難病に食で立ち向かう
2014/04/08 00:01:00 |
お勉強 |
コメント:11件
筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気をご存知でしょうか。
運動を支配する神経が神経変性という現象を起こし,徐々に全身の運動機能が衰えていく原因不明の神経難病です.
運動神経は手足を動かす神経だけではなく,飲み込む際の嚥下運動に関わる神経,しゃべる際の言語運動に関わる神経,呼吸運動に関わる神経に及び,意識がしっかりしているのに運動神経の働きだけが衰えていきます.
一般的に発症から3~5年で自力で呼吸ができなくなり,生存のために人工呼吸器を装着するかどうかの選択を余儀なくされます.
未だ根本的な治療法は見つかっておらず,世界中の神経内科医が治療に頭を悩ませる難病中の難病です.
最近は三浦春馬さん主演の「僕のいた時間」というドラマでも取り上げられ話題になったので御存知の方も多いと思います.
私は糖質を制限する事で酸化ストレスリスクを減らせば,神経変性疾患に有効である可能性があるという考えを持っています.
今日はこの病気に対してケトン食でアプローチしようとしている研究をまとめたレビュー論文を紹介します.
少し難しいですが和訳してみましたので,興味のある方は是非御覧になって下さい. Paganoni S, et al. High-fat and ketogenic diets in amyotrophic lateral sclerosis. J Child Neurol. 2013 Aug;28(8):989-92. doi: 10.1177/0883073813488669. Epub 2013 May 10.
【概要】
筋萎縮性側索硬化症は致死的な神経変性疾患である.
疫学的データによれば筋萎縮性側索硬化症では栄養不良が一般的にみられ,この患者集団では過体重や肥満であることが生存面で利点を与える事が示唆されている.筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスでは,高脂質食が体重増加と生存延長につながることが示されてきている.しかしながら,ヒトにおいて栄養学的な介入が疾患経過を改善させるかどうかを調べるために実行された研究はほとんどない.
この論文では筋萎縮性硬化症に対する治療的ツールとしての食事介入の潜在的な役割を支持する現在利用可能なエビデンスについての概観を示す.最終的には,筋萎縮性側索硬化症で高脂質食またはケトン食が有益かどうかを決定するには,大規模なランダム化プラセボ対照臨床試験が必要になるであろう.
【本文】
筋萎縮性側索硬化症は麻痺や脂肪につながる運動ニューロンの進行性神経変性疾患である.死亡が起こる通常2~5年前から症状が発症し,通常呼吸筋麻痺が起こる.アメリカの食品医薬品局(FDA)が認可した唯一の筋萎縮性側索硬化症に対する治療,リルゾールは謙虚にみて2-3か月まで生存期間を延長する.このような状況で筋萎縮性側索硬化症においてはより効果的な治療法が強く求められている.
筋萎縮性側索硬化症を治療する食事介入はいくつかの理由で魅力的である.まず,栄養不良が体重減少をきたし疾患の悪化につながるエビデンスがあるということである.いくつかの研究で報告されているように球麻痺に伴う嚥下障害によって,あるいは消費カロリーと代謝需要の増加のアンバランスによって栄養不良が起こり得る.
Kasarskisらは筋委縮性側索硬化症対象者は推奨される1日のカロリー許容量の84%しか消費していなかった事を示している.この理由のため,筋萎縮性側索硬化症に対する特別な食事推奨はないが,筋萎縮性側索硬化症の患者は計算される需要よりも多くのカロリーを消費するよう推奨されている.第二に,栄養不良状態が疾患生存の短縮と関連しているという事でもって,多数のグループが栄養状態(BMIで測定される)と生存の間の相関を報告している.
