良くなってこそのやりがい
2014/04/29 00:01:00 |
医療ニュース |
コメント:6件
私は今,認知症の問題に取り組んでいます.
先日このようなYahooニュースが流れていました.
<介護職>低い賃金で疲弊 相次ぐ離職「仕事夢ない」
介護の現場でも,認知症の問題は深刻です.
施設に入所するような重度の認知症の方は,食事や排泄の問題のみならず,徘徊,睡眠異常,嚥下困難,幻覚・妄想など様々な問題を抱えています.
そんな中,介護職の方はそうした問題に逐次対応して行かなければならず,本当に大変な仕事だと思います.
その介護職の賃金が低く,やりがいを感じられずやめていく人が多くなってきているという今回のニュースです. 「生活を続けていく上で介護が必要な人の生活を支える」という点で,介護の仕事は非常に意義深いと私は思いますが,
実際問題として介護を受ける方の高齢者の方々は徐々に弱っていく事が多いわけです.
ましてや,認知症があって,自分が行っている介護が感謝してもらえないどころか,時には暴言を吐きかけられる事もあったりすると思います.
そんな日々が続けば,その仕事にやりがいをなくすのも無理もないのではないでしょうか.
しかも,そんな状況にも関わらず,低賃金というのであれば尚更です.
ニュースでは賃金を見直すべきだとまとめられていましたが,
私は根本的には,多くの場合,『介護されてもよくならない』と認識されているところに問題があるのではないかと思います.
我々医師の仕事もそうですが,
医療・介護に携わる人間としては,関わった相手が何かしらよくなってこそ,
その仕事にやりがいを感じるというものではないでしょうか.
私だって薬を出すために医師になったわけではありません.
初心を思い返せば,患者さんと呼ばれる人の力になりたかったから,医師になろうと思いました.
介護の職を選んだ人もおそらく通じるものがあるのではないでしょうか.
そう考えれば,介護をする事によって,介護される方が良くなってもらわないとやりがいを感じようがないと私は思います.
従って,やりがいを感じるためには,「良くなってもらうためにはどうすればいいのか」という事を考えなければなりません.
そしてその事に対して糖質制限の考え方は一筋の光を与えます.
私は糖質制限を通じて,糖質というものが様々な病気の根源的なところに影響している事を知りました.
いわゆる老年症候群と呼ばれる病態,認知症、骨粗鬆症、低栄養、嚥下性肺炎、活動性の低下など・・・
それら全てに糖質が関わっていると言っても過言ではありません.
という事は,これだけ介護される人が増え,そして徐々に悪くなっていく状況には,
糖質の問題を放置している事が大きく関係しているかもしれないのです.
介護の現場でも,糖質制限を取り入れることで,状況が改善していく可能性は十分にあると私は考えます.
それを本気で実行に移すためには,一人ひとりのスタッフの意識改革が必要です.
そういう意味で日々糖質制限を実践し,勉強を続けていく事には大きな意味があります.
もし介護の現場で糖質制限を導入し,状況が改善させる事が実現すれば,
仮に今の賃金のままであっても,十分にやりがいを感じる事は可能なのではないかと思います.
また認知症コウノメソッドの考え方も介護職の方にとって非常に参考になります.
「その人の認知症に必要なだけの必要最小限の薬を補充する」というのが認知症コウノメソッドの真髄だと私は考えています.
ある認知症の方に対して,その人をただ「認知症」と認識してしまっていると,通り一遍の対応になりかねませんが,
認知症をもう少し細かく分類分けすると対応が変わってくる可能性があります.
例えば,レヴィ小体型認知症というタイプの認知症の特徴の一つは「薬剤過敏性」です.
もしもその認知症の方が,過去に「風邪薬を飲むとすぐに眠り込んでしまう」という事があった場合に,
その人は風邪薬の副作用が出やすい,すなわち「薬剤過敏性」があるということが示唆されますので,
レヴィ小体型認知症の可能性が上がり,そうすると今飲んでいる薬の副作用が強く出ている可能性があるので主治医に相談してみようか,という事にもつながるのです.
このように,問診・診察を主体に認知症を分類分けする事がコウノメソッドのノウハウの一つです.
