,ブドウ糖に変化するわけで,化学物質として本質的に両者は同じものです.
それなのに,糖質であればとってよい,甘いお菓子はとってはダメと言っているのですから,
これは非科学的な批判と言わざるをえません.
なんでこんな事になってしまうのか.
それは「糖質は身体にとって大事なもの」という従来のパラダイムから抜け出せていないからです.
だからこそいくつもの論理矛盾に気が付かず,
都合のいいように原因と結果を誤解釈し,
強引に結論に導いてしまっているのだと思います.
本当に正しい理論には隙がないはずです.
これだけツッコミどころの多い見解が,
真実であるはずがないと私は思います.
たがしゅう
コメント
No title
例えばこの文章の糖をアルコールに置き変えてみたら…誰が見ても依存症ですもんね。
それに、読んでいてまるで栄養素が糖と脂しかないような印象も受けます。
私も今糖質制限中ですが、巷に聞くトラブルは一切ありません。
お昼に眠くなることもなく、肌のトラブルも無くなりました。
肉に併せて野菜を食べるようになったので、以前より食生活のバランスが良くなったのが理由だと思います。
自分で考えての決断でないと挫折する典型的なパターンだと思うのですが、悲しいかな、普段そんなに考えなくとも生きてはいられるのですよね。そこから抜け切れていないのだと思います。
2014-06-14 03:30 タバスコ URL 編集
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
依存症って、離脱しないと自分がそうだと気が付かない事が多いです。
糖質依存はその最たるものだと思います。しかもその害がすぐに現れるのではなく、じわじわゆっくりと現れるから余計にたちが悪いです。
糖質依存と気づいていない人に、糖質制限の良さはわかりようがないと思います。まさにおっしゃるように、それはアルコール依存症の人に断酒の良さを理解しろというのと同じくらい難しい事ですね。
何はともあれ中毒物質から一旦身を引いてみること。話はそれからだと思います。
2014-06-14 03:40 たがしゅう URL 編集
動物実験はあてはまらぬ
ところがヒトに一番近いサルでも催奇形性は証明されませんでした。哺乳動物の中で、唯一ウサギのみに催奇形性が確認できました。これ以来、催奇形性の実験には、必ずウサギが使用されるようになりました。
このように、動物実験の結果はヒトにはそっくりあてはまりません。
2014-06-14 09:25 精神科医師A URL 編集
ネズミさん
いつも、心に響く内容で愛読しております。
コメント、思わずしてしまったのは、私が動物好きだから気付いただけなのですが、”ネズミに7年間糖質を与えなかったら”という一文に??実験用のスーパーラットなのでしょうか?一般的にはネズミの寿命は3年とか5年ではないのかなぁ?と思いました。
これからも、ブログ楽しみにしております。
たがしゅうさまの大ファンです。
2014-06-14 15:42 yuri URL 編集
Re: 動物実験はあてはまらぬ
コメント頂き有難うございます。
> 動物実験の結果はヒトにはそっくりあてはまりません。
その通りです。
動物実験の結果はヒトへの影響を何も証明できていないのに、あたかも危険であるような印象を与えるような書き方は、明らかな意図が見えます。
それにしっかり科学的に吟味すれば、現時点でも糖質制限が危険でない事はちゃんと判断できると思います。
2014-06-14 19:20 たがしゅう URL 編集
Re: ネズミさん
御愛読頂き有難うございます。嬉しいです。
ネズミの実験、そんなところにも盲点あるのですね。ますます信頼度が失墜してしまいます。
2014-06-14 19:33 たがしゅう URL 編集
実験動物の寿命
佐藤徳光 著
P214-217
◇動物の寿命
マウス、ラット、ハムスター 2~3年
モルモット 4~5年
2014-06-15 08:15 精神科医師A URL 編集
Re: 実験動物の寿命
情報を頂き有難うございます.
> ◇動物の寿命
> マウス、ラット、ハムスター 2~3年
> モルモット 4~5年
yuri さんの御指摘の通りでしたね.
2014-06-15 08:32 たがしゅう URL 編集
もちろんどちらも食べないのが一番ですが。
2015-03-07 12:57 ひで URL 編集
Re: タイトルなし
コメント頂き有難うございます。
御指摘のように、白米の糖質はかなり多いですね。甘いものを控えていても糖尿病になる人がいる理由がこういう所にあると思います。
2015-03-07 13:57 たがしゅう URL 編集