興味深いことに、最近の前向き研究では過体重や肥満の患者における筋萎縮性側索硬化症のリスクが減少するということもわかってきた。
脂肪からのカロリーの割合が高い食事介入はいくつかの理由で興味深いことがありうる。食事性脂肪摂取の増加は筋萎縮性側索硬化症の進行リスクを減らすかもしれないという疫学的エビデンスがある。
最近の891920名のアメリカの対象者の前向き疫学研究では、油の多い肉や揚げ物を多く摂取することが筋萎縮性側索硬化症のリスクを減らす傾向があることが示された。また日本の症例対照後方視的研究では摂取量が最も多い三分位は最も少ない三分位に比べてオッズ比は全脂質に対してが0.41(95%信頼区間0.21-0.80)、飽和脂肪酸に対してが0.30(95%信頼区間0.16-0.5)、単価不飽和脂肪酸に対しては0.35(95%信頼区間0.18-0.69)、そして多価不飽和脂肪酸に対しては0.58(95%信頼区間0.40-0.96)であった。
オランダの症例対照後方視的研究では、多価不飽和脂肪酸摂取量が最も高い三分位で筋萎縮性側索硬化症の進行に対するオッズ比が0.4(95%信頼区間0.2-0.7)であったが、全脂質摂取では差がなかった。こうした結果とは反対に、アメリカの症例対照後方視的研究では、脂質カロリーの高い食事を報告した対象者での筋萎縮性側索硬化症のリスク増加は有意なものは認められなかったが、この研究ではタバコの使用が調整されていなかった。
いくつかの研究では高脂質食が、筋萎縮性側索硬化症の最もよく使われる前臨床モデルである、変異SOD1モデルマウスの疾患の進行を遅らせるという結果を示している。これらのマウスは筋萎縮性側索硬化症の最もよく知られた原因遺伝子とされる、スーパーオキシドディスムターゼ1(SOD1)遺伝子変異を持っている。これらの動物では、炭水化物38%, 脂質47%, 蛋白質15%(カロリー内容による)の食事が、G93Aスーパーオキシドディスムターゼ1マウスの中央生存時間を約90%ほど増加させた。
二番目の研究では、21%のバター、0.15%のコレステロール(重量による)を含んだ高脂質食がG86Rスーパーオキシドディスムターゼ1マウスの平均生存期間を20日程延長させた。逆に、変異スーパーオキシドディスムターゼ1マウスモデルにおいてカロリー制限は有意に生存期間を短縮させた。
Zhaoらは同じ変異スーパーオキシドディスムターゼ1マウスでのケトン食の効果を検証した(脂質60%, 炭水化物20%, 蛋白質20%)。彼らは生存期間の延長は示さなかったが、rotarodパフォーマンスの有意な向上を示した。加えてβヒドロキシ酪酸で治療されると筋萎縮性側索硬化症のマウスの脊髄から分離されたミトコンドリアからのATP産生が増加することも実証することができた。
同じグループはカプリル酸(ケトン体へ代謝される中鎖トリグリセリド)での治療が筋萎縮性側索硬化症のモデルマウスで、全体の生存期間の延長にはつながらなかったものの、ミトコンドリア機能と運動ニューロン数を改善させているようだという報告もしている。
食事性脂肪の増加が変異スーパーオキシドディスムターゼ1マウスでの生存期間を延長させるメカニズムについてはよくわかっていない.Ferganiらは,21%バターの脂肪を含む食事が血清コレステロール値を正常化し,通常食を与えられた変異スーパーオキシドディスムターゼ1マウスでのコレステロール値が減少する事を明らかにした.
リン脂質やコレステロールは軸索膜集合にとって不可欠であり,変性や再生を起こしている末梢神経ではコレステロールの生合成は減少する(Vanceらによりレビューされている).末梢神経損傷の実験モデルでは,再生神経の細胞内にコレステロールを入れさせるLDL受容体の発現を劇的に増加し,おそらくはアポリポ蛋白Eも軸索の修復目的に増加する.培養された交感神経ニューロンでは3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoAレダクターゼ阻害剤(スタチン薬)によって抑制された後,HDLではなく,外因性のLDLが軸索の成長を助けることができる.
このように,食事性脂肪の増やす事は循環するLDL値を上昇させ,次々と末梢運動ニューロンの生存期間を改善させることにつなげることができるかもしれない.コレステロール値の上昇が筋萎縮性側索硬化症の生存期間の改善に関連しているかもしれないというヒトからの疫学的データもあるが,解析の中でBMIで測定されるような全体の栄養状態を含んだ場合にはこの相関は観察されなかった.
筋萎縮性側索硬化症に対する追跡食事介入は非常に興味深い一方で,最近までこのトピックに関する臨床研究はほとんどなかった.Stanichらは筋萎縮性側索硬化症の20名の対象者に6か月プロテインサプリメント(タンパク質18g, 275kcal)を用いるという小さなトライアルを行い,疾患の進行や筋量の減少に影響はない事を示したが,これはカロリー摂取に対して注意深い解析を行わなかった小さな,非プラセボ対照研究であった.