問診と言っても,基本的には本人・家族の方やカルテから情報を集める事が主体ですので,
難しい技術は必要ありません.ただ「どのタイプの認知症にどういう傾向がある」という事を知っているかどうかが重要です.
従って,この点について勉強をすることも介護職のやりがいを高める大きな要因になると私は思います.
社会を変える事はすぐにはなかなか難しいですが,
自分が変わる事は今からでも可能です.
大変な現場においてそれでもやりがいを持って仕事ができる人が増えることを
私は祈り,そして自らも糖質制限を実践し続けていきたいと思います.
たがしゅう
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プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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愛と思いやりの力
今、この瞬間、病気の人に奉仕する職業に就いているすべての人に、心労がいやされるような心あたたまる出来事がありますように、つかの間でも…と祈りたいです。
私もこのお話は身につまされました。
先日停電があり、暗闇でパニックになっている私は、懐中電灯に電池を入れてくれている友人に
「早くしてよ!お願いだから急いで!」
と金切り声で責めてしまいました。
あとから「あんな風に強く言ってごめんね」と謝りましたが、とてもつらい気持ちになりました。
いろんな思いが頭の中に浮かんで、自責の念にかられました。
おかげさまで、こんなことはもう滅多に起きないくらい、無症状で過ごしている今ですが、改めて私の周囲にいてくれる人々の愛と思いやりに守られて、私は日々生きているんだと思い直しました。
病を持つ人と、その周囲で支えている人に、その純粋な思いに見合う、ふさわしい環境が整えられますように。
糖質制限が、未来を照らす新しい方法としてどんどん広まりますように。
心を込めて祈ります。
私も、糖質制限の恩恵をよく知る者のひとりとして、ささいなことであっても自分にできることを着々と続けて行くつもりです。
立場はちがいますが、心は同じです。
たがしゅうさんの日々のご努力が大きな実を結ぶ未来が、一日も早く訪れますように。
いつも応援しています!(*^-^*)
Re: 愛と思いやりの力
応援コメント頂き有難うございます.
痛みを知る人の言葉には説得力があると思います.
私にはできないけど,棗さんにしかできない事があると思います.負の経験を活かして同じ悩みを持つ人の助けになれるよう,お互い無理ない範囲で頑張りすぎずに頑張りましょう.
長生きは幸せだと思いますか?
認知症や介護、身近にある深刻な問題です。自分に置き換えて考えてみると、看てもらうことに対して抵抗あります。一人ではあの世に行けませんから、誰かの世話になるわけですか、どんな風に生きたら
簡単にいけるか考えています。
今、身近な人が癌の末期で、毎日苦しんでいます。病院は次々に治療しますが果たしてそれが本人にとって幸せなのか?疑問です。
医療は進歩いますが、それで人は幸せなのか?毎日考えています。
Re: 長生きは幸せだと思いますか?
コメント頂き有難うございます.
現代の医学は延命技術に関しては確かに進歩を遂げてきたと思います.手術しかり,人工呼吸器しかり,胃瘻しかりです.
しかしこと健康寿命を延ばす方法については不十分です.その根幹をなすのが糖質制限の考え方ではないかと私は考えています.
No title
ここまでする必要が、本当にあるのか?
これが患者さんや入居者さんのためになっているのか?
正直、自分なら「もういい」と思います。
その一方で、親や配偶者の老いや衰えを受け入れられないご家族も多いです。
医療で元の元気な状態に戻せとばかりに、いろんな要求を突きつけられたこともあります。
日々、いろんな事を考えさせられます。
自分自身は、糖質制限で「すこやかな最期」を迎えられるだろうと思っていますが…
なんだか記事の主旨とズレたコメントになってしまいました。
申し訳ありません。
Re: No title
コメント頂き有難うございます.
> ここまでする必要が、本当にあるのか?
> これが患者さんや入居者さんのためになっているのか?
> その一方で、親や配偶者の老いや衰えを受け入れられないご家族も多いです。
私も同じような事を日々感じています.
特に認知症の問題は深刻です.家族が受け入れる場合はまだ良いですが,変わり果ててしまった親の姿をみて徐々に愛情を失い介護を止め,施設に預けてしまう方も少なくありません.私が同じ立場でもそう思ってしまうかもしれません.
だからこそ認知症予防の問題には待ったなしで取り組まなければならないと感じています.
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