非科学的な批判

2014/04/14 00:01:00 | よくないと思うこと | コメント:0件

糖尿病の専門家であればあるほど糖質制限に批判的です.

その批判の多くは従来の医学常識に基づいた見解となっています.

しかしその従来の医学常識自体を見直さなければならないという事を,私は糖質制限を通じて知ったのです.

今回も以下の冊子からその点を検証してみたいと思います.

『生活習慣病のリスクを軽減する 和食のちから』
公益社団法人 日本医師会
公益社団法人 米穀安定供給確保支援機構
後援:農林水産省


この冊子の中の最後の項目で低炭水化物食に対する批判がなされています.

一つ一つみていきましょう.

■極端な低炭水化物ダイエットには問題点が多い

 糖尿病の予防・改善では,肥満の改善が大変重要です.肥満が原因となる欧米型の糖尿病が増加するとともに,動脈硬化性の病気の有病率が増えているからです.

 肥満の予防・改善のための最も有効なことは,エネルギーの摂取量を適正化することです.

 この適正化をせずに,極端な低炭水化物ダイエットを行うことは,いろいろな問題点があります.

①炭水化物を制限すれば,摂取エネルギーと無関係に体重は落ちるという確たるデータはないからです.低炭水化物で体重が減っているのは,炭水化物を減らした結果,総摂取エネルギーが減るからだと考えられています.



 『肥満の予防・改善のための最も有効なことは,エネルギーの摂取量を適正化すること』

 まさにこれこそが見直さなければならない医学常識なのです.

 糖質制限批判的な医師はあくまで摂取エネルギーの多いか少ないかが体重増減に関わると主張していますが,

 2008年のDIRECT研究で同一カロリーに設定しているはずの低脂質食と地中海食で体重減少率に有意差が示されています.

 この時点で「摂取エネルギーが同じであっても,栄養素の組成によって体重に対する影響は同じではない」という事はすでに明確に示されています.

 それに糖質を減らす事で効果的に肥満を解消することができる事を示すデータは他にも次々と報告されてきています.

 さらには糖質制限でやせる事ができた人のほとんどは,それまでに摂取エネルギーを抑えようとする減量法でことごとく失敗してきた経験を持つ人です.

 私もそうですが,こうした実体験のある人にしてみれば,糖質を減らした方がやせやすいというのは自明の理です.

 こうした事実を冷静に見つめれば,今までの「カロリー理論」自体が間違っていたのではないかと考えるのが自然だと思います.次に,

②摂取するエネルギーを一定とした場合,炭水化物を減らすことによって,脂肪とタンパク質が増えます.

その結果,動脈硬化や腎臓への負荷のリスクになるため,安全性が担保されていません.



 「脂肪を摂りすぎると動脈硬化になる」というのは誤解です.脂肪自体が悪いのではなく,あくまで脂肪のバランスが崩れている事が問題であるわけです.

 糖質制限をする事で脂質プロファイルが改善します.この事実から,脂肪のバランスを乱しているのは糖質(炭水化物)だという事がわかります.

 それに高脂質食が高じた食事療法が古典的ケトン食であるわけですが,脂肪が悪いどころか,脂肪から生み出されるケトン体が,他の食事療法では成しえない臨床的な有用性を示しています.

 一方,タンパク質をとり過ぎると腎臓へ負担になるというのも大きな誤解です.

 この点についても過去記事で検証していますが,少なくとも腎機能正常な人で高タンパク質が腎機能を悪化させるというデータはなく,むしろ問題ないというデータが出揃ってきているのです.

 もっと言えば,脂肪とタンパク質は,必須脂肪酸,必須アミノ酸という形でいずれも「必須栄養素」です.

 身体にストレスのかかった状態を修復するのに脂肪やタンパク質は非常に重要な位置を占めています.

 常に脂肪やタンパク質が十分に備えられている状態というのは様々なストレスに適応できる強い身体を作ることにもつながるのです.そして,

③極端なダイエット法は,6か月程度は体重が落ちても,だいたい1年でリバウンドする上,長期間継続することが難しいというデータもあります.

食べてはいけないものが多くなり,食事全体を楽しめないからです.



 出典が示されていないので,どのデータの事かはわかりませんが,

 おそらく2008年のDIRECT研究の事を言っているのではないかと思います.

 確かにDIRECTでは体重減少のピークは6ヶ月後のあたりにあり,その後は徐々に元の体重に近づいてきています(ただしそれでも低脂質食と比べて糖質制限食の方が体重は減っています).

 しかし,あの研究での糖質制限食を行ったグループは,『最初の2ヶ月は1日20gの糖質制限を厳格に実施し、その後は徐々に1日120g/日まで緩めてよい』というルールで実行されています.

 つまり,ある程度糖質摂取を許容したために,リバウンドが起こってきたという事なのです.

 この理由は糖質の中毒性を考えればわかります.中途半端に糖質を摂取してしまうと,次の糖質への要求が糖質によって強く掻き立てられるため,これを我慢することが至難の業になってきるのです.

 実際,DIRECT研究での糖質制限食グループは6ヶ月後,12ヶ月後,24ヶ月後には40~41%の糖質を摂取しており,およそ糖質制限とは言い難い量まで糖質を摂ってしまうようになってしまいました.

 ところが常に糖質制限を実践していれば,異常な空腹感を生じることがないので,非常に無理なく続ける事ができています.

 意志が弱く医者のくせに高度肥満にまでなってしまっていた私でさえも約2年半続いていますし,明らかなリバウンドもありませんし,今後もずっと続けていけそうです.というより体調が良いので元の高糖質食に戻りたくありません.

 トップランナーの先生方に至っては10年以上継続され,しかも健康で過ごされています.したがって「糖質制限食は長期間継続できない」というのはやったことがない人が言うただの机上の空論です.

 「食事全体を楽しめない」というのもあくまで批判されている先生の個人的見解であって,実際糖質制限している人は皆食事を楽しんでいます.むしろ,それまでよりも食材本来の味をしっかりと楽しんでいます.
 
 この冊子では最後に次のように結ばれています.

肥満や生活習慣病の予防・改善の食事としては,食を楽しみながら,継続して実践できることを考えなくてはいけません.

日本人がこれまで培ってきた,低エネルギー食で,おいしい,伝統的な食文化であるごはんを中心とした和食を基軸にして,食生活の変化に柔軟に対応していくことです.



最後の一文は論理的に破綻しています.

食生活の変化に柔軟に対応するというのであれば,

伝統的な食文化にこだわらず,新たな食事療法として産まれた糖質制限について,思い込みや決めつけを行うことなく検証すべきではないでしょうか.

最後にこうした問題を考える上で非常に参考になる一冊の本を紹介します.



こちらの本では,「入るカロリー/出るカロリー」理論の誤りを生物学的観点や様々な疫学的データから極めて詳細に解説しています.

例えば,エネルギーの摂取量を減らすことは,必須栄養素の量を減らすことや,常に空腹感をつきまとわせる原因になることが指摘されています.

そして最終的に肥満を解消するために「炭水化物の多い食物を避けなさい」と著者は言っています.


肥満を解消する事が病気の予防に有効だというのは誰もが認めることですが,

そのためには摂取エネルギーを減らすべきなのか,糖質量を減らすべきなのか,

はたしてどちらが言っている事が正しいのか,

それは実際にやってみればわかります. 



たがしゅう
関連記事

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する