Silvaらは4か月間治療された16名の対象者の小さな研究でミルクの乳清蛋白と修正でんぷんの経口サプリメントを調べ,サプリメント治療群で控えめな体重増加を示したが,対照群では体重は減少した.興味深いことに,サプリメント治療群では改訂ALSFRSの減少率が遅くなっているようであった.
我々は現在3つの異なる経腸栄養レジメの安全性と耐用性を比較する小さなフェイズⅡ二重盲検プラセボ対照ランダム化試験を行っている.(a)55%のカロリーが脂肪からなるフォーミュラ(人工乳)を経腸栄養で用いる高カロリー栄養,(b)標準的な経管栄養レジメでの高カロリー栄養,(c)標準的な経管栄養レジメでカロリーを置き換える(Clinicaltrials.gov IDNCT00983983).
要約すると,栄養不良がヒトにおいてもマウスにおいても筋萎縮性側索硬化症において共通にみられる徴候であり,疾患の進行に寄与している可能性を示す強固な疫学的データがある.また,食事性脂肪やコレステロール摂取を増やすことは筋萎縮性側索硬化症のリスクを減らし,疾患の進行速度を遅らせる可能性を示す疫学的データもある.
最後に動物実験でのデータは脂肪の摂取を食事で増やすことが弛緩の進行を改善するということを強固に示唆している.しかしながら,筋萎縮性側索硬化症の患者が高脂肪食やケトン食で治療されるべきかどうかの決定はランダム化二重盲検プラセボ対照介入研究でのみ基礎を作ることができる.
ALSは,正直言って非常に厳しい病気です.
たとえケトン食とてそれで根治というのは難しいかもしれません.
しかしながら,少なくとも疾患の進行を遅らせる可能性は秘めています.
検証の余地がある段階でこういう情報を載せる事に批判もあるかもしれませんが,
根本的な原因がわからない病気にこそ,今できる事を悔いのないようにやっておくという考えもあってもよいのではないでしょうか.
この情報が少しでも誰かの役に立てば幸甚です.
たがしゅう
プロフィール
Author:たがしゅう
本名:田頭秀悟(たがしら しゅうご)
オンライン診療医です。
漢方好きでもともとは脳神経内科が専門です。
今は何でも診る医者として活動しています。
糖質制限で10か月で30㎏の減量に成功しました。
糖質制限を通じて世界の見え方が変わりました。
今「自分で考える力」が強く求められています。
私にできることを少しずつでも進めていきたいと思います。
※当ブログ内で紹介する症例は事実を元にしたフィクションです。
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コメント
やれることは何でもやる!!
今回の記事も興味深く読ませて頂きました。先日は、コメントありがとうございました。今回の難病に食で立ち向かうと言う記事、大変素晴らしいです。治らないと言われたら、そこで諦めるのか、他に選択肢や方法がないのか、模索し、とことんやってみるかは、人によって見解が分かれるかもしれないですね。私は後者です。少しでも可能性があると感じたものは試してみるし、やれることは何でもやってきました。断食もやりましたし、ケトン食もやっています。そして、通常では考えられないことが起き始めています。人によって、考え方はいろいろでしょうが、私も先生がおっしゃるように、今できる事を悔いのないようにやっておくという考えがあってもよいと思っています。
今回の内容とは外れますが、最近、アドレナル・ファティーグ(副腎疲労症候群)http://www.amazon.co.jp/dp/4813606369というのを知りました。機能性低血糖やうつ病などと症状が似ており、ストレスやカフェイン、糖質の過剰摂取が影響しているように思いますが、先生はどのようにお考えになりますか?お忙しいところ、大変恐縮ですが、宜しくお願い致します。
Re: やれることは何でもやる!!
> アドレナル・ファティーグ(副腎疲労症候群)http://www.amazon.co.jp/dp/4813606369というのを知りました。機能性低血糖やうつ病などと症状が似ており、ストレスやカフェイン、糖質の過剰摂取が影響しているように思いますが、先生はどのようにお考えになりますか?お忙しいところ、大変恐縮ですが、宜しくお願い致します。
御指摘のように糖質過剰摂取が深く関わる病態だと思います.
いずれ一度記事にしたいと考えています.
