身体のバランスを大切にする

2014/05/07 07:10:04 | ふと思った事 | コメント:8件

自然のバランスを崩すとよくない事を示す別の例です.

以前更年期障害について取り上げましたが,

この病態の本体は.閉経という卵巣機能停止に伴う女性ホルモンの低下にありました.

という事は女性ホルモンを薬で足せば症状が改善するのではないか,と思われるかもしれません.

実際に女性ホルモンを補充する「ホルモン補充療法(hormone replacement therapy:HRT)」という更年期障害に対する治療法があります.

確かにHRTによって症状を改善できる可能性がありますが,

しかしこの治療法には大きな問題点があります.
そもそもエストロゲンは女性の女性らしい体つきを創るのに一役買っています.

具体的には,取り込んだ脂肪を乳房や臀部などへ皮下脂肪として優先的に蓄積させる働きがあります.

通常その働きは思春期を超えるまでもたらされ,

そしてその後エストロゲンの分泌は視床下部,下垂体といった中枢組織から微妙な調節を受け,月の単位で変動し月経周期を形成しているのでした.

一方でエストロゲンは余計な部位に脂肪をため込ませない働きも持っています.

LPLは細胞外で、血液中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセロールに分解し、脂肪細胞内などに遊離脂肪酸を取り込ませて結果的に内臓脂肪として中性脂肪貯蔵を促進するのですが,

エストロゲンはこのLPLの働きを抑制する機能があります.

逆にエストロゲンが少なくなる更年期,閉経後などにはLPLの活性が高まり,太りやすくなってしまいます.

ちなみにインスリンも脂肪組織におけるLPLの活性を上昇させる働きがあります.肥満ホルモンと呼ばれる所以ですね.

ところで,男性で「女性化乳房」という現象がみられる事があります.

女性ホルモンを分解する肝臓の働きが低下した時や,女性ホルモンに似た働きをする薬(例:前立腺疾患治療薬、男性型禿髪症治療薬)を使用した時などですが,

また男性ホルモンも過剰に投与されると芳香化という代謝を受け,女性ホルモンに変換されるので,

ドーピングなどの男性ホルモンの過剰投与・産生によっても女性化乳房が起こる事が知られています.

さらに内臓脂肪でもエストロゲンは生成されるので,

メタボリック症候群で内臓脂肪が蓄積した男性でも女性化乳房がみられる場合があります.



少し話が脱線してしまいましたが,

前述のホルモン補充療法の大きな問題点というのは無視できない副作用があるという事です.

実は女性ホルモンは過量になると女性器の細胞増殖を促し,乳がんや子宮がんの原因になってしまう事が知られているのです.

またその他にもホルモン補充療法の副作用として不正性器出血,乳房の張りや痛み,下腹部の張り,吐き気などがある事が知られています.

その理由は女性ホルモンを増やすことによって,それのみならず,

プロラクチンを増加させたり,それを介してドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質にも複雑に影響してくるという事があるからです.

このように女性ホルモンは人体において非常に重要な役割を果たしているとともに

そのバランスが極めて重要だという事がわかると思います.

薬で女性ホルモンを増やす事は,量を増やすという目的を達する事はできても,

変動や真の至適用量に対応する事はなかなか難しい事です.

やはり「足りなければ補えばいい」という発想だけではなく,

「有害になるものを引く」,ひいてはもともとの身体のバランスを大事にするという事が,

大切なのではないかと思います.



たがしゅう
関連記事

コメント

糖質制限と不正出血について

2014/05/07(水) 10:56:08 | URL | 美月 #-
糖質制限と不正出血について
私は卵巣のう腫と子宮内膜症の為、
ピル(ルナベル)を3年程服用しています。
不正出血は今まで一度も無かったのですが、
実は糖質制限をしてから、不正出血が少量ですがずっと続いています。
婦人科に聞いたところ、そのまま飲み続けてて大丈夫ですと言われました。
(ルナベルには不正出血がつきものらしいので)→糖質制限の事は言ってません。
この現象は女性ホルモンと関係があるのでしょうか?

専門外だと思いますが、仮説でもかまいません。
もし分かりましたら教えてください!
宜しくお願い致します。

2014/05/07(水) 13:38:05 | URL | とも #nfSBC3WQ
たがしゅう先生失礼します。
同じ境遇の方なのでお返事させていただきます。
美月さん、私も子宮内膜症でルナベル服用していました。糖質制限をどのくらい続けているのかわかりませんが、卵巣嚢腫、内膜症による辛い症状は収まってませんか?

私もルナベルをしばらく飲んでいたら突然口内炎が一度に沢山できてしまい、糖質制限して生理も調子がよくなってるし他の服用薬もないのにおかしい!と思いルナベルの副作用と捉え医師に相談したら、ルナベルの副作用に口内炎が一番最後に載っていましたとのことで、すぐに服用中止にしてくれました。定期的には受診はしています。

私はこの現象は、糖質制限したことで健康になり不必要な薬は要らないと体が主張⁉︎してくれたのかな…と考えてます。その証拠にQOLを著しく下げていた生理の症状はすっかり出ていません。完治ではありませんが収まってしまったのです。やはり、糖質過多の影響ですね。

ルナベルは保険薬ですが日本はすごく高いんです、、外国ではOC気軽に服用するイメージありますがやはりホルモン剤、医師も利益を考えるしずっと飲んで貰えれば…なんて辺りもよく考えて判断された方が良いと思います。

