月経関連片頭痛と糖質制限
2014/05/02 00:01:00 |
糖質制限 |
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エストロゲン低下がもたらす病態として月経前症候群,更年期障害と取り扱ってきました.
今回はそうした病態がきたす身体症状の中で頭痛について取り上げたいと思います.
頭痛をきたす病気にはいろいろありますが,最もありふれたものが緊張型頭痛,次に片頭痛と続きます.
片頭痛はもともと女性(特に低血圧の方)に多い事がわかっていますが,その理由については明らかにはされていません.
一方で,片頭痛の中に月経関連片頭痛というものがあります.
これはもともと片頭痛を持っている人が,月経の周辺の時期に片頭痛が増悪したり,発作が頻発したりする状態の事を指します.
先日述べたように,月経周辺の時期はエストロゲンが低下している事が多いので,
その事が頭痛に関連しているという事は言われているものの,どうしてそうなるのかという事についてははっきりしていません.
それではエストロゲンの低下と頭痛にどのような関連があるのかについて考えてみましょう. そもそも片頭痛のメカニズムには様々な説があるのですが,
その中の一つに「セロトニン仮説」というものがあります.
セロトニンというのは,神経伝達物質の一種で,脳血管の収縮と拡張に関わっています.
具体的には,何らかの原因によってセロトニンが脳内で大量に分泌されると,脳血管が収縮しますが,
その後セロトニンが速やかに分解されると,その反動で脳血管が拡張し,その時に血管周囲の神経が刺激されて「血管が脈打つような拍動性の」片頭痛発作をきたすと言われています.
そして脳内のセロトニンレベルが低いと、片頭痛を引き起こしやすいということもわかっています.
これはあたかもドーパミン基礎値が低い状態でドーパミンが乱高下すると精神症状をきたしやすいという話と似ています.
ちなみに,片頭痛発作の特効薬と呼ばれるトリプタン系という薬は,
このセロトニンの受容体を刺激する薬ですが,この薬の使用上の注意点は予防的に飲むと効かないという事があります.
それは,上述の仮説で言えば,セロトニンがなくなった時に血管が拡張してしまうのが発作の原因なわけだから,
セロトニンがなくなりそうなとき,すなわち少し頭痛がし始めた時に飲まないと効き目がないというわけです.
さて問題は,エストロゲンの低下とセロトニンの低下に関係があるかどいうことですが,
これはプロラクチンがある事でつながります.
エストロゲンがプロラクチン分泌を促進するという事は以前述べたとおりですが,
実はプロラクチンはセロトニン分泌を刺激します.
プロラクチン刺激により発達した乳腺がセロトニン合成の律速酵素であるトリプトファンβ水酸化酵素を発現するからです.
しかも逆にセロトニンもプロラクチン分泌を促進する事もわかっています.
詳しいメカニズムは不明ですが,セロトニンの神経終末がドパミン神経の細胞体にシナプス結合をしているので,
プロラクチン抑制因子であるドーパミンの分泌を抑制してプロラクチン分泌を促進している間接作用の可能性が指摘されています.
とにかくプロラクチンとセロトニンは相互に作用しあい高め合うということですね.
従って,次のようにまとめる事ができます.
「エストロゲン低下⇒プロラクチン低下⇒セロトニン低下」
そういうセロトニンが基本的に低下した状況下で,急速にセロトニンが高まるような誘因が加われば片頭痛発作につながりやすいという事になります.
となればもうおわかりだと思いますが,セロトニンを強制的に分泌させる刺激の一つが糖質摂取です.
セロトニン仮説が正しいとすれば,普段よりセロトニンを安定的に供給できるようにすることが片頭痛発作を起こさないようにするためには大事な事になると思いますが,
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから合成されますので,
必然的にしっかりとタンパク質を取る事が必要だという事になります.
糖質制限をすればセロトニン不足下での不必要なセロトニン分泌を避けられるし,基礎セロトニンを供給するためのタンパク質もしっかり確保する事ができます.
だから,糖質制限をすれば月経関連片頭痛を抑える可能性が高いと考えます.
もっと言えば,片頭痛全般に糖質制限は有効であることもわかっています.
考えれば考えるほど都合の良い糖質制限ですが,
それだけ糖質の問題が根源的なところにあるという事の裏返しだと思います.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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