ハンドルネームを入れ忘れました。
コメントありがとうございます。ハンドルネームも入れ忘れてしまいました。(汗)
あと、これも本テーマとは外れてしまいますが、甲状腺(ホルモン)について気になっております。糖質制限をすると調子が悪くなるケースがあるという件です。これに関しては、カルピンチョ先生や江部先生のサイトでも取り上げられていました。↓
カルピンチョ先生のサイト
http://xn--oqqx32i2ck.com/review/cat18/post_179.html
江部先生のブログ
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2863.html
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2864.html
カルピンチョ先生のサイトでは糖質制限を徐々に始める。もしくは、一度、元に戻して体調を見ながら始めるといったこと、江部先生のブログでは摂取エネルギーを増やすということで改善するという内容だったと思います。
甲状腺の問題や特に「Low T3 syndrome(低T3症候群)」は素人の私にとってははじめて聞く言葉ばかりなのでなかなか理解が難しく感じました。昨年の断食7日目の検査項目に甲状腺も入っており、T3の数値が低かったのを確認したのもつい最近のことであり、長期の断食後にLDLーCが高いため、念のために受けた甲状腺の検査でTSHが11と高値だったと知りました。検査して下さった先生には断食後は高くなるので心配ないとは言われたのですが、どういった機序なのかということに関しては説明してもらえなかったため、うまく自分の中でリンクできませんでした。その後、ケトン食を開始して、甲状腺を調べてもらいました。今度は、TSHのみではなく、T3やT4、(リバースT3は依頼しておりません)の検査もお願いしました。その時の結果が、TSH2.780 T3が59.3 T4が8.8で、TSHは正常範囲内に戻っていましたが、T3は低値でした。前回のT3がどうだったのかはわかりませんが、最初の検査ではTSHは正常範囲内でT3のみが低値だったことを考えると、IF(間歇断食)ではTSHが異常値になることはないが、T3は低値なるということは分かりました。しかし、私の頭では断食とケトン食とこの甲状腺の関係が完全にははっきりしませんでした。ケトン食を開始して、エネルギー摂取を増やしたにも関わらず、T3が低かったからです。もし、よろしければ、何かの折に、甲状腺(ホルモン)や「Low T3 syndrome(低T3症候群)」と断食・ケトン食の関係をテーマとして取り上げて頂けないでしょうか?断食やケトン食に精通しておられるたがしゅう先生ならば、その関係性をズバリと解明して頂けるのではないかと身勝手なことを考えております。お忙しいところ、大変恐縮ですが、宜しくお願い致します。
ALSと糖質制限
主にALSを診ているリハ医のヘルミです。
私も糖質セイゲニストの端くれとして、糖質制限で患者さんにベネフィットをもたらせないか、いつも考えています。
問題は、経口摂取出来なくなった後、通常は胃瘻などから経腸栄養剤を使用することになりますが、どれもこれも糖質だらけなことです。
例えば、処方箋でだせるラコール 100Cal中糖質15.62g、一日1200Calとして187.44g、3回に分けて使用する場合一回62.48g
エンシュアリキッド 100Cal中糖質13.72g、一日1200Calとして164.64g、3回に分けて使用する場合一回54.88g…
食品では糖質の少ないところで プルモケア 100Cal中糖質7.04g、一日1200Calとして84.48g、3回に分けて使用する場合一回28.16gです。これではとても糖質制限とは言えません。
そして人にもよりますが、通常より少ないカロリーに設定しても、太る人は太る!
特に閉経後の女性で、皮下脂肪も内臓脂肪も増えて、しかも低タンパク状態になり易く、自重で褥瘡を生じかねません。
見かねて、糖尿病の方や体重増加に歯止めがかからない方数名にせめてとプルモケアを使ってみました。血糖コントロールは大変よくなりましたが、減量までは至っていません。
当院は在宅療養が基本なので、食品として買っていただかなくてはならないこともネックですね。
低糖質の経腸栄養剤が処方箋でだせるようになるのは、医療費削減の今日無理だろうなぁ…
何か良いアイデアがあったら教えてください。
Re: ハンドルネームを入れ忘れました。
>甲状腺(ホルモン)や「Low T3 syndrome(低T3症候群)」と断食・ケトン食の関係をテーマとして取り上げて頂けないでしょうか?
そうですね.その辺りは私も一度きちんと整理しておかなければと思っていました.
