報酬系を刺激されて起こること

2014/04/24 00:01:00 | ふと思った事 | コメント:2件

ドーパミンの話を続けます.

ドーパミンと言えば,報酬系に関わっていると言われています.

報酬系とはヒトの脳において何らかの欲求が満たされたとき、あるいは満たされることが分かったときに活性化し、その個体に快の感覚を与える神経系の事で,

おいしいものを食べても,おいしいものを想像してもドーパミン神経が刺激されます.

そして強制的に報酬系を刺激するものの一つに「麻薬」があります.

中でも代表的な麻薬の一つであるモルヒネは,強力な鎮痛作用があり,癌性疼痛などの難治性の痛みを取る医療用麻薬としても用いられています.

このモルヒネがその作用を発揮する際にもドーパミンが深く関わっています. 一方でモルヒネの代表的な副作用に嘔吐や便秘などの消化器症状がある事が知られています.

モルヒネやモルヒネ様の作用を示す物質の事を総称して「オピオイド」といいますが,

モルヒネは脳幹の化学受容器引き金帯(CTZ;chemoreceptor trigger zone)という所にあるオピオイド受容体を刺激し,

その結果,この部位でのドーパミン遊離を引き起こし、ドーパミンD2受容体が活性化され、その結果嘔吐中枢(VC;vomiting center)が刺激されることにより嘔吐するという事が言われていますし,

オピオイドは各臓器からの消化酵素の分泌を抑制する作用もあり、消化管の蠕動運動が抑制されます.

しかし水分吸収は抑制されないために便中の水分が奪われて便が固くなり便秘をきたします.

このようにモルヒネ使用において便秘は必発の症状なので,下剤と併せて使うのが基本です.

ただ実はヒトの身体では,特殊条件下においてこのモルヒネ様の物質を自分で作り出すことができます.それが「エンドルフィン」という物質です.

エンドルフィンは脳内麻薬と呼ばれており、モルヒネの6.5倍の鎮痛作用があります。

そして、脳を活性化し、精神的ストレスの解消に効果があり、免疫細胞の防御反応を強化する作用もあります。

エンドルフィンは多幸感を感じる時(例:美味しいものを食べた時や性行為時など)や極度のストレスがかかった時(例:ランナーズハイ)に放出されます.

エンドルフィンは報酬系にも関与しているという点でもドーパミンと似ているのですが,

ドーパミンがこまめに分泌されるのに対して,エンドルフィンはここぞという時にようやく分泌されるという点が異なります.


言い換えれば,ドーパミンが多く分泌される状況というのは

興奮,恐怖,多幸など交感神経系が刺激されるような状況です.

その状況が高じればエンドルフィンも放出されるというわけです.

そしてエンドルフィンもオピオイド受容体を刺激するので便秘をきたす原因になります.

この事を直観的に理解しようとするならば,

興奮している時や幸せを感じている時に便など作っている場合ではない」と身体が反応する,といった感じでしょうか.



ドーパミンに鎮痛作用があり,便秘をきたす原因になるという話から,

医療用麻薬から脳内麻薬の話へと知識がつながっていきますね


たがしゅう
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2014/04/24(木) 09:38:16 | | #
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2014/04/24(木) 20:44:06 | | #
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