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徐々にやめることの難しさ

category - ふと思った事
2013/ 09/ 17
                 
依存症の話を続けます。

依存症というのは自覚が乏しい場合が多いです。

例えば、タバコを吸って止められないという人はニコチン依存症の状態にあると言えますが、

そういう人は「タバコを吸う事によってストレスを発散することができるからいい」とよく言います。つまり自分の意志でタバコを吸っていると言うのです。

しかし実際は、喫煙者はニコチンの離脱症状から逃れるためにタバコを吸わされているようなものなのです。

            

タバコを吸うとピュッとニコチンの血中濃度が上がり、その後速やかにニコチン血中濃度が下がります(なんだかグルコース・スパイクを彷彿とさせますね)。この時に起こる急激なニコチン欠乏によって喫煙者は言いようもない再喫煙欲求にさいなまれるわけです。

そしてタバコを吸い続けるのを繰り返すことによってニコチンをはじめとした有害物質が徐々に体内に蓄積されていき、身体に様々な悪影響を及ぼしていきます。

つまり本人はよかれと思ってやっている行為が、知らず知らずのうちにやめられなくなってしまい、そして身体をむしばんでいく、これが依存症の怖さです。

治療としては如何に依存物質から逃れさせるかということが大事になります。

最近は禁煙治療として禁煙パッチや飲み薬が保険で使えるようになりましたが、これをを使うとニコチンの血中濃度が急ではなく緩やかに下がるようになるので、離脱症状が起こりにくくなり、禁煙の補助になる、というわけです。

そしてタバコの場合は節煙(徐々に減らす)を勧めず、禁煙(スパッとやめる)を勧めるのが基本です。

一見、節煙の方がストレスが少なくできるのではないかと思うかもしれませんが、実はそうではありません。

スパッとタバコをやめることは、確かに数日間は離脱症状が強いために辛いのですが、その数日間さえ乗り越えてしまえば実は喫煙欲求はかなり急速に弱まっていくのです。

一方節煙の場合はいつも吸う量を少し減らすという事自体にはストレスはあまりありませんが、「いつもの量を吸うことができない」という小さなストレスは長く続くことになります。

そうした小さなストレスに長くさらされてしまうと、しばらくは我慢することができていても、長く続けば続くほど辛くなってある時点で再び元通り吸い始めてしまうという落とし穴があります。

こうして考えると依存物質を徐々に減らしていくという事は、簡単なようで難しいことなのです。

さて、この事を糖質に当てはめて考えるとどうでしょうか?

糖質依存症から抜け出す場合にもスパッとやめるのが実は一番楽です。最初は辛いと思うかもしれませんが、これも数日で慣れます。なおかつ糖質の場合には代わりが容易に見つけられます。糖質でなくても肉や魚、卵なども十分おいしいし、砂糖は人口甘味料に変えることもできます。だから糖質は依存症から離脱するのが比較的簡単な物質、のはずなんです。

しかしこれを阻むのが「日本人の主食は米」といった常識の壁です。

ここで「徐々に米を減らす」という勧め方をすると、節煙と同様に一時的には続けることができても、米が主食であるという概念を捨てない限りは「いつも食べる量より少ない」というストレスがかかり続けます。患者さんに糖質制限を指導していて悩ましい事の一つがこれです。

ただ指導する側として感じるのは

「米・パン・めん類はまったく食べない方がいい」というのを初めて話してすぐ理解して下さる人はなかなかいませんが、

「米の量をとりあえず半分にして、その代わりおかずを増やしましょう」という妥協案に応じてくださる人は結構多いということです。

確かに半分だけでも糖質を制限してくれるのならば、何もやってもらえないよりかはましではあります。

ただこれを一時的な実践に終わらせずに長く続けて頂くためには、「なぜ米(糖質)を食べ続ける事がよくないのか」という事を限られた時間の中でいかに納得して頂けるかが重要になると思っています。



たがしゅう

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コメント

非公開コメント
        

少しずつは難しいです
初めまして、松江市での江部医師の講演に参加していたパートの看護師です。
2011年12月からスーパー糖質制限を始めましたが、それまでは穀物菜食をしていました。糖質から離脱できて初めて、自分が糖質中毒だったと自覚しました。以前チョコレートに中道なのかと思っていた頃もありますが、実際には含まれる糖質だったのだろうと思います。
感情的に、少しずつ減らすのはきっと無理と思ったことと、早く結果がほしいという考えでスーパーに取り組みましたが、結果的にはそれが功を奏しました。
 冷凍庫に小さい玄米おにぎりを入れて労働が激しいときに食べようと準備しておりましたが、結局半年以上たっても手を付けることなくありがたく廃棄しました。
 ちょっと食べてもいいよというは、私にとって必ず次が食べたくなってしまいます。まったく食べないということの方がよかったと思いました。
 たがしゅうさんの記事を読んでなるほどとおもいました。
ケトン値
先日はご返事ありがとうございます。
主治医に聞いても解らないと良くないとの返事です。先生に質問なのですが、総ケトン体値が1066 アセト酢酸355 ヒドロキシン酪酸711 でした。基準値は122以下のようです。糖質制限している人の総ケトン体値は どれくらいが良いのでしょうか、高ければ良いのでしょうか? 時間があればよろしくお願いします。
Re: 少しずつは難しいです
rosemaryさん

コメント頂き有難うございます。
また共感して頂きまして有難うございます。

私もいきなりスーパー糖質制限で始めてうまくいきました。

おっしゃるように少しずつ減らすというのはかえって回り道のように思います。
Re: ケトン値
奈良県吉野けんさん さん

> 糖質制限している人の総ケトン体値は どれくらいが良いのでしょうか、高ければ良いのでしょうか?