うまくまとめられるかどうかわかりませんが,折をみて取り組んでみたいと思います.
Re: ALSと糖質制限
コメント頂き有難うございます.
御指摘のように胃瘻栄養になってくると糖質制限がより難しくなりますよね.
低糖質の経管栄養剤については私が知っているものの中で糖質がより少ないのは先生御指摘のアボット社のプルモケアか明治のインスローくらいです.それでも中糖質ですね.
裏技としては溶き卵を胃瘻から直接入れるという方法を以前教えて頂いた事があります.病院では難しく私は実際に指導した事はありませんが,在宅ではどうでしょうか.
例えば朝・夕でプルモケアを使用して,昼だけは溶き卵,という方法なども考えられるかもしれません.
甲状腺(ホルモン)や「Low T3 syndrome(低T3症候群)」
本記事とはリンクしないのですが、carpediemさんのコメントがありましたのでこちらに書かせて頂きます。
肥満体から糖質制限で一定量は減量出来たのに標準体重手前で停滞する件なのですが、もしや 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」なのではないかと思い始めまして、先生のご意見をお聞きしたいなと。
停滞してから早1年、その間の変化で興味深いのは、ALPの減少(150→99)とLDL-Cの上昇(110→180)です。
なおスタチンは中止したもののリピディルは飲み続けております(TGはほぼ変動無しと言えます)。
ただ、低T3の症状はあまり感じていませんし、糖質制限による体調改善状態は続いていると思っています。
ただ、整骨院では副腎・膵臓付近の疲労を指摘されてはいます。
(これはパルスターフラスという機器により異常をモニタリングしたもので、この機器による診断の信頼性は不明ではありますが。。。)
停滞したころから、スタンダード→スーパーへと移行しています。
しかし糖質量的にはスーパーとは言い難いものですが。。。
おそらくT3の減少とリバースT3の増加により燃焼モードがストップし、軽い飢餓モードになっているのかも知れません。
そしてこの現象は、皮下脂肪の多い人が陥りやすいのではないかと。。。
では、ここから脱出するにはどうしたら良いのかですが・・・
摂取エネルギーを増やせば簡単にリバウンドしますし、かといって摂取エネルギーを減らすと、本当の飢餓モードへ突入する恐れから1食や断食には踏み込めません。
完全に行き詰ってしまいました。。。
Re: 甲状腺(ホルモン)や「Low T3 syndrome(低T3症候群)」
御質問頂き有難うございます。
> 肥満体から糖質制限で一定量は減量出来たのに標準体重手前で停滞する件なのですが、もしや 「Low T3 syndrome(低T3症候群)」なのではないか
> おそらくT3の減少とリバースT3の増加により燃焼モードがストップし、軽い飢餓モードになっているのかも知れません。
> そしてこの現象は、皮下脂肪の多い人が陥りやすいのではないかと。。。
私の認識ではLow T3症候群は高糖質食から糖質制限へうまく移行できない人の一過性のトラブルです。
永続的に続くものではないと思っています。
> では、ここから脱出するにはどうしたら良いのかですが・・・
> 摂取エネルギーを増やせば簡単にリバウンドしますし、かといって摂取エネルギーを減らすと、本当の飢餓モードへ突入する恐れから1食や断食には踏み込めません。
私は最大8日間の断食をして、その時の自分の血液データを詳細に評価した事がありますが、
8日間の絶食によってLow T3状態が現れるという事はありませんでした。
摂取エネルギーを減らせば飢餓(節約)モードになるというのは体感的にもそのとおりだと思います。
ですがそれは言い換えれば少ないエネルギーで最大限のパフォーマンスを発揮できるという長寿体質です。
私はそれは決して悪い事ではないと思っています。プロスポーツの世界で活躍したいとか考えている人なら別ですが。
管理人のみ閲覧できます
No title
Re: No title
コメント頂き有難うございます。
私の情報が少しでもお役に立てれば幸いです。
もしもケトン食、鍼灸でコントロールできない場合は、間欠的断食(時々断食して絶食時間を長く保つ)も御考慮下さい。
あくまで仮説ですが、断食状態により蛋白質再利用システムのオートファジーが活性化すれば、ALSで蓄積するとされるTDP43蛋白を分解させる可能性があると考えるからです。御健康をお祈り申し上げます。
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