脂肪の役割と本来の姿
2014/05/25 00:01:00 |
素朴な疑問 |
コメント:12件
肥満というのはヒトならではの現象です。
野生動物に基本的に肥満は見られないと思います。
一方、女性は子供を産み育てる性質、または男性に対してより魅力的に見せる性質から、
男性に比べて皮下脂肪が多く、また女性ホルモンであるエストロゲンの働きによって、
乳房や臀部など適切な部位に適切な量だけ皮下脂肪が蓄積されるよう自己調整されています。
そしてその皮下脂肪はいざという時のエネルギー貯蔵庫としての役割も果たすのです。
しかし、こと肥満となってくると、この脂肪は厄介なものとなってきます。 エネルギーといってもあくまで貯蔵庫であり、
元々そんなにしょっちゅう使う性質のものではありません。
仮に,もしも肥満がすぐに使えるエネルギーだとしたら、肥満者はエネルギーに満ちあふれ、
スポーツなどでも多大なる好成績をもたらすはずですが、現実はそうなってはいません。
それに、肥満の領域に至ると何と言っても見栄えが悪くなります。
本来貯蔵する予定のなかったはずの場所に、緊急避難的に脂肪を蓄積しているものだから、
全体として本来のカラダの設計図とは違った仕上がりになってくるからだと思います。
世の中の多数派(マジョリティ)は,肥満体よりも標準体型の人を好むという事実も,
肥満が本来の姿ではないということを物語っています.
一方で,平安時代には太った女性が美徳とされていたり,
あるいは現在でも世の中には「デブ専」と呼ばれる,太った人を好む傾向のある人がいるということも事実だと思います.
私はこれまで「それは太った人間の弱みにつけこんでいるだけではないか」とどうにも納得がいかなかったのですが,
先日,自分は「デブ専」だというやせた女性とたまたま話す機会があって,「どうして太った人が好きなのか」を聞いてみました.
すると,「父親や兄弟が太っていて,そういう人が当たり前にいる環境の中で育ったせいか安心感がある」という,
環境によって体型に対する独特の価値観が形成されるという興味深い体験談を教えてもらいました.
しかしあくまでそういう人は現代の世の中では少数派(マイノリティ)であり,
多くの人にとって,標準体型の方が望ましいという事には変わりないと思います.
そしてそのいざという時の脂肪は、この飽食の時代の中で、
なかなか使用する機会にめぐり合うことがありません。
高度肥満の人は糖質制限をする事で、明らかにカラダにとって害である内臓脂肪は速やかに取れますが、
たとえ糖質制限であっても1日3食安定的に食べられる状況下では(あるいは私の場合は1日1〜2食であっても),そう簡単に貯蔵庫である皮下脂肪からエネルギーを取り出そうということにはならないようです.
皮下脂肪が貯蓄されているのは,言わば今まで糖質をとり過ぎてきたツケです.
過剰な皮下脂肪を使いきらない限り,本来の姿に戻ることはできません.
ではどうすれば皮下脂肪を使うことができるでしょうか?
それは貯蔵庫からエネルギーを使わざるを得ない状況,すなわち飢餓に追い込むことだと考えます.
すなわち絶食療法を組み合わせる事によって,
皮下脂肪を必要以上に蓄積しない,その人本来の身体に,
戻せる可能性があるのではないかと考えています.
もっと言えば,糖質制限のスタイルは,
もともとの人類の基本的な食事パターンだとは思いますが,
昔は1日1食ですら毎日食べられた保障はなかったと想像します.
言うなれば飢餓の連続であったのではないかと思うのです.
絶食療法を危険視する声もよく聞きますが,
人類の歴史の中で飢餓に対する対策をヒトはかなり万全に備えてきたのではないかと私は考えます.
それが証拠に,私も過去に2度ほど絶食療法を経験しましたが,
思ったよりも体調は崩れないものです.
勿論,自己責任の下にというのが大前提ですが,
今後もさまざまな絶食療法を試みてみようと考えている次第です.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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No title
体脂肪が多めで、筋肉量が普通の人が
絶食療法をするとして、、
身体はエネルギー源として
脂肪とタンパク質をケトン体とブドウ糖に
異化して使うんですよね?
ということはタンパク質の減少をどう管理するか
問題になってきますでしょうか
絶食中の脂肪、筋肉など諸量の経時変化
についての知見はあるのでしょうか
どうなのでしょう
また、私の経験では、糖質制限で朝食を摂らないようにしてみた時期に、体重は増加傾向になりました。
一日の食事量は変わらなかった、もしくは少なめだったにもかかわらず。
それで3食プラスαに戻しました。
たがしゅう先生が食べ過ぎのようにも見えませんし、食べないことでかえって貯めこむ能力を高めているということはないのでしょうか。
Re: No title
御質問頂き有難うございます.
> 絶食中の脂肪、筋肉など諸量の経時変化
> についての知見はあるのでしょうか
倫理的な問題のため,ヒトにおいてそれを調べたデータはないようです.
ただし,コウテイペンギンやラットでの絶食期間中のエネルギー供給は、そのほとんどが脂質からで(96%)、タンパク質はたったの「4%」しか使われていなかった,というデータがあります.
http://eikojuku.seesaa.net/article/267610692.html
個人的な感覚でも,そこに貯蔵した脂肪があるのに,生命に不可欠なたんぱく質,ひいては筋肉の方が先に分解されていくというのはどうにも不合理で起こりにくい事ではないか,と感じています.