不正出血を訴えてるのにそのまま服用していい、なんて医師は変えるこたも考えた方がよいのでは?ちょっと信頼できません。

失礼します。

2014/05/07(水) 15:22:32 | URL | 美月 #-
ともさんへ
ありがとうございます。
私は今年3月から糖質制限しています。
始めて一週間程で不正出血が始まりました。

いつもなら休薬期間中の三日目に必ず消退出血があるのですが、
それがまったく無く、生理なのか、
不正出血なのか分からない状態が続いています。

それにしてもともさん、大変でしたね。
ルナベルで口内炎とは、、、。
私の場合、ひどい生理痛や、レバーのような塊が出ることはありましたが、
ルナベルを飲むようになってから一切ありません。
なので、症状が収まったかどうかはわからないです。
ですが、糖質制限をして改善されてるなら
ピルは飲みたくないです。
先日健康診断で検査をしたので、
その結果が出次第、かかりつけの婦人科へ行く予定です。

Re: 糖質制限と不正出血について

2014/05/07(水) 21:31:06 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
美月さん

 御質問頂き有難うございます.

> 実は糖質制限をしてから、不正出血が少量ですがずっと続いています。
> この現象は女性ホルモンと関係があるのでしょうか?


 私なりに少し考えてみます.

 糖質制限をする事で不必要なドーパミン分泌が減り,自然なホルモンバランスが戻ります.

 そもそも本来性器から出血すべき時期というのはエストロゲン,プロゲステロンが急速に低下する時,すなわち月経の時期です.

 もしかしたらルナベルを使う事によって隠れていた本来のホルモンバランスが,糖質制限をする事で顔を出して,その本来の月経のタイミングに出血が起こったのではないかと,すなわち,不正出血ではなく,「正しい出血」とでもいうべきものなのではないでしょうか.

 逆に言えば糖質摂取を繰り返せば,その都度ドーパミンが強制分泌されてしまい,視床下部からのGnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)の分泌不全をきたします.その結果,自然なホルモンバランスが乱れてしまうという事の裏返しでもあるのではないかと思います.

 もし間違っていたらすみません…m(__)m.

Re: タイトルなし

2014/05/07(水) 21:35:19 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
とも さん

 貴重な実体験を教えて頂き誠に有難うございます.

 糖質制限をする事で,子宮内膜症の症状は改善するのですね.それであれば,美月さんも糖質制限が軌道に乗ればルナベルを止める事もできるかもしれませんね.

> 医師に相談したら、ルナベルの副作用に口内炎が一番最後に載っていましたとのことで、すぐに服用中止にしてくれました。

 柔軟な対応の先生でよかったです.それにしても大変勉強になりました.重ね重ね有難うございます.

ありがとうございます。

2014/05/08(木) 09:26:04 | URL | 美月 #-
お忙しいところ、お返事いただきありがとうございました。
糖質制限をしてからの始めての検査(会社の健診)と、
近々婦人科にも定期健診に行くのでまたご報告させていただきます。
内膜症や、のう腫(チョコ)が少しでも小さくなっているといいのですが。
ありがとうございました。

まさしく私です

2014/06/19(木) 14:56:07 | URL | tomo #-
体質改善のため最近糖質制限をはじめました。
私は思春期に生死をさ迷う程の摂食障害になり、標準体重になっても生理が来ないので10代からずっとカウフマン療法をしています。
いま30歳で体外受精にて娘を授かりましたが、それまでの道のりも長く、薬漬けでした。薬を服用しなかったのは妊娠中くらいです。二人目を考えるようになりましたが、授乳が終わっても生理が来ないので、次の体外受精までまたカウフマン療法中です。
今まで、摂食障害の名残で、野菜や豆、カロリーの低いものしかとらず、妊娠中は玄米菜食、マクロビをしていました。(BMIは20)です
最近糖質制限やmecを知り、小学生以来!?肉や卵、油をとるようになりました。

今さらですが、身体が潤っている感じで女性らしくなってきた気がします。

でも薬がないとホルモン分泌しないのではと、怖い気持ちもあるので体外受精の前にカウフマン療法をしています。

最近薬の作用が強く感じ、デュファストン内服中にイライラ、不眠、倦怠感が強いです。

先生の記事を見て、このままだとずっと薬漬けなのでいつか薬から離れて自然のままでいたいな、と強く思いました。

Re: まさしく私です

2014/06/19(木) 22:09:57 | URL | たがしゅう #Kbxb6NTI
tomo さん

 コメント頂き有難うございます.

 カウフマン療法というのは,月経周期のホルモンバランスを模倣するように女性ホルモン剤を内服して排卵を誘発させるという治療法の事ですね.

> 最近糖質制限やmecを知り、小学生以来!?肉や卵、油をとるようになりました。
> 今さらですが、身体が潤っている感じで女性らしくなってきた気がします。


 素晴らしいと思います.よく決断されましたね.

 私もそうなのですが,長年痛め続けてきた自分の身体を本来の姿へ戻すのは,
 それ相応に時間がかかる大変な作業だと思っています.
 しかし私は糖質制限を続けることで,新たな学びが増えて,着実に前に進む事ができています.

 あせる必要はありませんが,長期的な目標を見据えてじっくりと,最終的にはドラッグフリー(薬なし)を目指して,糖質制限/MEC食を続けられるとよいと思います.

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する