日本で一番糖質制限での治療経験を持っておられる江部先生によれば、

糖質制限している人の総ケトン値は300〜1200くらいになるそうです。

さらに蛋白制限を強めて古典的なケトン食に近づけるように食事を変えれば、さらにケトン値を高める事ができますが、2000くらいを超えてくると体でケトンを利用し切れなくなり、尿中や呼気中にケトンが漏れ出します。

従って、高ければ高いほど良いという単純な話でもないのですが、少なくとも基礎インスリン作用さえ保たれていればかなり値が高くなっても安全な物質だというのは確かなようです。
先生のおしゃる通り
tagashuu先生の依存症について。

私もタバコと糖質、特にタバコは、3度目の禁煙でやっと6年目です。糖質は9カ月ですが、人間は白物中毒からなかなか抜け出せないと、私の先生もおっしゃていました。麻薬・砂糖・小麦粉・お米・タバコも白物です。なんで白物を人間は、あきらめられないのでしょうか。

でも自分は、糖質制限食だけは、糖尿病人だから簡単にやめられたようです。
それとも合っていたのでしょうか

今までの自分は、何を実行してもすぐに、頭ではわかるのですが、体がすぐに、現実から逃げたくなる、ある時からこれも自分と思うことにしました。(必ず、実行してすぐに、辞めるための言い訳を探す・・誰も見ていないのに)

こんな自分ですが、毎回先生のブログを読んでいつも納得し・楽しく読まさせて頂いてます。
Re: 先生のおしゃる通り
もとつむりさん

いつも応援頂き有難うございます。

現実から逃げ出したくなる時、私もしょっちゅうあります。

そういうところも含めて自分なのだという考え方、同意です。
底深い
こんにちは。

先日亡くなられたアルコール依存症のオーソリティーのなだいなだ先生が、著作の中でアルコール依存について「アルコールから何かを得ている。その人の人生に欠けていたものを、その人はアルコールから得ている」とおっしゃっていました。

アルコール依存症も、スパッとやめないと駄目なのだそうです。何年禁酒しても、法事などでちょっと気が緩むと元の木阿弥なのだそうです。
大変難しいようです。

私も糖質制限をしています。が、お土産の菓子を受け取らないのも角が立つ、出かければ飴ちゃん攻撃で貰わないのも角が立つ、で難しいことが多いです。
甘味は決して買いませんが、日常には糖質を摂るトラップや社会通念にあふれています。

すべて断つのは、とても大変です。
で、よくないと思うのは、家にあれば口にする。菓子1袋開ければ食べきらずには終わらなくなることです。やっぱり口にしないのがいちばんです。

決して買わないのに、社会的に生きていると、甘味みずから家に入ってくるのです。厄介ですね。


ベジタリアンは難しい
こんばんは(^^)

6年前からベジタリアンライフを実践していますが、体調がイマイチ良くないです。

糖質制限食にもチャレンジしてみたのですが、食べられるものが少なすぎて、体調も悪くなってしまいました。

やはりベジタリアンで糖質制限食を実践するのは、難しいでしょうか?
Re: 底深い
エリスさん

なだいなだ先生の情報を頂きどうも有難うございます.アルコール依存症に関する本を書かれているのですね.向学のために折をみて手に入れようと思います.

一方,理論的に正しいということと,それを実際に行えるかどうかということは別次元の問題ですね.江部先生の名言「見渡せば糖質」の如く,現代社会のトラップにかからないように気を付けたいものです.

依存症に関して言えば,我慢しているという感覚があるうちはまだ依存症から抜け切れていないのだと思います.

私の場合は,かつて糖質依存症にありましたが,今は目の前で友達にラーメンをすすられようと,ケーキを食べられようと全くうらやましいと思いません.すっかり今の糖質制限生活に慣れてしまいました.
Re: ベジタリアンは難しい
ベジタリアンさん

 御質問有難うございます.

 「野菜=健康」というイメージがあるかもしれませんが,科学的には必ずしも真ではないと思います.

 例えば,ベジタリアンの方はビタミンB12が不足するという報告があります.

 ヒトが健やかに生きていくためには,野菜以外の食べ物もバランスよく食べていく必要があると私は考えています(勿論糖質は除いた上でのバランスです).中でも肉,魚,卵が持つ役割は非常に重要です.

 したがってベジタリアンを維持しながらの糖質制限食は,私はおすすめいたしません.通常の糖質制限食へ切り替えられたらきっと体調もよくなると思いますよ.

 ただ私,ベジタリアンについて語るには知識不足の面は否めませんので,少し勉強して知識が整理できたらまた改めて記事にさせて頂きたいと思います.