Re: どうなのでしょう
御質問頂き有難うございます.
> 絶食をするたびに、太りやすくなるという経験をよく耳にします。
> 食べないことでかえって貯めこむ能力を高めているということはないのでしょうか。
確かに,絶食を解除し復食する際には食べる量に相当気を付けていてもかなり太りやすいですね.水分が急に取り込まれる影響もあるのでしょうが,1回の食事で3-4kgは太ります.
ただしその傾向が永続的に続くわけではなく,あくまで一時的なものです.
私は糖質制限について理解を深めていく中で,「食事もリスクの一つ」という考えに至るようになっています.
朝,明らかに食欲が生じていない自分の姿をみていると,1日3食が正しいとはどうしても自分には思えないのです.
でもだからといってその考えを他者に押し付ける気は毛頭ありません.私自身は自己責任の下で,いかに少食で現状を維持できるかという方向性で,自分の体調をみながら着地点を探して行こうと考えています.
管理人のみ閲覧できます
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No title
私も食欲のない時に無理に食べる必要はないと思うのです、朝食というのは私の祖父母のような人が朝六時に起きて歩いて田んぼの水を見に行った後食べていたころの名残じゃないかと。
皮下脂肪は外傷や温度変化から内臓を守る機能があるのでけっして悪者ではないと思うのですがどうでしょうか。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
> 皮下脂肪は外傷や温度変化から内臓を守る機能があるのでけっして悪者ではないと思うのですがどうでしょうか。
そうですね.私も皮下脂肪は悪者ではないと思っています.
しかし,肥満する程多くの皮下脂肪は本来不要なものだと考えています.
自己流は危険でしょうか?
実はあれから、自分なりに考えて、プチ断食を取り入れてました。
元々、朝は水分のみで、お昼と、夕食を糖質制限食にしてましたが、
さらに、夕食を一日おきに、水分のみか、スムージーにしてみました。
空腹感はそれほど感じませんが、夕食、朝食と、食べてない時に、頭痛があります。
そういえば、以前二日ほど、酵素ドリンクを飲みながら自宅で断食した時も、尋常じゃない頭痛で、断念しました。
橋本病の持病を持っており、チラージン75を飲んでおります。
橋本病になってから、急激に七キロほど、太ったのを解消するために、糖質制限を始めましたが、、いまのところ体重は減ってませんが、体脂肪は3%ほど、減りました。
自己流で、プチ断食までして、ストイックにするのは、今の私には危険でしょうか?
お忙しいのに、長文失礼いたしました。
Re: 自己流は危険でしょうか?
御質問頂き有難うございます。
> 自己流で、プチ断食までして、ストイックにするのは、今の私には危険でしょうか?
断食(絶食療法)は興味はあるのですが、
糖質制限ほど理論が煮詰まっていないので、まだ広く皆さんにお勧めできるレベルには達していません。
従って今実践する場合は、あくまで自己責任の下に、自分の体調をみながらやっていくべきだと思います。
その際、あまりストイックになりすぎず、マズイと思ったら引き返す勇気も必要だと思います。
また、一般的には絶食から48〜72時間程度で急激なケトン体の上昇に伴い一過性のアシドーシスを起こし、頭痛、めまい、吐き気などを一時的に起こすことがあるということは知っておく必要があります。
ただこの反応は腎臓などで代償されるまでの一時的な反応であり、断食の世界では好転反応と呼ばれています。これを乗り越えれば一種のカタルシスが得られ体調が好転すると言われていますが、正直私にとってはまだ未知の領域なので詳しくはわかりません。
まぁ、いずれにしても、第一には「あまり無理をしないこと」ですね。
古い記事に失礼
断糖の世界では人類古来の自然な状態というのが命題のように問われますが、
そもそも適度な脂肪の乗り方をしている状態というのが自然であるならば、
絞れている状態ってのは不自然なわけです。
人体はその前に危機的状況に陥る前の手をうち始めます。
野生の頃はそれこそ飢餓との戦いです。
餓えても大丈夫なように早々訪れない食事に備えて脂肪を溜め込みます。
逆に餓えた状態が無ければ筋肉でなく安心して脂肪を使いやすくさせ、開放します。
もう一度言いますが、健康体重以下のアスリート体型やモデル体型は不自然なんです。
逆に生活強度以上の筋肉も不自然なんです。
どちらも人体にとって自然なやり方をしていたらホメオスタシスの言いなりのままに調整されます。
体に脂肪をつけて次に備える。これが自然。
理想の体系が腹筋バキバキの体であれば、
脳が餓えないという状態だけでなく、ホルモンの作用を含めた身体も
不自然に『餓えてない』という状況下に置くことが重要なのです。
その必要があれば、ということになりましょうが。
Re: 古い記事に失礼
コメント頂き有難うございます。
なるほど、やせたり筋肉をつけたりするためには、人為的に不自然な食事の摂り方をしなければならず、
そうして達成成し遂げられた体型は不自然な状態だけれど、それで本当にいいのかという問いを投げかけられているようですね。
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